『仕事はもっと楽しくできる』要約まとめ

仕事がつまらないと不満を抱え、転職を考えている人、ちょっと待ってください! もしかしたら会社にいながら“仕事をもっと楽しくできる”方法があるかもしれません。最初の一歩は、部署や会社の枠を超えて、同じように感じている仲間たちとつながること。飲み会や勉強会で出会った仲間たちとの連携が、やがて大きな力となって会社を変えていくかもしれません。オープンイノベーションを起こそうとする有志団体「ONE JAPAN」の活動とは?

夢や希望を持って入社したのに、仕事を始めたらなんだか思っていたのと違った……と感じて悶々としている人も多いはず。上司から降ってくるやらされ仕事ばかりで、新しいことに取り組もうとしても、実績のない若手に仕事は任せられないと言われ、かといって実績を作るためのチャンスもない……。そんな状況に悩む人がとる道は3つある。「辞める」か「染まる」か「変える」かだ。

「辞める」ことを選択し、転職したり、起業したり、スタートアップにジョインするのもいいだろう。しかし、会社に残るのであれば、「染まる」か「変える」しかない。今いる会社に染まりたくなければ、自分で少しでも働きやすく楽しい会社に変えていくしか道はないのだ。なにも今すぐ大企業のルールや仕組みを変えようというのではない。同じように考えている若手有志がつながり、将来的にボトムアップで会社を変えていく。それが本書のメッセージである。

「ONE JAPAN」とは、元パナソニックの濱松誠氏が立ち上げた50社1200人からなる有志団体である。大企業に勤める若手社員の悩みの大半は、「言っても無駄」「縦割りで意思決定のスピードが遅い」といった大企業病に対するものだが、そこで愚痴を言って終わるのではなく、若い世代が会社の枠を超えてつながり、オープンイノベーションやコラボレーションを実現することが目標だ。本書では「ONE JAPAN」メンバーの様々な事例を紹介している。

 NTT東日本の山本将裕さんは、東北支社で被災者を支援する様々なサービスを開発し、それが評価されて本社のビジネス開発本部に異動した。しかし、裁量権が大きな地方の仕事に比べ、いわゆるサイロ化された組織では、若手がクリエイティビティを発揮できる機会は少ない。お役所のような縦割り業務ばかりで、次第にモチベーションが下がっていった。そんなとき濱松氏の活動に共感し、NTTグループの同期や先輩たちを集めた草の根的な飲み会「O-Den(おでん)」を開くようになった。

 NTTグループには約950の会社があり、28万人の社員がいる。そうした大企業では、それまで知らなかった人とつながるだけでも大きな価値がある。やがて社内の事業検討メンバーが公募され、集まった顔ぶれを見ると、ほとんどがO-Denの仲間たちだったという。こうして山本さんは気心が知れた仲間たちとオープンイノベーションのチームを作ることになり、数千万円の予算を獲得。5社との連携を決定し、今までのNTTでは考えられないスピードで協業を実現することができた。

ONE JAPANの発起人の一人、大川陽介さんはフィールドSEとして富士ゼロックスに入社し、自ら健診業界向けのソリューションを企画し、軌道に乗せた実績を持つ。その後、新たに企画を立ち上げることになったが、売上が上がらないという理由でプロジェクトは短期間で打ち切りになった。戦略資料の意味がわからないまま上司に文句を言っても聞いてもらえないと考え、大川さんは中小企業診断士の勉強をすることにした。そこでわかったことは、「経済合理性に照らし合わせると、上司は間違っていなかった」という衝撃の事実だった……。

 なぜ会社が今の仕組みで回っているかを理解できるようになった反面、経済最優先の仕組みがベストだとも思えない。この仕組みを変えるには社長になるしかないのだと思うと、うっすらとした絶望感を感じた。そんなとき、社内勉強会を主催する人物から「若い時につながりをつくっておくことで、自分たちがリーダーになった時の仕事のスピードが速くなる。このつながりが、将来会社を変える力になる」という話を聞き、大川さんは「わるだ組」という有志団体を立ち上げることにした。

 コンセプトとして「楽しさとゆるさ」を最優先した。仕事では常に「責任、コミット、効果」が求められるものだが、それとはあえて反対の立ち位置にこだわった。「楽しさ」は行動の源泉であり、「ゆるさ」は何にでもチャレンジができる心理的安全性を担保している。信頼できる関係を築いて初めてアクションにつながると考えたのだ。そして実際に「わるだ組」のメンバーが中心となって富士ゼロックス主催の「横浜ガジェット祭り」を開催したり、オープンイノベーションの試みも実現した。以前は酒の席の話題といえば、上司や会社の愚痴ばかりだったが、今では「会社をこんなふうに変えたい」「こんな事業をしてみたい」という話題に変わってきたという。

 JR東日本の村上悠さんが立ち上げた「チーム・ファンタジスタ」は、ONE JAPANに参加する企業50社の中でも、実現させてきたプロジェクトは圧倒的な数になる。いったんプロジェクトが軌道に乗れば、大企業のリソースほど強いものはない。その一方で、事業化の構想(=ファンタジー)を語る場所が少ないことが大企業の弱みだ。だからこそ「遊ぶように働き、働くように遊ぶ」を団体のモットーにし、アイデアが生まれやすい場所を作ったのだ。

 ONE JAPANを運営するにあたって濱松氏が何より重要視したのは、「心理的安全性」が保証された場にすることだった。前例のないことに挑戦しようとすれば、失敗する可能性もある。だからこそ若手が安心してチェレンジできる場にする必要があった。その結果、わずか2年の間に社の枠組みを超えた共創が次々生まれ、事業化に進むケースが相次いだ。もちろんそれは喜ばしいことだが、濱松氏にとって何よりうれしいのは、メンバーがONE JAPANで得た気づきを社に持ち帰り、彼らの会社員人生に良い変化が生まれることだという。

『仕事はもっと楽しくできる』 3つのポイント

●会社を「辞める」か「染まる」ではなく、「変える」を考えてみる

●同じ意志を持った若手でつながり、ボトムアップで会社を「変える」

●若手がチャレンジしやすい場として、「心理的安全性」を確保する

文●大寺 明