『なぜ「戦略」で差がつくのか。』要約まとめ

「戦略」と聞くと、徹底した合理主義や、非人間的な冷たい印象を受ける人もいるかもしれません。だけど、そもそも「戦略」という言葉自体、使う人によって意味が曖昧だったりします。そこで本書では、まず「戦略」の定義を明確にします。「目的」を達成するために「資源」をいかに運用するかが戦略――。シンプルに考えることで、「戦略」の重要性が見えてくるはず。

 マーケティング戦略、広告戦略、営業戦略……等々、企業には「戦略」が溢れている。ビジネスパーソンにとって、「戦略」は知的で有能な匂いを醸し出す魅力的な響きを持った言葉でもある。一方、ただ単に「重要な」という意味で形容詞的に使われたり、「政治的な判断」と同義で使われたり、単語の定義が曖昧だったりもする。そのためビジネスの現場で混乱や誤解を招く原因にもなっている。だからこそ、まず戦略を定義づける必要があるのだ。

 戦略と混同されがちな概念として、「計画」「目的」「ヴィジョン・理念」「方針」がある。これに対し戦略とは、目的やヴィジョンをどうやって達成するかを示すものであり、「計画」よりも上位の概念にあたり、「目的」そのものでもない。広い意味で、戦略は「方針」のひとつと考えてもいいだろう。

 ビジネスにおいて無目的に行動を起こすことは少なく、戦略にとって重要なことは、目的をどれほど明確にするか、である。そして、「資源」には限りがあるため、資金、時間、人材などの資源をいかに配分するか、が重要になる。達成手段を取捨選択するための指針として「戦略」が求められるのだ。

 つまり、「戦略」とは、効率的に資源を運用し、効果的な目的達成を目指す指針である。戦略があれば意思決定もしやすくなるし、計画に一貫性を持たせることができる。思いつきや感情まかせの方向転換による資源の乱用を回避するにも有用だ。また、たとえ目的が達成されなかったとしても、戦略を明示しておくことで学習効果が期待され、失敗から経験値を獲得することもできる。

「目的」を明確にする際、「市場シェア10%を達成」というふうに数値化することで具体的に表現し、誰もが等しく理解できるようにするといい。また、その「目的」が、戦略の上位概念にあたる会社のヴィジョンや理念と一貫性があることや、目的達成の期間設定を決めておくことも重要なポイントだ。

 そして、もうひとつの条件ともいえるのが、資源をFocus(集中)すること。あれもこれも達成したいというのではなく、一点に絞ることが重要になる。複数の目的があると、それ以外の要素も含めると単純に2倍、3倍ではすまなくなり、覚えられなくなるものだし、有限の資源も薄まってしまう。達成すべき「目的」を絞り、全資源を「集中」することは、戦略を効果的に使うにあたって非常に重要なポイントになる。

 さらに戦略を効果的に使うには、「目的」を再解釈するという考え方も有効だ。本来の目的が忘れ去られ、手段の目的化が起こることは、しばしば起こりうる。たとえば、ショップの顧客と売上の構造を把握するという「目的」だったはずが、いつしかその手段のひとつである「メンバーシップ・カードの導入」が目的化してしまうのだ。「目的」が正しく理解されていれば、手書きのアンケートでもいいはず。「目的」を解決しやすい角度から再解釈することで、従来とは違う解決策に気づけるかもしれない。

「目的」と並ぶ構成要素が「資源」である。人員、資金、ブランド、製品技術力・開発力、生産能力、営業力などさまざまな資源があるが、ざっくり言うと「ヒト・モノ・カネ」となる。また、それ以外にも取引先や協力会社など「組織外の資源」もある。広告代理店やウェブマーケティングの代理店、制作会社などは外部資源の代表格と言えるだろう。

 効果的な目的達成のためには、複数の資源を組み合わせるとよい。組み合わせて使うことで、個々の資源の単純な総和よりも大きな効用が発揮されるのが理想だ。「1+1を3にする」ような資源の使い方をするには、「補完」と「相乗」という概念を知っておきたい。

「補完」は、テレビ広告で接触できない消費者にアプローチするために、ウェブ広告を使うといったもので、「相乗」は、テレビ広告の効用を最大化するために、有名人を起用して相乗効果を生むといったものである。いずれの方法を採用するにしても、各資源の特徴をできる限り正確に把握する必要があるため、資源になりそうなものをもれなく書き出し、資源リストを作成しておきたい。

 ものの考え方には、どんどんアイデアを出していく「拡散的な思考法」と、アイデアを絞り込んでいく「収束法の思考法」がある。戦略の組み立て方については後者の思考法が適している。なぜなら、戦略においてもっとも大きく差が出るのは、「目的」と「資源」の部分であって、最適解を求めて一点に集中していく過程では差が出にくいからだ。いったん目的と資源が的確に解釈されれば、あとは間違えないように正確に計算するだけとなる。

 そして、戦略が効果を発揮するには、実行に携わるチームが戦略の真意を理解し、実際にプランとして運用されなければいけない。上からの命令にただ従うのではなく、各メンバーの納得感があれば、より大きな成果へとつながっていく。そのためにも関係者に戦略を浸透させ、理解と解釈を統一しなければならない。広く対話の機会を持って、すり合わせていくことが大切になる。

 正しい戦略は目的の達成確率を上げる。なぜなら目的達成に対する資源の投下効率が上がるからだ。もし判断に迷ったり、不測の事態に遭遇したら、戦略に立ち返ることで目的達成のための行くべき道が見えてくるはず。常に目的を意識し続けることが、「戦略的である」ということなのだ。

『なぜ「戦略」で差がつくのか。』 3つのポイント

●「目的」達成のために、効率的に「資源」を運用することが「戦略」

●達成したい「目的」を絞り、全資源を集中する

●判断に迷ったときは、「戦略」に立ち返る

文●大寺 明

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