『ファンベース』要約まとめ

情報過多のこの時代、いくら広告やキャンペーンに力を入れても、なかなか消費者には届かない。広告記事がバズって話題になっても、一瞬で忘れ去られ、効果があったのかなかったのか……。企業としては悩ましいところですが、ちょっと視点を変えてみては? 「20:80の法則」がありますが、商品ビジネスにおいて、実は20%のファンが売上の大半を支えているものです。新規顧客の獲得ではなく、ファンをベースにしたマーケティングとは?

長らく「話題化」は正義だった。キャンペーンや販促イベントが新規顧客へのリーチに直結した時代が長く続いたため、とにかく話題にすることが広告やPRの使命だったのだ。しかし、今の世の中は情報も商品もエンタメも溢れすぎ、広告やキャンペーンが届きにくくなっている。たとえ話題になっても、一過性かつ瞬間風速的であっという間に忘れられてしまう。さらに人口減少や超高齢化、独身増加により、新規顧客の獲得はどんどん難しさを増しているのだ。

 広告やキャンペーンに効果がないということではない。生活者はさまざまな接点で企業や商品に接しているわけだが、問題はどこかで好印象を受けても、それが積み重なることなく、資産化されないことだ。そこで考えなければいけないのは、消費者にリーチした前後をどう組み立てるか。本書が提唱するのは、キャンペーンなどの短期・単発施策と中長期ファンベース施策を組み合わせ、「相乗効果」を生み出すことである。

 著者が言う「ファンベース」とは、ブランドや商品を支持するファンをベースとして、中長期的に売上や価値を上げていこうとする考え方である。「20:80の法則」が知られているが、この法則はほとんどの商品ビジネスに当てはまる。ある飲料メーカーでは8%のコアなファンが46%の消費量を支え、普通のファンも含めると、なんと売上の90%を占めるなど、少数のファンが売上の大半を支えているものなのだ。もしファンがもう少し多く買ってくれるだけで、売上は必ず数%上がるはずだ。

 しかし、依然として多くの企業は、新規顧客を獲得することで売上を伸ばそうと躍起になっている。人口減少の時代となった今、大量にものが売れた時代の成功体験から脱却すべき時期に来ていることを、認識しなければならない。そのうえエンタメの数も爆発的に増え、企業の広告記事を消費者に届けることが極めて困難であることも考えなくてはならない。

 新たな手段として、SNSによる「バズ」が有効と考えられているが、実際はSNSユーザーの約20%にあたるヘビーユーザーが総利用時間の80%を占有し、「バズ」の効果も限定的だ。ネット検索にしても、検索を活用している人は東京に一極集中しているのだ。広告マンやマーケッターはSNSやネットを多用しているため錯覚しやすいが、いまだテレビなどの「従来型のキャンペーン」のほうが効果的なのだ。ただし、SNSは企業とファンとのつながりを強くするメディアとして有効だ。

 情報や広告に飽き飽きしている生活者にもっとも届く(リーチする)方法が、価値観が近い類友のオススメである。SNSに限らず、カフェや居酒屋のちょっとした会話で、人は自分の好きなもの、気に入ったものを類友に言いたくなる。これを著者は「オーガニック・リーチ」と呼ぶ。このサイクルは自走式で勝手に広がり、いわば最強のメディアだ。つまりファンが「新規顧客の獲得」に一役買ってくれるのである。

 では、少数のファンの支持を強くするためには、どうすればいいだろう? そのためには彼らが「大切にしている価値」をキープするだけでなく、その延長線上にある「未来の価値」をファンとともに創出していくことが求められる。ファンベースは、ファンから儲けようとする「ファン・ビジネス」とは一線を画す考え方なのだ。

 ファンベースで大切なものとして、著者は「共感・愛着・信頼」の3箇条をあげている。まず「共感」においては、企業やブランド、商品が「支持されているポイント」を知るために、ファンの言葉に傾聴することが出発点となる。アンケート調査では共感ポイントが見えにくいため、ファン同士で語り合ってもらうファン・ミーティングが最適だ。

 ファンが求めているのは、「支持している価値」のブレない改善である。そのためにも定期的にファン・ミーティングを開催し、企業とファンが一緒になって「価値」を変化・成長させていくことが大切になる。また、ファンであることに自信を持ってもらうための施策や、新規顧客よりもファンを優先する施策も重要になってくる。

「愛着」は、繰り返し長く使ってもらうことだが、単に機能的に優れているだけでは愛着までには至らない。他に代えがたいストーリーやドラマがあってこそ、人は「愛着」を覚えるのだ。そのためにも創業ストーリーや開発ストーリーを積極的に情報発信していくといい。また、接客やSNS、コールセンターなど、ファンとの接点も愛着につながる。その際のポイントは、誠実であり続けること。

「信頼」は、企業自体に対する評価である。いくら商品が素晴らしくても、企業の評判が悪ければ信頼は得られない。たとえば、ユーチューブのスキップできない広告や、しつこくつきまとうリターゲティング広告、迷惑な電話営業は反感を持たれることが多く、むしろ逆効果だ。あるいは無料のお試しプランから通知なしの有料プランへの移行や、わざと解約ページが見つかりにくくするなど、それが誠実といえるかどうか、ゼロから考え直してみるべきだろう。

 こうしてファンベースを築いたうえで、短期・単発施策と組み合わせると、効果はより強くなる。情報過多な環境であっても、ファンは自分が支持するブランドや商品のキャンペーンには注目するものだし、それが「きっかけ」となって類友にオススメしてくれるからだ。ファンを大切にするというと理想論に聞こえるかもしれないが、ファンの笑顔を作ることほど、うれしく、誇らしく、やり甲斐のある仕事は他にないだろう。

『ファンベース』 3つのポイント

●20%のファンが、売上の80%を支えている

●ファンの類友へのオススメは、最強のリーチ法

●企業とファンが一緒になって「価値」を成長させていく

文●大寺 明