『世界のエリートがやっている最高の休息法』要約まとめ

スティーブ・ジョブズが瞑想を日課にしていたことは有名ですが、アメリカでは多くのビジネスパーソンが「マインドフルネス瞑想」を取り入れています。「瞑想」というとスピリチュアルなイメージもあり、「ビジネスとなんの関係があるんだ?」と疑問に思う人もいるかもしれません。だけど、効率よく仕事をこなすには、しっかり休息をとることも大切。脳科学の世界では、マインドフルネスによってストレス軽減や集中力アップといった様々な効果があると報告されています。これは今すぐ取り入れたい!

「瞑想」と聞くと、怪しげなイメージを持つ人もいるかもしれない。しかし、本書が紹介するマインドフルネス瞑想は、グーグルやアップル、フェイスブックなど、名だたる有名企業が導入する科学的根拠をもった脳の休息法として知られる。そんな面倒なことをしなくても、「何も考えずにぼーっとしていれば脳は休まる」と考える人もいるかもしれないが、どれだけ無為な時間を過ごしても脳が休まることはない。なぜなら脳は常に動いていようとする臓器だからだ。

 脳は身体が消費する全エネルギーの20%を使っている。そのうち60~80%の消費エネルギーが、デフォルト・モード・ネットワーク(以下、DMN)という脳回路に使われている。いわば脳のアイドリング状態みたいなもので、何もしなくても脳はDMNの活動によって勝手に疲れていくのだ。まずDMNの活動を抑える脳構造をつくっていかないと、真の休息は訪れない。

 そして、DMNは「心がさまよっているときに働く回路」でもある。意識が常に過去や未来に向かい、“いまここ”にない状態が慢性化すると、注意散漫、無気力、イライラといった脳疲労のサインが出てくる。つまり、脳のアイドリング中に浮かんでくる雑念こそが、脳疲労の最大要因のひとつなのだ。そこで、瞑想によって意識を“いまここ”に向けることで雑念を抑え、脳を休ませるというのがマインドフルネスの基本メカニズムである。

 マインドフルネス瞑想については、さまざまなやり方やコツがあるので、ここでは基本的な方法の説明にとどめたい。座禅のように結跏趺坐の姿勢をとらなければいけないというわけでもなく、本書で紹介する方法は、実に簡単だ。

 まず①椅子に座り、目を閉じる。その際、「背中はシャッキリ、お腹はゆったり」がコツ。手は太ももの上に置き、足の裏を地面にぺたりとつける。②身体の感触に意識を向ける。足の裏と床が接触する感触や身体が重力に引っ張られる感覚を意識する。③呼吸に注意を向ける。その際、「1、2、3」と呼吸を数え、10まで数えたらまた1に戻る。④雑念が浮かんだら、それに気づくだけでよい。そして再び注意を呼吸に戻す。呼吸は意識の錨みたいなものなのだ。

 脳は習慣を好むため、1日5分でも10分でも毎日やることが大切。さらに同じ時間、同じ場所でやるとよい。座った状態の瞑想だけでなく、他にも「歩行瞑想」や「ムーブメント瞑想」、歯磨きや車の運転に意識を向ける方法があり、日常的な所作の中でマインドフルネスを実践することが可能だ。長期間やり続けることでより効果が期待できるという。

 本書では、小説形式でマインドフルネスが語られる。アメリカのイェール大学に学ぶ日本人女性ナツは、禅寺の住職である父に厳しく育てられたせいで座禅アレルギーがあり、マインドフルネスを「非科学的」と感じていた。そんな彼女が、ヨーダと呼ばれる脳科学者から教えを受けることで、徐々にマインドフルネスの効果を実感していくというストーリーだ。たしかにマインドフルネスの起源は原始仏教にあり、禅にも通じるものだが、西洋人が宗教性を排除して自分たち用にアレンジしたものがマインドフルネスなのである。

 近年、脳科学の世界でマインドフルネスが注目され、さまざまな研究報告が発表されている。たとえば、燃え尽き症候群やうつ病の改善に効果があるという報告があり、うつ病の人たちには、「あのとき、ああしておけばよかった」という反芻思考がよく見られるが、これもDMNの使い過ぎと関連性が指摘され、マインドフルネスによって改善できると考えられている。他にも不安やパニック発作、老化による脳の萎縮にも効果があるとされている。

 気がかりなことがあると、頭の中に繰り返し雑念が現れることがある。これが「モンキーマインド」という状態であり、脳のエネルギーが膨大に浪費される。この思考ループから脱する方法としては、まず「何度も考えた」という事実に気づき、「もう十分」と頭の外に送り出すようにイメージするとよい。他にも、その考えが当てはまらない例外を考えてみることや、自分が尊敬する人や偉人になったつもりで考えてみるといった脱し方がある。また、繰り返し現れる思考に「名前」を付けると、ループに陥りづらくなるそうだ。

 マインドフルネスは、心の折れやすさを左右するレジリエンス(復元力)を高める効果も期待できる。レジリエンスは楽観性によって高まるとされているが、マインドフルネスの場合、「エクアニミティ」という方法がある。瞑想中にあえて不安に思っていることを心に思い描き、「世の中はそういうものだ」「どんなこともありのまま受け入れられますように」と心の中でつぶやくのだ。ほとんどの苦難は、将来への不安で水増しされている。目の前にあるトラブルは、実はそれ自体では大したことがないものなのだ。マインドフルネスによって“いまここ”に集中することで、レジリエンスを高めることができるだろう。

 もともとマインドフルネスはアメリカで広まっていった。それまでのアメリカ人はビジネスの方法を追求するばかりで、休息についてはあまり向き合ってこなかった。リゾート地で羽を伸ばすことが休息だと勘違いしていたのだ。しかし、リーマン・ショック以降、短期的な利益志向ではなく、持続的な収益性がビジネスの世界で求められるようになった。同様に休息についても、その場しのぎのリラックスではなく、より根本的・長期的な解決が求められるようになった。その最前線こそが、脳科学と結びついたマインドフルネスなのだ。1日5分でいいので、今日からぜひ実践してみてほしい。きっと頭がスッキリするはず。

『世界のエリートがやっている最高の休息法』 3つのポイント

●脳の自動操縦状態(DMN)で浮かぶ雑念が、脳疲労の要因

●マインドフルネスによって意識を“いまここ”に向ける

●1日5~10分でいいので、毎日続けることが大切

文●大寺 明

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