ストリートから起業し、「パフォーマンス」を軸に多角的事業を展開。社会派ダンスアーティスト「ロボットのぞみ」の独立ノウハウ

ロボットのぞみ/沖縄県生まれ。
会社員を経て、ストリートパフォーマーとして独立。2007年に活動拠点を東京に移し、ヘブンアーティスト免許を取得。2008年に蜷川幸雄の舞台に出演。同年、「劇団ROBOT COMPANY」を創設。2009年にストリートパフォーマンスで日本一周を達成。2010年にヨーロッパ各国で修行。2014年より下北沢に劇場を作り始める。同年、株式会社RPGエンターテインメントを設立。2015年にプロパフォーマー育成スクールRPGを開校。同年、レストラン「月夜と森のサーカス」をオープン。


――独立DATA――
18歳で独立
【開業資金/3000円】

・ジャグリング道具/3000円

開業資金はジャグリング道具の3千円のみ。その後のロボットパフォーマンスにしても、段ボールでロボットを自作したので費用はかかっていない。マイクやヘッドセットなどの音響機器があった方が良さそうに思えるが、のぞみさん曰く、「プロ感が出るので使わないほうがいい」とのこと。なぜならストリートで投げ銭を入れる人は、プロだからお金を払うということもあるが、多くはストリートパフォーマーという草の根的な生き方を応援したいと思うものだからだ。

――事業内容――
RPGエンターテインメント
2014年10月2日設立
タレント、パフォーマー、アーティスト等のスクールの運営および芸能マネージメント業務。国内外のイベント企画、運営およびタレント等の派遣事業。劇場の運営。飲食店の経営。CD、DVD等の映像および音楽ソフトの企画制作および販売、原盤権の管理。書籍、WEBコンテンツの企画・制作およびデザイン事業など、「パフォーマンス」を軸とした多角的な事業を展開している。

街角で見かけるストリートパフォーマンス。人に雇われず、自分の力で自由に生きる姿を見ていると、淡い憧れを抱いてしまいます。今回取材したロボットのぞみさんは、会社員時代にストリートパフォーマンスを見て、翌日には独立を決意。ストリートとイベントで経験を積んだ後に起業し、今ではタレント事務所、パフォーマー育成スクール、レストランなど多角的に事業を展開する会社経営者なのです。彼のパフォーマンスにかける想いとは?

出張修理の仕事をしていたとき、広場でストリートパフォーマンスと出会い、翌日には退職届けを出していた

 子どもの頃からゲームプログラマーになりたくて、中学生のときに独学でプログラミングを覚えました。キャラも音楽も全部自分一人で作っていて、RPGや格闘ゲームなどいろんなゲームを作りましたね。ゲームばかりしていたこともあって、コミュニケーションが苦手なタイプだったんですけど、高校生になってからブレイクダンスを始めたんです。動機は、好きな女の子を振り向かせたかったから(笑)。単純な動機です。失敗しましたが(笑)。

 高校卒業後、地元の沖縄で就職しました。電化製品の出張修理の仕事だったんですけど、僕は故障したものを“直す”ことが好きだったので、それでお客さんが喜んでくれることにやり甲斐を見出していました。だけど、その仕事を30年40年と続けるのは何か違う気がしたし、サラリーマン人生は自分に合わないように感じていました。

 そんなある日、広場でジャグリングをしているストリートパフォーマーを見たんです。自分もブレイクダンスをやっていたので、技を披露することでお金をいただくなんて、すごく面白い生き方だなって思いました。自分もやってみたくなって、その日のうちにネットでジャグリング道具を注文して、翌日には退職届けを出していました。

 とりあえず、見よう見真似で練習して、1カ月後に広場でストリートパフォーマンスをやったんです。仕事も辞めていたので、この道しか残されていないという危機感が、そのときの原動力だったわけですけど、1カ月かけて練習した対価が3500円にしかならなくて、なんでこの道を選んじゃったんだろう……と最初は後悔してました(笑)。

 沖縄だとパフォーマンスができる広場は、土日しか人が集まらないんです。他のパフォーマーもいるので、自分ができる回数も限られている。これではとてもやっていけないと思って、東京に活動拠点を移すことにしました。当時はジャグリング、マジック、ファイヤーパフォーマンス、バルーンアート、パントマイムなど、いろんなパフォーマンスを全部混ぜてやっていて、新宿駅や北千住駅、川崎駅や立川駅など、毎日どこかしらの現場に出てましたね。

 あるとき、「自分は何を伝えたいんだろう?」と疑問に思ったんですよね。技を披露して、ただ「スゴイ!」ってことを伝えたいわけじゃないって……。僕は昔から自分でゲームをプラグラミングして物語を作ることが好きだったわけですけど、その中にロボットが世界中の様々な問題を解決する物語があったことを思い出したんです。自分は物語性のあるパフォーマンスを作りたいんだ!と気づいて、それが一番作りやすいのがパントマイムだったんです。

テレビ出演後、全国各地からイベント出演の依頼が来るようになり、ストリートからイベントに仕事が切り替わった

 こうして誕生したのが、ロボットのパフォーマンスです。ストリートで人を立ち止まらせるためには、ぱっと見たときに「?」を生ませることが大切です。80年代には外国人がジャグリングをしているだけで大勢の人が集まった時代もあったそうですが、それは見たことがなかったからなんですよね。今の時代は、みんなジャグリングを見たことがあるので、一目見てそれとわかると一瞬で通り過ぎてしまう。ところが、ロボットという異質な存在に扮してパフォーマンスをすると、不思議と立ち止まってもらえるんです。

 ロボットの目がランダムに点滅するんですけど、そうすると「何を伝えようとしているんだろう?」と気になって、とりあえず20秒くらいは見てくれます。それから光っている目を取り出して小さな箱に入れ、その箱を覗き込んでもらうように誘うんです。そうやってお客さんとの距離を縮めてから、戦争や差別といった現代社会が抱える問題を解決させられるようなメッセージを伝えるパフォーマンスを展開していきます。

 ヘブンアーティスト(東京都の公認大道芸制度)のライセンスを取ったときに、審査会場でテレビ番組のプロデューサーに声をかけられたことがきっかけで、『あらびき団』(パフォーマー紹介番組)に出演することになったんです。テレビに出たことで、全国各地からお声をかけていただくようになり、ストリートからイベントというお仕事に完全に切り替わりました。ショッピングセンター、結婚式、商店街のお祭り、企業パーティー、学校の文化祭など、いろんな所に行きましたね。ただ、今でも初心を忘れずにストリートをやるときがあって、ファンクラブに入っている人だけに告知するようにしています。SNSで告知すると通報が入るので。

 2008年には蜷川幸雄さん演出の舞台「さらば、わが愛 覇王別姫」に役者として出演しました。ストリートではできない表現ができることが新鮮でしたね。たとえば照明の暗転ひとつで翌日になったり1年後になったり、時間の移り変わりが表現できるんです。舞台に出演したことがきっかけで、自分の劇団を作ろうと思いました。練習のためのスタジオ代がもったいないというのもありましたね(笑)。

 HPとブログで自分がやりたいことを発信したところ、協力してくれる人が集まってくれました。こうしてできたのが演劇集団「ROBOT COMPANY」です。しばらく活動して解散したんですけど、僕は物語が好きなので、もっともっとやりたいと思いましたね。それで後に下北沢に劇場を作ろうと思ったんです。

ストリートパフォーマンスの投げ銭だけで日本一周を達成。最終的に自分の力だけで生きていける自信がついた

 2009年には、自分への挑戦として、ストリートパフォーマンスだけで日本一周しました。所持金ゼロでスタートして、3カ月ほどかけて47都道府県すべて周るという旅です。いつかこの経験を本にしたいと思っていて、ハードな旅を覚悟していたんですけど、この頃には芸歴3年くらいになっていて、20分のパフォーマンスで2~3万円くらい稼げるようになっていたので、いとも簡単に日本一周ができてしまいました(笑)。

 なんの苦労もなくホテル暮らしをしていたんですけど、それじゃあ物語的に面白くないと思って、お金があるのにあえてカラオケボックスで寝たり、トイレで一夜を明かしたりしましたね(笑)。困ったことというと、そもそも駅前に人がいない……というときです。特に四国や東北の日本海側は人が少なかったんですけど、中でも福井駅でやったときはお客さんが一人だけ……。たとえ人がいなくても一応はパフォーマンスをして、早々に次の県に移動してましたね

 背中に「日本一周中」と書いていると、いろんな人が「がんばれよ」と声をかけてくれて、餞別をもらったことが何回もありました。ときには嫌味を言ってくる人もいたけど、僕はこの旅を通して、人に元気になってもらいたかった。自分にできないことに挑戦している人を見ると、自分も頑張ろうって思えるじゃないですか。

 この旅を通して、自分の力だけで生きていける自信がついたことが大きかった。たとえ仕事を失っても会社が倒産しても、ストリートパフォーマンスで食っていける。もし日本が没落したとしても、物価が高い国に行けば普通に稼げると思うんです。最終的にストリートで食っていけることがわかったので、とりあえずいろんなことに挑戦して、全部失敗した後でまたやればいいや、と思うようになりましたね。それで心理カウンセラーのスクールに2年間通うことにしました。心理療法の手法は、ショーの構成や間にはさむ言葉に活かしています。

 日本一周の翌年には、ストリートパフォーマンスだけでフランス、イタリア、スペインなど、ヨーロッパ各国を周りました。日本だとストリートパフォーマーを色眼鏡で見る人も多いですけど、ヨーロッパの人たちは違いましたね。特にフランスはストリートパフォーマーをアーティストとして見てくれる文化があって、お客さん一人ひとりが自分の価値観を通してパフォーマンスを見てくれるんです。「君のパフォーマンスは詩的だね」ってよく言われましたね。

ストリートで集めた資金で劇場を作り、法人化してタレント事務所やスクールを経営。パフォーマンスの可能性を追求したい

 2014年からは、ストリートで集めた資金を元に下北沢に劇場を作りはじめ、「株式会社RPGエンターテイメント」を設立しました。今は曜日によって、劇場、バーレストラン、貸し劇場・スペース、アートギャラリーというふうに使い分けています。

 そして2015年には、「パフォーマー育成スクールRPG」を開校しました。自分には仕事の依頼がたくさん来るので、僕のすべてのノウハウを教えて、替わりに仕事をお願いできるパフォーマーを育てたいというのもあったし、「大道芸ね……」という感じじゃなく、世の中的に認められたブランドを作りたかったんです。

 そのためにはマーケティングやプロモーション、ブランディングやトレンドを知らなければいけないと思って、2日に1冊は本を読むようにして、経営面でいろんなことを勉強しました。タレント事務所やスクール、出張パフォーマンスサービスといったいろんな事業をやることで、パフォーマンスというものの可能性を追求したいと思っています。

 スクールの受講生は、パフォーマーとして独立を目指している人が7割、本業を持ちながらパフォーマンスを学びに来た人が3割です。たとえば保育士や介護士の人が、パフォーマンスを自分の仕事に活用するために学んでいます。コンセプトとしては、「表現とはなんぞや」といったアート表現ではなく、ストリートでお客さんを集める技術や現場を盛り上げる技術など、本当に“使える技術”を教えています。

 パフォーマーは自分から営業する人が滅多にいないんです。「ショーを見てくれた人が仕事をくれたらいいな」くらいに思っている人が9割方なんですけど、タレント事務所にして、ちゃんとパンフレットを用意して営業しています。ショッピングモールなどの商業施設だと、個人では絶対に入れないものですが、会社だと反応がまったく違うので、仕事の幅も格段に増えました。

 これまでは一人で勝手にやっている感じでしたけど、経営する側になったことで、自分だけ儲かればいいという話でもなくなり、業界の5年後10年後を考えるようになりましたね。業界全体の仕事を少しでも増やすにはどうすればいいのか、どうやって人を引っ張っていけばいいのか、一人のときは考えたこともなかったことばかりです(笑)。

 子どもの頃から作ることが何より好きで、いろんなゲームを作っていたわけですけど、自分にとっては、ショーを作るのも会社を作るのも、同じような感覚なんですよね。プラモデルのパーツが違っていることに気づいて、もう一回作り直す、みたいな(笑)。そうやって試行錯誤する作業としては、まったく同じだと思ってます。

パフォーマー 独立ノウハウ集

独立前(ストリート)

ヘブンアーティストに挑戦すべし

東京都の公認大道芸制度「ヘブンアーティスト」を取得しながら、ロボットのぞみさんは結局、利用しなかった。なぜなら上野公園や代々木公園など場所が限定され、日中しか活動できないからだ。ストリートは場所と時間が何より重要であり、サラリーマンが多い新橋や新宿のほうが多くの投げ銭が期待できるし、時間は夕方から21時くらいが稼ぎ時となる。そのぶん注意を受けるリスクもあるのだが……。ただし、ロボットのぞみさんにとってヘブンアーティストが無意味だったかというと、そうでもない。審査会場で番組プロデューサーからオファーされ、大道芸人紹介番組「あらびき団」への出演が決まった。これにより一躍、全国区の知名度になったのだ。

オリジナリティーを出すべし

ストリートパフォーマーの稼ぎは、人によってピンキリらしい。ある程度の金額を稼げるようになるまでには、だいたい2年ほどかかり、ロボットのぞみさんの場合、芸歴1年半ほどで月70万円ほどの収入を得ていた。パフォーマーとして生計を立てるコツを聞いたところ、「オリジナリティーを出すことが大切」とのこと。似たようなパフォーマンスでは、お客さんも集まらないし、わざわざ足代を負担してまでイベントに呼ぼうとは主催者側も思わない。あとはパフォーマーの人生観や人間性が伝わる表現が大事とのこと。

自分に合った表現の場を見つけるべし

ストリートでは、街ゆく人を立ち止まらせ、近くに引き寄せる方程式があるという。パフォーマンスであれば一回、場を盛り上げる鉄板の技術を披露し、路上ミュージシャンであれば、誰もが知るカバー曲を演奏してからオリジナル曲を聴かせるという具合だ。ロボットのぞみさんも、自分なりの様々な方程式を見つけたが、逆にそれが足かせとなり、ストリートの限界を感じるようになった。ロボットのぞみさんは、物語性のあるパフォーマンスを通して人にメッセージを伝えることを目的にしていたため、ストリートから劇場へと表現の場を移すことにした。

起業後

パフォーマンスを進化させるべし

ひと昔前は、ひとつの技や芸を究めさえすれば、同じパフォーマンスをやり続けていればよかった。しかし、今ではパフォーマンスをどんどん進化させていかないと、イベントにも呼ばれなくなっているそうだ。昔ながらの芸ではなく、見たことのない新規性や、SNSとYoutubeの集客力が求められるようになった。そこでロボットのぞみさんは、パフォーマンスにプロジェクションマッピングを取り入れたり、ARやVR、ドローンといったテクノロジーと組み合わせた革新的なパフォーマンスを開発。RPGエンターテイメントでは、こうした話題性のあるパフォーマンスを積極的に打ち出している。

法人の営業力と信用力で、仕事の幅を広げるべし

RPGエンターテイメントは2017年よりタレント事務所、2018年より一般向け出張パフォーマンスサービスをスタートさせた。パフォーマーの9割以上は自営業で、人からすると実態がよくわからない商売であり、自ら営業をかけることもまずない。そのため活動の幅も限られてくるものだが、タレント事務所であれば、テレビ局にプレスリリースを送って営業をかけ、テレビ出演も可能になるし、会社の出張パフォーマンスサービスとして、個人宅で誕生日プレゼントのショーを提供したり、学校や病院でもやりやすくなる。個人のパフォーマーはいわばCtoCの商売であり、これに対しRPGエンターテイメントはBtoB、BtoCのビジネスを可能にした。

思い立ったらすぐ行動すべし

ストリートパフォーマンスで稼げる人は、ずっとストリートをやり続けるものだが、ロボットのぞみさんは、かなりの稼ぎがありながらストリート活動を休止し、劇場、スクール、レストラン、タレント事務所など次々と新たな挑戦を続けている。彼の挑戦に対する考え方を聞いたところ、「成功している人は、思い立った瞬間に始めているもの」だと言う。そして、「成功している人ほど失敗している数の方が多い」とも言う。もし、ストリートをやるかやらないか迷っている人がいたら、ロボットのぞみさんに言わせると「悩んでいる時間がもったいない」のである。

取材・写真・文●大寺 明

日本アートパフォーマンス協会
RPGエンターテインメント

アートパフォーマー・インフルエンサー専門のタレント事務所です。
社会派ダンスアーティスト・ロボットのぞみをはじめ、
わたあめパフォーマー、尺八奏者、マジシャン、ヒューマンビートボックスや
AR・VR・ドローンを駆使したショーなど、多彩なパフォーマーによる
今までにない企画・空間・イベント・講演会を開催しませんか?

プロパフォーマー育成スクール
RPG
幼稚園や学校、イベントやテレビなどでショーをして、
それを仕事として生きていけるパフォーマーになるための専門的スクールです。

【スクール方針】
●パフォーマンスという世界共通のコミュニケーション能力を身につける
●映像や最新技術を取り入れた次世代のパフォーマンス
●初めての人が世界を目指すための指導。オリジナルの作り方・追求

講師には、世界チャンピオンの技術の先生、ギネス記録保持者、
10万登録者を持つユーチューバーなど、各スペシャリストがそろい、
授業カリキュラムも基礎から応用、仕事術までこだわっています。
コースや授業内容はHPをご覧ください。

サーカスが観れるレストラン
魔法とアートのサーカス場
パフォーマンスをしながら料理を作るお店です。
団体貸切パーティープランもございます。

【営業時間】土・日 18:00~22:00
【アクセス】東京都世田谷区大原1-56-4
下北沢駅より徒歩15分、笹塚駅より徒歩8分