『君たちはどう生きるか』要約まとめ

昭和12年に出版された『君たちはどう生きるか』が、40万部突破のベストセラーとなっています。さらにコミック版が200万部突破。池上彰や宮崎駿が愛読し、以前Bizpowのインタビューに登場したメドレー代表の豊田剛一郎氏も座右の書として挙げていました。時代を超えて読み継がれる名著は、どんな生き方を伝えようとしていたのでしょう? いま再評価されているのは、私たちが見失ってしまったものが、そこに見つかるからかもしれない。

 中学生のコペル君は、デパートの屋上から東京の街を見渡していたとき、ふと奇妙な感覚に陥った。どこまでも続く街並みの中に、自分が知らない何十万という人間が生きていて、その中に自分も生きているのだという驚きを感じたのだ。この発見をコペル君は「人間て、水の分子みたいなものだねえ」と表現した。

 父親代わりの叔父は、コペルニクスの地動説になぞらえてこの発見を称えた。天動説は地球が宇宙の中心だとする視点であり、いわば自分中心の世界観だ。一方、地動説は地球が広い宇宙の天体の一つで、世界の一部としての自分という世界観である。子どもの頃はとかく自分中心で世の中を見ているものだが、大人になるにつれて社会の関係性から物事を考えるようになる。コペル君の発見は、大人への第一歩だったのかもしれない。

 広い世の中に生きているといっても、コペル君が日常で関わるのは親友の水谷君や北見君といった学校の友だちばかりだ。あるとき貧乏臭いとバカにされていた豆腐屋の浦川君への陰湿なイジメを見かね、熱血漢の北見君がイジメの首謀者に殴りかかる騒動があった。先生に叱られたが、告げ口になるとして北見君は理由を言わなかった。この出来事からコペル君は北見君を尊敬するようになる。

 この話を聞いた叔父は、いつでも自分の本心の声を聞こうと努めなければいけないとコペル君にアドバイスした。学校の教えを守り、世間で立派だとされることをしているだけでは一人前とは言えない。肝心なことは、世間の目ではなく、いいことと悪いことを自分の魂で感じ取って貫くことなのだと。

 さらにコペル君は「人間分子の関係、網目の法則」と名付けた発見を叔父に話した。オーストラリア製の粉ミルクがコペル君の届くまでには、牛の世話をする人、工場で粉ミルクにする人、それをトラックで運ぶ人、そして商人や広告の人など無数の人が関わっている。しかし、コペル君が知っているのは薬局の主人のみ。そう考えたとき、見たこともない大勢の人と、知らないうちに網目のようにつながっていることを発見したのだ。

 これはコペル君が初めて発見したものではなく、学者たちが「生産関係」と呼んでいるものだと叔父は教えた。人類は野獣同然の状態から今日の状態まで進歩し、今では世界中の人が生産と貿易でつながって生きるようになった。この関係がどんなふうに変わってきたか、どんな法則で動いているのかを研究するのが経済学や社会学という学問だ。そして、先人たちが経験し、考えたことを書物から教わることに学問の意義があると伝えた。

 あるときコペル君は、欠席している豆腐屋の浦川君の見舞いに行くことにした。すると浦川君は病気ではなく、故郷に帰っている父親と、風邪をひいた従業員のかわりに店の手伝いをしていた。油揚げを揚げる浦川君の慣れた手つきにコペル君は感嘆し、裕福な家庭に育った自分とは何もかもが違う浦川君の境遇が新鮮に思えた。

 この話を聞いた叔父は、貧しくても高潔で尊敬すべき人もいるし、裕福でも下等な人間はいるものだと教え、人間の自尊心について話した。たとえ貧しくても浦川君は家業を手伝って生産している。それに対しコペル君は、まだ何も生産することのない消費専門家である。コペル君を非難しているわけではなく、世の中の役に立つ準備中なのだから、学業に励むことで自分の才能を伸ばすよう努めなければいけないと諭した。そして、自分では気づかないうちに日々生み出している大きなものがあると言い、それはなんだろう?という質問を出すのだ。

 3学期のある雪の日、ある事件が起きた。以前から生意気な下級生に制裁を加えると息巻いていた上級生の黒川が、因縁をつけてきたのだ。北見君が服従すること拒み、今にも殴られそうになったとき、気弱な浦川君が止めに入り、さらに水谷君がぶるぶる震えながら立ちはだかかったが、3人とも上級生に袋叩きにされてしまった。「殴られるなら一緒に」と固い約束を交わしたはずなのに、コペル君は何もできずに立ち尽くしていた。聞こえてくるのは「卑怯者」という心の声のみ……。

 長い間、雪の中にいたせいでコペル君は風邪をひいてしまい、半月ほど学校を休むことになった。その間、あの日の後悔が頭から離れず、コペル君はずっと思い悩んでいた。言い訳ばかり考えて終日過ごしていたが、叔父に諭され、正直な気持ちを手紙に書いて渡すことにした。それは、自分に意気地がなかったことを認め、約束を守れなかったことを詫び、今度こそ勇気を出すことを信じてほしいという内容だった。

 3日経っても返事はなかったが、4日目に3人が見舞いに訪れた。実はこれまで音沙汰がなかったのは、3人の親が学校に怒鳴り込んだことで学校中が大騒ぎになり、北見君が親から自宅謹慎を言いつけられていたからだったのだ。こうしてコペル君はみんなと仲直りする。

 この辛い経験を通してコペル君の心は大きく成長していた。最後に叔父のノートに感想を書くのだが、そこにはこんな決意が記されていた。自分は消費専門家で何一つ生産できないが、「自分がいい人間になって、いい人間を一人この世に生み出すことは、僕にでもできるのです」と。きっとこれが「日々生み出している大きなもの」という叔父の質問の答えにあたるのだろう。

『君たちはどう生きるか』3つのポイント

●自分中心ではなく、世の中の一部としての自分という視点を持つ

●世間の目ではなく、自分の本心の声を聞いて行動する

●世の中の役に立つ人間になる意志を持つ

文●大寺 明