文系出身エンジニアが、実務経験2年でフリーランスとしてやっていけるか? 結果は年収4倍増。フリーエンジニアの独立ノウハウ

トビタ/1991年茨城県生まれ。
千葉、栃木、群馬、埼玉など関東各地で育つ。大学の経済学部卒業後、IT企業に就職するも9カ月で退職。IT派遣会社に転職し、2年半勤務した後、派遣社員を経て、2018年2月にフリーランスエンジニアとして独立。現在、数社の業務委託を掛け持ちし、月収はコンスタントに100万円前後をキープしている。


――独立DATA――
27歳で独立
【開業資金/0円】
もともと持っていたパソコンを使い、自宅を仕事場にしているため、開業資金はかかっていない。仕事のために購入したものというと、長時間パソコンに向かって猫背にならないように「姿勢矯正サポーター」くらいだそうだ。

――事業内容――
■フリーランスエンジニア
業務委託でプログラミングの仕事を請け負う。サーバーサイドとフロントエンドの両方ができるエンジニアとして様々なプロジェクトにジョインし、出社勤務やリモートワークなど柔軟に対応している。使用可能プログラミング言語/Go言語、JavaScript、Ruby、Java、ABAPなど。

「フリーランスエンジニア」で検索すると、高額案件や「稼げる」といった記事がたくさん見つかります。一方で、それは広告やアフィリエイトであって、「そんなに甘いもんじゃない」と疑問視する声も。今回取材したフリーエンジニアのトビタさんも、ネットの情報を安易に信用できず、「文系出身のエンジニアで、実務経験2年の自分がフリーランスでやっていけるのか?」と不安だったそう。実際のところどうなんでしょう。結果やいかに?

IT企業に転職してエンジニアとして働くも、気づけば25歳で月収20万円以下というシビアな現実に直面……

 僕は経済学部卒の文系出身で、まさか自分がエンジニアになるなんて思ってもいませんでした(笑)。学生時代は特にやりたい仕事があるわけでもなく、むしろ働きたくないくらいで、大学4年の2月まで就職活動を一切していなかった。さすがにこれはマズイと思って、何でもいいから就職先を探したところ、ギリギリ滑り込みで業務管理パッケージを運用するIT企業に就職できたんです。

 技術コンサルタントのような職種で入社したのですが、業務管理パッケージを動かすために簡単なソースコードを書く必要があったので、入社後はABAPというプログラミング言語の研修がありました。これまでコードなんて見たこともなかったので最初はわけがわからなくて、何も理解せずに言われるままコードを書いている感じでしたね(笑)。

 研修後、しばらく自社でサポート業務を経験してから、クライアント企業に常駐勤務する予定でしたが、僕は現場に行く前に会社を辞めてしまったんです。理由はふたつあって、ひとつは月45時間以上しか残業代がカウントされない「みなし残業制度」に納得できなかったこと。だったら残業しないほうが得だと思って、できるだけ早く帰るようにしていたんですけど、残業が習慣化した社風だったので、同僚や先輩は遅くまで仕事をしている。そうした部分で周囲とのズレを感じはじめたんです。

 もうひとつの理由は、忘年会で女装ダンスをさせられそうになったことでした(苦笑)。面倒を見てくれていた先輩が女装ダンスにノリノリになっていて、無碍にするわけにもいかず困り果てていたところ、気づけば「辞める」とという選択肢を取ってました。9カ月で退職することになったわけですが、女装ダンスを回避できて本当に良かった、と今でも思います(笑)。

 その後、大学時代の先輩が勤めていたIT派遣の会社に転職しました。主にネットワーク系のインフラを構築するSES(システムエンジニアリングサービス)を業務委託で請け、クライアント企業に社員を派遣するという会社です。Javaの研修を受けて、今度はエンジニアとして働くことになりました。通販サイトの開発現場に常駐することになったのですが、その現場の居心地が良くて、仕事の面では特に不満はなかったです。

 だけど、気づけば25歳にして手取り20万円以下というありさまで、将来の不安が募りはじめたんです。その頃の自分は、収入を上げる方法も考えたことがなかったし、フリーランスという働き方があることも知らなくて、ただ惰性で会社に居続けているような感じでした。社会人はこんなもんなんだろうな……と思いながら、埼玉から1時間かけて満員電車に揺られる毎日が、ただたた憂鬱でしたね。

カジュアルな働き方をするために、流行りの言語を習得したかった。Rubyの実務経験を積むべく、一旦、派遣を挟むことに

その頃、外資系保険会社に勤める年上の友人から、「もっと稼がないとダメだ」と言われ続けていました。それがきっかけで、エンジニアの収入を上げる方法をいろいろ調べはじめたんです。まずブログや情報サイトを見て、会社員以外にも派遣やフリーランスという働き方があることを知って、どれくらい稼げるのか、どれくらいリスクがあるのか、といったことをひと通り情報収集しました。

 フリーランスエージェントという便利なサービスがあることを知って調べはじめたのですが、ブログや情報サイトにはアフェリエイトの収益のために書かれた記事も多いですから、情報を疑う気持ちもありましたね。ひとつの情報源だけを信じるのは博打みたいなものなので、いろんな人の記事やエージェントのサイトを見比べて情報を精査するようにしました。たとえ多少の誇張があったとしても、今より状況は確実に良くなるはずだと思いましたね。あとは実際にエージェントに話を聞きに行って判断することしました。

 会社を辞めた後、結局すぐにはフリーランスにならず、一旦、派遣の仕事を挟むことにしました。なぜかというと、これまで使ってきたプログラミング言語だと、フリーランスエージェントでなかなかいい案件にめぐり合えなかったからです。

 最初の会社で使っていた言語は、その業界内では一般的なABAPという言語でしたが、同じようなパッケージを扱っている会社でないと使い道がなかったし、次の会社で使っていたJavaはかなり広く使われているものの、業務系や政府系などのお堅い仕事で使われることが多い言語なので、僕が求めているカジュアルな働き方が実現できそうになかった。フリーランスになるからにはリモートワークをしたいと思っていたので、ITベンチャーでよく使われているRubyを習得しようと考えたんです。

仕事のかたわら独学でRubyを勉強していましたが、いきなりフリーランスとしての実務で使いこなせるかも不安でした。そこでまずRubyを使える派遣の仕事に就くことで、業務のなかで実践的に身に着けていくことにしたわけです。派遣社員はそこまで期待値が高くないこともあって、実務で触ったことがない言語だったとしても、一応はエンジニア経験があるということでアサインできる派遣先がいくつかあったんです。もし未経験の言語で仕事をしてみたければ、正社員より派遣のほうがずっと入りやすいのでオススメです。

独立のきっかけは、ツイッターでした。IT企業に声をかけられ、週4の仕事を始めた直後、またもツイッター経由で依頼が入った

 半年で派遣の契約が終わり、その後にフリーランスになったわけですが、実は独立のきっかけはツイッターだったんですよ。業務用のツイッターアカウントを作り、Rubyで作ってみたWEBサービスのURLをプロフィールに載せていたところ、それを見て基本的なことはできそうだと思ってもらえたらしくて、ITベンチャーの方がツイッター経由で声をかけてくれたんです。

 エンジニア業界では、SNSで直接依頼することが最近どんどん行われるようになっているようです。企業側としても、派遣会社やエージェントに中間搾取されないというメリットがありますし、働く側も同じ理由で、料金が上乗せされやすいというメリットがあります。ツイッターの後、その会社の面接を受けたのですが、今はどこも人手が足りていないようでした。だからSNSを使って多数の人に声をかけているのだと思います。

 フリーランスは業務委託になるので、企業のプロジェクトにジョインして自分の技術と時間を提供するという感覚です。最初の業務委託の仕事は、10時~19時までその会社に出社する働き方でした。それだけだと会社員時代と変わらないですが、週4日の勤務で報酬が月60万円なので、いきなり会社員時代の3倍の収入になったわけです。

 だからといって非常にレベルの高い仕事を要求されるというわけでもありません。当初は先方の要望に応えられるか……という技術的な不安もあったんですけど、実際やってみると、「ぜんぜんイケる」という感じでした。僕は経験も浅いですし、寝ずに勉強してきたというわけでもないので技術力自体はそこまで高くない。基本的な言語の使い方がわかっていて、仕事の流れがつかめていれば、あとは自分なりに技術を向上させていけば十分やっていけると思います。

 これまでと同じように仕事をしているのに、収入が倍以上違うなんて不条理ですよね(苦笑)。たしかに正社員のほうが社会保険の面でコストがかかるというのはありますが、それを抜きにしても会社員の給料が削られすぎているように感じました。フリーランスの報酬が特別高いというより、本来はそっちのほうが適正な金額なのかなって思うようになりましたね。

 週4日のフリーランスの仕事を始めた直後、またもやツイッターで別の会社からも声がかかりました。その仕事は週2日のリモートワークで月30~35万円の報酬です。週4の仕事と並行してその仕事も請けたので、週6日勤務になって負担は多少増えましたけど、週2日は家で仕事をしていたのでヘトヘトになった感じでもなく、ストレスも特に感じませんでしたね。

フリーランスになってから技術向上に取り組むようになった。新しい言語を習得して、自分の武器を強くするような感覚です

 最初の週4の仕事は契約どおり半年で終わり、問題は次の仕事が見つかるかです。フリーランスは仕事が途切れるリスクがあるわけですけど、僕の場合、すぐに知人から仕事を紹介されて間を開けずにすみました。IOT関連サービスのサーバーサイドの実装をする仕事だったのですが、週3日の業務委託で、そのうち出社するのは1日だけで2日はリモートワークという契約で、それも月60万円の報酬でした。最初からツイッターで仕事が入ったり、知人に高額案件を紹介してもらえたり、僕はかなり運に助けられていると思います(笑)。

 会社員時代の自分は、技術向上の野心もなく、言われた仕事をこなすだけでしたが、フリーランスになってから、「もっと自分の武器を強くしなくちゃいけない」と思うようになりましたね。今はゲームのレベル上げみたいな感覚で、楽しみながら技術向上に取り組んでいます。たとえばプログラミング言語の習得を自分のステータスだと考えて、この言語を伸ばせば、もうちょっと稼げそうだなって(笑)。それからRuby以外にも独学でJavaScriptとGo言語を勉強して、仕事で使えるようにしていったんですよね。

 独立してから順調に収入が上がっている状況なので、今はそれ自体がすごく楽しい(笑)。ストレスというほどのストレスもなく、独立のデメリットがまったく思い当たらないくらいなんですが、強いて言うなら、もし大変な不景気になったとき、今みたいに仕事が取れなくなる不安がありますよね。だけどそれはフリーランスだけのリスクではなく、正社員も同じだと思うんです。

 新卒社員だった頃、何年か上の先輩を見ていて危機感を感じていました。その会社だけで通用する技術や知識をいくら身に着けても、もし会社が潰れたらどうするんだろう? きっと苦労するんだろうなって……。正社員、派遣、フリーランスといろんな働き方を経験するなかで、柔軟性のある技術を身に付けないと戦っていけないという感覚が、より強くなっていったと思います。

 もちろんフリーランスに向いている人と、向かない人がいると思います。会社という後ろ盾がある中で安心して働くことを望む人もいれば、僕みたいに「もっと稼ぎたい、飽きっぽい、いろいろ試してみたい」という気持ちが強い人もいる。そういう人には、フリーランスはかなり有力な選択肢だと思います。自分の力が成果として露骨に出てくる状況を楽しめる人で、ある程度のリスクを許容できる人だったら、チャレンジしてみる価値はあると思います。

フリーランスエンジニア 独立ノウハウ集

独立前

相手の顔色を判断すべし

トビタさんは茨城、千葉、栃木、群馬、埼玉など関東一円を転々とする少年時代を過ごした。その都度、初対面のクラスメイトとコミュニケーションをとる必要があり、良くも悪くも「人の顔色を判断すること」を覚えたそうだ。これが意外にもフリーランスの仕事に活かされている。フリーランスの仕事は、案件ごとに毎回、初対面の人と働くことになるからだ。一見ネガティブな印象の能力だが、表情や言葉の端々から相手の要望を感じ取ったり、立場をわきまえて振舞う能力として捉えると、実は欠かせない能力かもしれない。

ファーストステップでその後の人生が決まる

文系出身のトビタさんがエンジニアになったのは、IT企業に就職したことがきっかけだった。「もし別の業界に行っていたら、今頃エンジニアにはなってない」とトビタさん。社会に出るファーストステップは、かなりその後の人生を決定づけるものなのだ。また、エンジニアというと理系の職種というイメージが強いが、トビタさん曰く、「WEBサービスを作るくらいの技術であれば、そこまで数学的な素養や理系の知識は必要なく、むしろ文章が書けるくらいのセンスがあればできる」とのこと。文系だから無理だと判断せず、実際にやってみなければ向き不向きはわからない。

プログラミング言語に慣れ、様々な言語にトライすべし

会社員時代の経験が独立後に役に立ったことは「特に思い当たらない」と話すトビタさんだが、あえて言うと、研修でプログラミング言語の基礎を学んだことが、その後、RubyやJavaScriptなど他の言語を学ぶ足掛かりになった。ちなみに最初に学んだABAPは企業向けのシステムパッケージに特化した言語であるため、使える業務範囲が限られる。次に学んだJavaは、OSに依存せず世界的に使われているが、業務系や政府系など堅い仕事で使われることが多いそうだ。トビタさんが自ら習得することにしたRubyは、開発スピードが速いことが特徴で、ITベンチャーで採用されることが多い。Rubyを業務レベルにするためにトビタさんは独学で勉強し、実際にRubyでWEBサービスを作って公開した。これがフリーランス初仕事のきっかけになった。

起業後

フリーランスエンジニアの「相場」を知り、交渉すべし

フリーランスになると、企業と金額面の交渉をしなければならない。お金の話が苦手という人もいるかもしれないが、相手の言い値で仕事を請けてしまうと、相場より安い料金で働くことになりかねない。トビタさんは独立するにあたって、まず先輩のフリーランスエンジニアとネットで交流し、相場を教えてもらうようにしたそうだ。その後、実際の交渉では自分から希望金額を伝えるのではなく、先方が用意している予算を聞き、それが相場より低い金額であれば、希望金額を伝えるか、はっきり断ることにした。月収100万円を超えることもあるという高収入は、トビタさんが自ら交渉して勝ち取った金額でもあるのだ。

契約書を確認し、できるだけリスクを減らすべし

フリーランスは企業に雇用される立場ではなく、互いに事業主として契約を結ぶ関係となる。そこで仕事を始める前に契約書に合意する必要があるのだが、「甲乙」と書かれた書面が難解なため、軽くしか目を通さないという人もいるだろう。しかし、トビタさんは入念に契約書を読み込み、納得できない事項があれば、訂正を申し出るようにしている。特にチェックすべき点としては、トラブルが発生した際の「損害賠償」の項目があげられる。これが企業によって有限か、限度額がない場合があるのだ。有限の場合は「契約額の50%」や「契約額の〇倍迄」と書かれているそうだ。限度額が明記してない場合は、念のため限度額を決めてもらうようにしている。

いざというときは、フリーランスエージェントを活用すべし

トビタさんは独立するにあたって、当初はフリーランスエージェントに仕事を紹介してもらうつもりでいたが、ツイッター経由で仕事が決まったため、結局、エージェントを経由して案件には参加しなかった。しかし、今でも3社のエージェントと関係を持ち、定期的に担当者と会って情報交換をしている。たまたま今のところ順調に仕事が続いているが、仕事が途切れたり、希望どおりの案件があればエージェントにお願いする気持ちに変わりはないそうだ。フリーランスになると、自分で仕事を取ってこなければいけない面倒さを危惧する人もいるかもしれないが、今の時代はIT専門派遣やフリーランスエージェントといった仕事紹介サービスがいくらでもあるので、仕事が途切れる不安はあまり考えなくてもよさそうだ。

取材・写真・文●大寺 明

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