「しつけ」は、犬ではなく、飼い主を変えることが基本。犬と人間が一緒に暮らすルールを教えるドッグトレーナーの独立ノウハウ

小野弘恵/1980年神奈川県生まれ。
音大卒業後、自動車ディーラーに入社。店頭営業に6年間携わった後、医療事務の仕事に転職し、4年間勤務。退職後、プレイボゥドッグトレーナーズアカデミーにて故・森山敏彦氏の元で犬のトレーニングを学ぶ。2014年に小田原で「ドッグトレーニング with a smile!」を開業。現在は藤沢・湘南エリアで活動中。 動物取扱業 保管第130205号 訓練第130206号


――独立DATA――
34歳で独立
【開業資金/計 約90万円】
・ドッグトレーナー養成スクール
入学金+授業料:864,000円
・動物取扱業申請費:約3万円
・名刺代:3千円

プレイボゥドッグトレーナーズアカデミーの「ドッグトレーナー養成コース(6カ月間)」の入学金と学費が総額864,000円也。ペット関連業で開業するために必須の動物取扱業の申請は、「保管(15,000円)」と「しつけ(15,000)」の2種別で登録。出張ドッグトレーナーとして自宅で開業し、HPも自作しているので、その他の開業資金はかかっていない。

――事業内容――
ドッグトレーニング with a smile!
藤沢市、鎌倉市、平塚市など神奈川県全域で出張ドッグトレーニングを行う。最初に60分のカウンセリング(2,000円)を行い、飼い主の困りごとと犬の性格や問題行動を把握し、4回コース/8回コース(各1回60分)で出張トレーニングを行う。その他、ペットシッターやお散歩代行も請け負っている。また、犬のしつけ教室やワークショップの講師を務め、「DOG PULLER認定サポーター」として競技に参加するなど、さまざまな犬関連のイベントに出演している。

犬と行けるカフェやホテルも増え、犬と暮らすライフスタイルを楽しむ人が増えています。そこで求められるのが、犬の「しつけ」や「社会性」です。室内で犬を飼うようになり、犬と一緒にいる時間が増えた今では、犬と人間が共に暮らしていくためのルールを教えていくことが大切。そこで頼りになるのが、ドッグトレーナーです。今回はドッグトレーナー養成スクールを卒業し、開業5年目になる小野さんにお話をお聞きしました。

愛犬の出産に立ち会うために会社を退職。わが子のようにワンちゃんを想い、もっと犬について知りたくなった

 神奈川県の足柄上郡という自然豊かな地域で育ったこともあって、子どもの頃から動物が好きでした。親に頼んで犬を飼わせてもらったり、動物番組や愛犬図鑑が大好きで、将来の夢は獣医になることだったんですけど、数学だけが苦手で、高校の先生に文系に進むように言われたんです。そのとき獣医の夢は諦めました。

ずっと吹奏楽をやっていたので、大学は音大に進学しました。その頃は、音楽イベントを企画・主催するような仕事に就きたいと思っていたんですけど、音楽業界の仕事は下積みのアルバイトからスタートすることが多い。それがイヤで正社員になりたいと思ったんですね。それで新卒で新車のディーラーに入社したんです。音大卒で営業職に就くのは、かなりレアだと思います。先生も驚いてましたね(笑)。

車がないと移動もままならない田舎で育ったこともあって、もともと車の運転が好きだったので、新車の案内をする接客の仕事は面白かったですね。私はパソコン作業や工場で黙々と作業することが、たぶん向いてない。だから、毎日違うお客さまと接する接客業が合っていたんだと思います。

26歳のときに結婚して、初めて自分の責任で犬を飼うことになったんです。実家でも犬を飼っていましたが、家族で世話をしていたし、外で飼っていたので、やっぱり飼い方も違いますよね。家の中で飼うと、犬と接している時間も長くなるし、しつけで困ることも多かったんです。ワンちゃんのために良かれと思ってやっていたことが、実は真逆だったり、今振り返ると失敗だらけでしたね(苦笑)。

当時は犬のことを何も勉強していなかったので、もっと犬が喜びそうなご飯や、犬が使いやすい遊具を選んであげたくなって、犬の知識を増やしたいと思うようになりました。それから犬のワークショップやセミナーにたくさん参加するようになって、ちょっとずつ犬のしつけや習性を勉強していきました。

ディーラーの営業の仕事は、終業時間が遅くて有休も取りづらかったんです。結婚していたし、犬の世話もあるので、定時で終わる医療事務の仕事に転職することにしました。最初のワンちゃんが出産したときに立ち会えなかった後悔があったので、2匹目のワンちゃん(最初の犬の子供)が妊娠したとき、今度こそは絶対に出産に立ち会いたかった。もはや親の心境ですよね(笑)。会社に有休を申請したんですけど、犬の出産という理由が受け入れてもらえず、だったら辞めます……となって会社を退職してしまったんです。

ドッグトレーナー養成スクールで、犬を変えるのではなく、飼い主を変える「しつけ」の考え方を学んだ

無事、子犬が産まれて、そろそろ次の仕事を探さなきゃってなったとき、次は犬に関わる仕事をしてみたいと思いました。そのときは犬の仕事で食べていこうと思っていたわけではなく、自分が飼っている犬にも使えるだろうから、犬の勉強をしておいて損はないだろうくらいの軽い気持ちでしたね。

 そんなとき、小田原で開催された犬のイベントに飼い主として参加したところ、プレイボゥドッグトレーナーズアカデミーの前校長先生が、しつけ教室のステージをされていたんです。「愛犬とこんなふうに楽しそうにお仕事ができるドッグトレーナーっていいな」と思いましたね。それがきっかけで、プレイボゥドッグトレーナーズアカデミーに入学を決めたんです。

犬の知識やしつけの技術が身に付くのはもちろん、プレイボゥは社会人の独立開業に特化したスクールなので、授業でマーケティングやプロモーションも学べますし、独立開業に必須の動物取扱業の申請に必要な資格を取ることもできる。動物取扱業に登録するには、半年以上の実務経験や専門学校の卒業資格など、いくつか条件があるんですけど、ペット施設で働いたり、専門学校に通うとなると、すぐに独立開業できないじゃないですか。なので授業でペットシッター士の資格を取得できることはありがたかったですね。

プレイボゥで特に勉強になったことは、しつけに対する考え方です。しつけって犬にするものだと思いがちですけど、実際はドッグトレーナーが飼い主にレクチャーして、飼い主自身が犬をしつけるものなんです。ドッグトレーナーが犬をしつけたほうが楽なんですけど、私たちはずっと家にいるわけではないし、私たちの犬でもない。やはり飼い主さんの言うことを聞くようにしなければ意味がないわけです。いわばドッグトレーナーは犬を変える仕事というより、飼い主さんを変える仕事なんですよね。飼い主さんが変われば、絶対に犬も変わります。

だから、この仕事は人と接することが好きじゃないと務まらない。ペット関連の専門学生さんと話す機会があるんですけど、「犬や猫が好きだから」というのはもちろんですが、よく「人と接することがあまり得意じゃないから」という理由でドッグトレーナーを志望する学生さんがいるんです。それに対し、私は「ガッツリ接客業だよ」って話します(笑)。たしかに犬に対するしつけのテクニックは山ほどあるんですけど、飼い主さんを変えることが目的になるので、人とのコミュニケーションが何より重要になってくるんですよね。

出張ドッグトレーナーの良さは、家族みんなにしつけを教えられることと、環境から問題行動の原因が特定しやすいこと

卒業後、すぐに動物取扱業を申請して出張ドッグトレーナーとして独立開業しました。最初は近所にチラシを配ったり、友だちが出店しているマルシェに無料しつけ相談として参加してチラシを配ったりしましたが、問い合わせがあったのは1%以下で反響は薄かったです。あまり営業もかけなかったので、初仕事は友だちの紹介でしたね。

スクールで開業時に料金設定を決めておくように教えられていたので、同じ地域の同業者の料金を参考に料金設定を決めていきました。卒業したての自分が、初めてお客さまからお金をいただくときは、プロとしての責任を感じてすごく緊張したのを覚えています(笑)。

 私のトレーニングでは、最初に60分のカウンセリングを受けていただきます。飼い主さんに詳しくお悩みをお聞きして、犬の性格や環境を見ることも大事なんですが、どういう飼い主さんなのかを知るためでもあるんです。なぜならドッグトレーナーの仕事は、いかに飼い主さんをやる気にさせるかが重要になってくるからです。

カウンセリング後、4回コースか8回コースを選んでもらい、飼い主さんの家に出張トレーニングに伺うわけですが、できるだけ家族全員がそろった土日や夜にお伺いするようにしています。たとえお母さんだけがちゃんと犬のしつけをしていても、お父さんが違うことをしていると、まったく意味がなくなってしまうからです。やっぱり家族全員がしつけを理解していたほうがいいですよね。

飼い主さんの3大お悩みは「トイレ・吠える・噛み」の3つなんですが、私の場合、「吠える」が一番多いです。何が原因で吠えているかによって、対処法もまったく変わってきます。何かを要求しているのか、警戒しているのか、甘えているのか、寂しくて泣いているのか、いろんな原因が考えられるのですが、出張型の良さとして、ワンちゃんの環境がわかるので原因を特定しやすい。たとえば、飼い主さんとの遊びやお散歩が足りなくて欲求不満で吠えているようだったら、飼い主さんの接し方を変えるように提案できるわけです。

私は飼い主さんとお話をするのが好きで、よくレッスン後にお茶をしながら雑談したりするんですけど、とある家のワンちゃんがおやつにも遊具にも興味を示さなくて、苦戦したことがあったんです。そんなとき雑談の中で、「夏に冷蔵庫が開くたびに走っていく」という話をされたんですよ。それでようやくそのワンちゃんが氷をかじるのが好きだということが判明して、それからはご褒美に氷を使うようにしました(笑)。飼い主さんと親しくなることでわかることがよくあるので、この仕事は人とのコミュニケーションが大事だとつくづく感じますね。

犬の「しつけ」とは、楽しくコミュニケーションをとりながら、犬と人間が一緒に暮らすためのルールを見つけていく時間です

 しつけやトレーニングというと、「厳しい、怖い」といったイメージがありますよね。問題行動に対して怒ったほうがいいと思っている飼い主さんもいますが、むしろ逆効果で、犬のしつけとは楽しくコミュニケーションをとりながら、犬と人間が一緒に暮らすためのルールを見つけていく時間だと考えています。吠えるのをやめさせるしつけをするにしても、お座りや伏せ、遊具で遊ぶといったコミュニケーションをとることで、飼い主さんとの関係性を良くしたほうが問題行動も解決しやすくなります。

犬って人間以上に現金な生き物なので、結果が伴わないことに無駄な体力を使わないものなんですよね。まして飼い主さんを困らせようと思っているわけでもない。たとえば要求吠えの場合、お腹がすいて吠えているところへご飯を出していると、吠えたことで成果が出たことになるので、吠えるクセはなくなりません。

逆に静かにしているときにご飯を出すようにすると、ワンちゃんは「落ち着いていると、いいことがある」と学習してくれます。「いいこと=報酬」として、お座りや伏せ、遊具で遊ぶといったコミュニケーションが活きてきます。犬は犬種によっても違いますし、その中でもそれぞれ個性があるので、私はワンちゃんが好きなものを見つけるところからトレーニングを始めるようにしています。

正直なところ、開業後しばらくはちゃんとした収入にならなくて、副業をしていました。だけど、私は絶対にペット業界から外れないことにしていました。下手にバイトのほうが収入が良かったら、ペット業界はもういいかな……ってなりそうじゃないですか(笑)。

プレイボゥでは卒業生に対しても頻繁にセミナーを開いているので、積極的に参加するようにしていました。そこで先輩や後輩と知り合うと、「人手が足りないからお店を手伝ってほしい」と声がかかるので、トリマーやしつけのペット施設でアルバイトをしていました。しつけは経験値が必要なので、施設でいろんな犬と接したことが良かったと思います。5年間この仕事を続けてきたことで、さらに経験値が上がって自分の引き出しが増えていることを実感しています。この方法がダメなら他の方法を試してみようって考えられるようになったんですよね。

 同様に先輩が携わっているペットのイベントのお手伝いを頼まれて、犬のしつけコーナーの講師を務めるようになりました。一昨年から、たくさんのイベントに出演するようになったことで、ドッグトレーナーの仕事も軌道に乗ってきました。参加してくれた飼い主さんがお客さまになってくれることがあるので、自分のプロモーションだと思って積極的に出演するようにしています。

私たちの仕事は、犬と一緒に暮らす楽しさを伝えていく仕事だと思っています。そのためには最低限のルールやマナーが必要になります。正しい知識を持って、より楽しく犬と暮らせる方法を、いろんな地域に行ってもっと多くの人に伝えていきたいですね。

ドッグトレーナー 独立ノウハウ集

独立前

人とのコミュニケーション力を高めるべし

ドッグトレーナーの仕事は、飼い主とのコミュニケーションがカギを握るため、営業時代の接客経験が役立っているそうだ。営業とは、いわばオススメしたいことを提案する仕事だが、犬のしつけも同様に飼い主にしつけの提案をして、飼い主のモチベーションを高めていく必要がある。そこで接客業で培ってきた言葉づかいやコミュニケーション力が活きてくる。また、お客さんが継続して依頼してくれるかどうかも、接客業で培った人当たりの良さや丁寧な対応が功を奏しているそうだ。

飼い主として、犬の習性を理解すべし

小野さんがドッグトレーナーを目指したきっかけは、自分の責任でトイプードルを飼ったことだった。一緒に暮らすうちに愛情が深まり、セミナーやワークショップに参加して犬の習性やしつけを勉強するようになったのだ。こうして犬の知識が深まると、過去の飼い方が失敗だらけだったことを実感するという。典型的なパターンとしては、すぐに犬にかまってしまうことがある。たとえば、犬が飼い主にかまってほしくて吠えているときに、すぐにいい子いい子と撫でたりしていると、吠えるクセは治らない。興奮しているときはあまり相手にせず、落ち着いているときに可愛がるようにするといいだろう。

スクールを卒業したほうが、独立開業はスムーズ

小野さんはドッグトレーナー養成スクールで「ペットシッター士」の資格を取得して独立開業したが、スクールや専門学校に行かずともドッグトレーナーになることは可能だ。ただし、ペット関連のビジネスで収入を得るには「動物取扱責任者」になる必要があるため、スクールに行かない場合、動物取扱業の業種で半年以上の実務経験があるか、動物取扱業の種別に係わる指定の資格を取得するなど、それ相応の努力が必要となる。ペット施設や訓練所で修業を積んだり、独学で資格を取得して独立する人も中にはいるが、大多数は専門学校やスクールを卒業して独立している。

起業後

出張型にして、開業資金を抑えるべし

施設をかまえるとなると、賃料や設備費がかかることもあり、小野さんは出張ドッグトレーナーとして独立開業した。開業資金の問題だけでなく、ペット関連の施設は匂いや鳴き声が敬遠されるため、犬可の店舗を借りるのが非常に難しいそうだ。さらに施設をかまえると、動物取扱業の検査が入り、条件を充たしていないと動物取扱業が申請できないため、すぐに開業することが難しくなる。ちなみに施設がない場合、申請後、1週間ほどで動物取扱業の証書が届くようだ。

犬のしつけが求められる都市部で開業すべし

ドッグトレーナーの仕事は地域性に左右されるという。たしかに外で犬を飼っている田舎暮らしだと吠え声も気にならないし、番犬ならば、吠えなければ役割を果たしていないことになるので、しつけを依頼しようという人も少ないだろう。一方、都市部のマンション住まいだと、犬が吠えると近所迷惑になるし、散歩中に人や他の犬に吠えないように社会性を身に着けさせる必要が出てくる。小野さんは小田原で開業し、しばらくして藤沢・湘南エリアに移っているが、小田原よりもやはり依頼が多いそうだ。犬を飼っている人が多いこともあるが、「ワンちゃんと一緒にお店やイベントに行きたい」といった犬と暮らすライフスタイルの意識が高い人が多いようだ。

人付き合いを大切にし、つながりを広げるべし

小野さんは「人間関係に助けられて、ここまで来ることができた」と振り返る。ドッグトレーナー養成スクール卒業後も先輩や後輩と関係を築くことで、トリマーやしつけ教室のお手伝いをするようになり、そこからさらに人とのつながりが生まれ、さまざまな犬のイベントでしつけの講師を務めるようになった。その他にも小野さんは犬の遊具を使ったスポーツ競技「DOG PULLER認定サポーター」として競技に参加したり審判も務めている。今では神奈川、東京、山梨、栃木など各地のイベントに出演するようになり、こうした活動がプロモーションとなってお客が増えていったのだ。

取材・写真・文●大寺 明

ドッグトレーニング with a smile!

“犬のしつけ”、“トレーニング”ってどんなイメージですか?
しつけ=厳しくすること。そんなイメージはありませんか?しつけとは、ワンちゃんに人と一緒に暮らすルールを教えてあげることです。
ワンちゃんに正しい方法でルールを教えてあげる。
その時間が人とワンちゃんとの絆づくりの時間になります。

出張トレーニングをメインとし、
飼い主様と一緒にそのルール作り、絆作りのお手伝いをさせていただきます。

小さい困り事でも、それが原因で、
どんどん大きな困り事になってしまう場合もあります。
どんな些細な事でもぜひご相談ください。

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