AIがニュース業界に革新をもたらす! ニュースのSNS映像の大半が、今やAIによる情報配信。Spectee・村上建治郎インタビュー

株式会社Spectee
代表取締役:村上建治郎
(むらかみ・けんじろう)
1974年東京都生まれ。ネバダ大学理学部物理学科卒業。早稲田大学ビジネススクールを修了(MBA)新卒でソニーグループの会社に入社し、オンライン・デジタルコンテンツの事業開発に従事。退職後、外資系企業の日本支社の立ち上げを経て、2007年にシスコシステムズに転職。2011年に同社を退職し、独立。2013年よりスマホアプリ版『Spectee(以下、スペクティ)』の開発開始。2014年にユークリッドラボ株式会社(現・株式会社スペクティ)を設立。2016年に報道機関向け『スペクティ』をリリース。

AIが世界中のSNSを解析してニュースを配信。「CNN」の次は、「スペクティ」がニュース業界に革命を起こす!

 ここ最近、報道番組やワイドショーでSNSやユーチューブの動画を目にすることがとても増えた気がする。スマホが高性能化し、誰もが高画質の動画を撮って即座にネットに投稿できるようになったことが背景にあるわけだが、実は、ネット上に無数にある動画や画像の中からニュース向けの情報を見つけてくる役割をAIが担っているのだ。

2016年3月に報道機関向けにリリースされたSNS速報配信サービス『スペクティ』は、現在、テレビ局や新聞社などメディア関連企業200社以上が導入し、鉄道会社や電力会社なども含めると240社超が導入している。AIなんてまだまだ先の話……と思いきや、すでに実社会にかなりの影響を与えているようなのだ。

これまでは記者が現場を取材し、いわゆる「足で稼いで」ニュースにしてきたわけだが、そこには限界があった。たとえば災害で現地に行くことができなかったり、突発的な事件や事故であれば、たまたま記者が現場に居合わせるしかなかった。それが『スペクティ』の登場により、その場にスマホを持った人さえいれば、誰もが報道者になりうるわけだ。これはまさにニュースの革命かもしれない。株式会社スペクティ創業者の村上建治郎氏は、「新しい時代のCNNを作る!」という合言葉のもと、このプロジェクトをスタートさせたという。

「1980年にCNNができてニュース専門チャンネルとして24時間放送を打ち出したとき、当時のアメリカの3大ネットワークは、CNNを文字って『チキン・ヌードル・ニュース』と揶揄していたんです。要するにCNNは3分ほどのブレイキングニュースを24時間垂れ流しているだけで、自分たちはきちんと取材したフルコースのディナーのようなニュースを提供しているから、相手にならないというわけです。それが今や世界のCNNですからね(笑)。これはニュースの革命だったと思うんです。その背景には、ケーブルテレビが普及して多チャンネル化したという新たなインフラの普及があったわけですが、それから40年近く経った今、インターネットというインフラが普及したにも関わらず、ニュースの世界でCNNほどの大きな変革は起きていなかったんです」

 ここへ来てAIが発達したことで、ニュースの世界が変わりつつある。AIはどんなふうにSNSを解析しているのだろう?

「基本的にSNSのプラットフォームを問わずに解析しています。多いのはツイッターですが、他にもインスタグラムやフェイスブック、SNS以外ではユーチューブの動画も見ています。最近では、TikTokの解析もやっていますね。個々のお客様によって提供する情報が若干違い、報道であれば災害や火事、事故などのニュース性が高いものを提供していきますが、TikTokの場合、あまりニュースにそぐわないことが多い。ただし、テレビの報道局以外にも番組制作会社にご契約いただいているので、ニュース以外にもバラエティ番組や情報番組の需要があります。その場合は、ユーチューブやTikTokから動画を見つけてくることがあります」

 メディア以外にも鉄道会社や電力会社、自治体などが『スペクティ』を導入している。どういった需要があるのだろうか?

「SNSの情報は非常に早いので、警察や消防署が駆けつけるより先に、その場にいた方がSNSに投稿することがあります。導入いただいている大手鉄道会社さんの場合、沿線で問題が発生していないか、駅構内でトラブルが発生していないか、といった情報をいち早く察知し、対処するために使われています。自治体のお客様の場合は、警察署や消防署、災害対策室などに向けて、災害や火災に特化した情報を提供しています。個別に求められている情報が違うので、それぞれに合わせてSNSの情報を解析する仕組みになっています」

 それにしても、どうやってAIはSNSの投稿を見分けているのだろうか? 中には一見しただけでは、なんだかわからない投稿もあるはずだ。

「たとえば、ツイッターの動画に消防車や炎が写っていると、画像解析でAIがそれを認識してピックアップします。そこからさらに、これは自動車事故、これは火事というふうに振り分けていきます。また、どういった内容がつぶやかれているか、同時にテキストも解析します。そうすると、これは三重県で起きた自動車事故、これは愛知県で起きた火災というふうに、どこで何が発生し、どの程度の規模かということが、ある程度、見えてきます。そうやってニュース性の高い情報を取捨選択していく流れになります」

 2016年の熊本地震の際、「動物園からライオンが逃げた」というデマが拡散されたことがあるが、ネット上には愉快犯によるフェイクニュースも多い。真偽の見極めはどうしているのか?

「テキストや画像など過去にあったデマのパターンをAIが学習することで、ある程度、デマの可能性を判断できます。弊社ではデマを判定するシステムを作っていて、ネット上にある過去の画像や動画をデータベース化し、SNSの情報と照らし合わせるようにしています。そうすると、非常に類似性が高い画像が見つかることがある。たとえば、台風24号で車がひっくり返ったという投稿があったのですが、実は数年前の台風7号のときにほぼ同じ画像があったんです。要するにネットで過去の画像を拾ってきて、世の中を騒がせたかったんでしょうね。実際、リツイートが8千もあったので、投稿者からするとシメシメという感じでしょうね(苦笑)。そうしたよくデマを流すアカウントは、全てブラックリスト化しています。ただし、これらは一次スクリーニングにしかならなくて、AIが100%判定することは不可能です。グレーなものに関しては、最終的に人間が24時間体制でチェックしています」

『スペクティ』は日本国内だけでなく世界40カ国で利用され、2017年にはAP通信社と事業提携するなど、世界的な広がりを見せている。アメリカやヨーロッパにも類似のサービスがあるそうだが、世界40カ国に普及した『スペクティ』の強みとは?

「ひとつはスピード感が圧倒的に違うということです。AIの性能も違いますし、情報伝達やノウハウも含めてあらゆる面で違います。たとえば情報伝達では、音声で読み上げてお知らせしたり、メール配信による通知もおこなっています。騒がしいオフィスにいたり、外出先であっても『スペクティ』から配信された情報を漏れなくチェックできるということで利用していただいています。海外でも使われているので、日本だけでなく海外のSNS投稿も同時に解析していて、日本の報道局が海外のニュースとして使うこともあります。これまではAP通信社やロイターがテロや紛争といったニュースを配信し、それから日本のテレビ局が動くという流れでしたが、今では通信社よりも早く『スペクティ』から情報が配信されるので、すぐに動けるというわけです」

 世界的な通信社が、各国のメディアにニュースを配信するという既存のシステムを『スペクティ』は変えてしまうかもしれない。全世界を市場とする可能性を村上氏はどう捉えているだろう?

「スペクティという会社は、基本的にメディアではありません。では、何をやっている会社かというと、AIを使って情報解析をおこなう会社だと説明しています。各メディアに情報を提供するのが僕らの仕事で、比較的、通信社の立ち位置に近い。これまではAP通信社やロイターが世界規模でニュースを配信していて、日本でも共同通信社や時事通信社が日本のニュースを英訳して海外に配信していましたが、世界的な波には乗れていなかった。だから、『スペクティ』を立ち上げる際、『日本発で世界に打ち出せるニュース配信サービスを作りたい』という思いが当初からありました。AP通信社と事業提携する以前から、僕らは世界を目指していたんです」

シリコンバレーの雰囲気に感化され、起業を意識。その後、震災ボランティアの経験が、『スペクティ』の発想につながっていった

 ニュースの世界では、CNN創業者のテッド・ターナーやニューズ・コーポレーション創業者のルパート・マードックなど「メディア王」と呼ばれる起業家がいるが、そうした野心家タイプとも違い、どちらかというと村上氏は研究者タイプの起業家のようである。それもそのはず。もともと村上氏はアメリカのネバタ大学で物理学を専攻していた。当時は起業するなど考えもせず、学者か研究者を目指していたという。それがなぜ起業してニュースの世界に身を投じることになったのか? 学生時代から起業までの経緯を聞いた。

「最初の2年間は語学学校で勉強していて、TOEFLのスコアが基準に達してはじめてネバタ大学に入学できるんです。だけど、授業を受けるにはまだ英語力が足りないということで、学内の留学生向けスクールで半年ほど英語を勉強して、ようやく授業を受けさせてもらえる。その後も進級するのが大変で、最初は広大なキャンパスで映画に出てくるようなキャンパスライフを送ることを想像していたんですけど、実際はひたすら勉強している感じでしたね。大学の天文サークルに行くか、部屋で勉強するか、図書館にいるかという日々ですよ(笑)。でも、物理をやりたくてネバタ大学に行ったので、勉強するにはいい環境でしたね」

 物理学のどういったところに魅力を感じていたのだろう?

「素粒子などの理論物理学を研究していたんですけど、素粒子は視覚的に見ることもできなければ、実験で観測できるものでもない。数学的な計算と想像の世界でしかわからないものなんですよね。だけど、それは確かにあって、ビッグバンという宇宙の成り立ちにつながっていく。アインシュタインの相対性理論にしても、誰もそれを実社会で体感できないわけですが、論理的にも数学的にもそれが正しいことは事実なんです。想像の世界でしかわからないことが、むしろ物理の魅力です。SFの世界でしか描けないようなものを研究することに、ロマンを感じていましたね」

 ネバタ大学卒業後、村上氏は新卒でソニーグループの会社に入社することに。そのまま研究者を目指そうとは思わなかったのだろうか?

「最初はアメリカに残るつもりだったんです。でも、大学を卒業する頃には、日本で何かをやりたいという思いが強くなっていました。当時は2000年前後のIT革命の時代だったこともあり、研究者になるよりIT業界に行きたいと思うようになって日本のIT企業を探したところ、ソニーグループの会社に入社が決まりました。ソニーのデバイスとインターネットを組み合わせて、どういったビジネスができるかを考える仕事だったので、僕にとってはすごく良かった。こうして4、5年その会社に携わっていたのですが、時代が早すぎたのか、そのビジネスがあまりうまくいっていなかった。ちょうどソニーグループの転換期で、出井会長時代はネットとハードの融合というビジョンを打ち出していたんですけど、方針も変わって僕らの事業も縮小することになったんです。そうすると、あんまり面白くないな……と感じはじめて、転職を意識するようになりましたね」

 そんなとき、アメリカ時代の知人から声がかかり、村上氏は外資系企業に転職することに。新薬の研究開発を受託する米国企業の日本支社を立ち上げ、新たなマーケットを作るという業務である。

「起業とは言えませんけど、初めて会社の立ち上げを経験したのが、その会社でした。その経験が後の起業に活かされたかは別として、ゼロからビジネスを作っていくことが面白いと感じましたね。だけど、もともと僕は薬が専門ではないので、ある程度、会社が形になったところで、このまま製薬業界にいてもなあ……という気持ちが強くなってきた。もう一度、インターネットで何かをやりたいと思うようになって、シスコシステムズに転職したんです」

 シスコシステムズ社は、もともと夫婦で起業したベンチャーでありながら、ネットワーク機器事業で急成長を遂げ、2000年には時価総額1位になった世界的企業だ。たびたびシリコンバレーの本社に出張することで、村上氏は起業を意識するようになったという。

「シスコ社にはベンチャー的な気風が残っていましたし、シリコンバレーの会社なので、街にはいろんなスタートアップの人が大勢いるわけです。そうした雰囲気を感じているうちに、自分も何かやりたいという思いが芽生えてきました。シリコンバレーやサンフランシスコ特有の雰囲気なんですが、この地域ではサラリーマンよりも起業家の方がステータスが高い。たとえ売上がゼロだったとしても、自分で会社を立ち上げてCEOになるだけで、周囲はリスペクトするんです。だから若い人たちが起業家を目指すようになるのも必然だと思いますね」

 村上氏は起業の種を探すようになり、最初はテキストをキンドル用に電子書籍化するビジネスを構想していた。実際に自分でプログラミングして開発したそうだ。

「もともとコンピュータが好きで以前からプログラミングはやっていたので、作ることはできたんです。むしろ起業するために必要だったことは、出版業界の仕組みを知ることでした。本を作る工程を知るために、編集者の専門学校で書籍のレイアウトコースを受講したりしましたね。僕はプログラムだけ作ってもあまり意味がないと思っていて、実際の実務がどうなっているかを理解していないと、サービスは提供できないものだと思うんです。だから、後のスペクティの創業時も、まずテレビ業界を知るためにさまざまな業界関係者にヒアリングするようにしましたね」

 一方で村上氏は、会社員時代から東日本大震災のボランティア活動を続けていた。このときの経験が『スペクティ』の発想につながっていくのである。

「実際に被災地に行ってすごく感じたのは、東京で見ていたニュースと、現地で直接聞いた人の話では、だいぶ情報が違うということでした。ニュースでは石巻市の様子がよく中継されていたのですが、映像ではボランティアの人たちが列をなして訪れていて、『行ってもやることがない』という話だったんです。本当にそうなのかな?と思って、隣の東松山市のボランティアセンターに電話をしたところ、『人手が足りていないので、すぐにでも来てほしい』という話でした。実際に行ってみると、本当に人手が足りてない。一方で隣の石巻には人が溢れている。要するに、テレビ中継がされているところは全国から人も物資も集まるのですが、テレビ中継されていないところは、人も物資も来ないわけです」

 村上氏は在職中から休みを利用して1年半に渡っては毎月、震災ボランティアに通い、2011年の終わり頃には会社を退職、起業に踏み切った。未曾有の大震災を経験したことで、「やりたいと思ったことを今やっておかないと、あとあと後悔するかもしれない」と感じていたという。

2016年の熊本地震で潮目が変わった。今後、世の中の情報量が指数関数的に増大したとき、ますますAIが活躍する

 ツイッターが緊急時の情報収集に役立つということが認識されはじめたのも、東日本大震災がきっかけだった。ニュースのマス向けの情報発信とは違い、ツイッターは個人が情報発信するため、ピンポイントで現地の状況を知ることができるからだ。村上氏もツイッターで被災地の情報収集をするようになり、ツイッターの情報を整理するアプリを開発。これが『スペクティ』の原型になっている。

「最初はキーワード検索でフィルターをかけて表示するようにしていたのですが、関係のない情報までいっぱい混ざってしまって、なかなか欲しい情報が出てこないわけです。使う側からすると、ジャマな情報を入れずに本当に必要な情報だけ並んでほしいですよね。キーワード検索には限界があると感じて、AIの機械学習の手法を使おうと考えたのですが、当時はフリーで使えるAIソフトもなく、アメリカの大学が提供しているオープンソースの機械学習用ソフトを使って、自分たちでベースになるプログラムを作る必要がありました」

 AIとなると、さすがに村上氏の手には負えなくなり、エンジニアとチームを組んで開発することにした。ようやく2014年にスマホアプリ版『スペクティ』をリリースし、2万ダウンロードというある程度の結果を出すこともできた。

「『スペクティ』の事業でやっていくことに切り替えたわけですが、2万ダウンロードでは広告を載せたとしてもたいした金額にはならない。広告ビジネスの場合、最低でも100万ダウンロードが必要なので、このままでは事業化が無理なことは明白でした。そこでみんなといろいろ話し合ったところ、BtoBで稼ぐ方法を見つけようということになり、じゃあ売り先はどこか?と考えたとき、メディアや報道だろうと。実際、『スペクティ』のユーザーに話を聞いてみると、けっこうな割合で記者の方が使っていて、『情報収集に便利』という声があったんです」

 報道に需要があるという見込みはあったが、本当にニュースでSNSの情報を使うものなのか、実際にニュースとして使うとしたら、いくらで売ればいいのか、皆目見当もつかない。そこで村上氏はテレビ関係者に徹底してヒアリングして周ったという。

「やっぱり『取材は足で稼ぐものだ』という考えの人たちが多くて、最初は厳しい意見が多かったですね。そもそも一般の人が撮った映像なんて使えるわけがないし、中にはデマもありますから、確認がとれないものは使えない、ましてそれをテレビで流すなんてナンセンスだ……というわけです(苦笑)。ところが、潮目が変わる出来事があったんです。それは2016年の熊本地震でした。深夜に地震が発生し、記者が現地に行くこともできず、まったく状況がわからない。大半のテレビ局はひたすら震度の情報を流すことしかできなかったんですけど、報道機関向け『スペクティ』を導入していたテレビ局は、現地の映像を流すことができたんです。それがきっかけで『スペクティ』がテレビ関係者や報道関係者に知られるようになって、GW明けから一気に問い合わせが増えたんです」

 それから導入企業が増え、今では私たちがテレビで目にするSNS動画の大半は『スペクティ』が配信したものだという。今後、さらにAIが進歩を遂げると考えられるが、AIによってメディアのあり方はどう変わっていくのだろう?

「いろんなものが変わっていくと思います。まず一般の人が現地の写真を撮って世界中に配信できる今の状況は、AIや新たなデバイスによって今後ますます盛んになっていくでしょう。あとはメディアの制作現場も変わっていくと思います。メディア業界は、とりわけAIやITの導入が遅れていて、いまだに人力による作業がとても多い。情報収集をして、取材をして、それを編集してニュースや記事として出していく工程には、多くの人が関わってそれぞれの作業をしていますが、ある程度、ルーチン化された部分も多いので、そこをAIに置き換えていくことは、おそらく簡単にできるはずです。これまでメディアの世界だけは、昔に比べてそれほどダイナミックな変化が起きなかった。知的な産業なので、工業製品のように機械化できるものでもなかったという理由があったわけですが、大きな違いはやはりAIが登場したことですよね」

 これまではリサーチャーが人海戦術でネタを探していたわけだが、それも部分的に『スペクティ』に置き換わっているわけだし、スペクティ社では、テキストを読み上げるAIアナウンサー『荒木ゆい』を開発し、すでにテレビのナレーションや20社のラジオ局で活躍している。実際のアナウンサーが原稿を読んだデータを機械学習しているので、AIだと言われないと気づかないくらいなめらかに読み上げる。少しずつだが、リサーチャーやアナウンサーの仕事がAIに置き換わっている。

「当然、AIに仕事が奪われていくでしょうね。ただし、こうしたことは今に始まったことではなく、産業革命の時代から頭を使わない作業はどんどん機械化されてきたのが、今度は頭を使う作業もAIによって機械化できるようになった。それこそ人間が一番守っていかなければいけないものかもしれませんが、人間がやらなくてもいいことはどんどんAIに任せ、人間は他のことに注力するようにすれば、よりクオリティも上がるはずです。さらに言うと、これから先、5GやIoT化によって情報量が爆発的に増えていきます。2020年には世の中の情報量が44ゼタバイト(1ゼタバイト=1兆ギガバイト)になると予測されているのですが、そこからさらに指数関数的に伸びていきます。もはや人間の脳では処理できない情報量になり、キーワードで検索すること自体がナンセンスになってきます。それよりもAIが僕の欲しい情報を理解して、膨大な情報の中から探してきてくれるという時代になっていくといいですよね(笑)」

 最後に、メディア業界やAIといった未知の世界に挑戦した村上氏の原動力について聞いたところ、AIと人間との違いを感じさせる面白い答えが返ってきた。

「何かをやろうと思ったとき、これまでのしがらみにこだわらないところがありますね。たとえば退職したら給料がなくなるとか、こちらの市場の方が大きいといった他の選択肢は考えないで、これをやりたいと思ったら選択肢はそれ一本なんです。その後のリスクもそんなに考えない。むしろ、知らないものを知りたいという欲求の方が強くて、たとえばAとBの選択肢があって、Aは市場が大きいから大勢の人が参入していて、Bは市場もよくわからないから誰もやっていない、としたら僕はBを選びたくなる(笑)。誰もやっていないことにロマンを感じるんですよね」

村上建治郎氏を知る3つのポイント

座右の書/『世界最大の気象情報会社になった日』石橋博良/著

「ウェザーニューズの創業者が、民間の気象情報会社を創業する経緯を書いた本です。創業者の石橋社長は、もともと商社で船舶を担当していたのですが、ある日、会社が管理していた船が嵐で沈没し、乗組員15名が亡くなるという海難事故が起きたんです。もし嵐を予測できていれば事故は起きなかったわけですが、気象庁のざっくりとした天気予報では晴れとされていました。そこで石橋社長は、ピンポイントの気象情報を提供する必要があると考え、会社を立ち上げるんですが、一番最初に何をやったかというと、近所の仕出し弁当屋さんのための天気予報を始めたんですよね。小学校の運動会でお弁当を出すにあたって雨でキャンセルになると困るということで、小学校のグラウンドで湿度計と雲行きから運動会当日の天気予報をしていたのが、今や世界最大の気象情報会社ですからね。僕がやろうとしていることに近いこともあって勉強になるし、これまで読んだ本の中でもっとも感銘を受けた本ですね」

リフレッシュ法/星を見ること

「大学時代に天文サークルにいたので、もともと星を見るのが好きで、星座や星の名前はだいたいわかるんです。本当はキャンプをしながら望遠鏡で天体観測をすることが好きなんですけど、今はなかなかその時間が取れないので、仕事の帰り路に星を眺めています。今夜は〇〇座が出てるなって、ほんのちょっとの時間でも星を見ていると、けっこう気分転換になるんですよね」

AIにできないこと/人間にしかできないこと

「AIに唯一できないことは、間違った選択をすることだと思うんです。たとえばAとBの選択肢があってAが99%正解というデータがあれば、AIは間違いなくAを選択します。だけど、人間はたまにBを選択したくなる。僕がまさにそのタイプです(笑)。たしかにほとんどは失敗に終わりますが、ノーベル賞級の大発明みたいなものは、何を血迷ったかBを選んだ人の中から生まれていると思うんです。これこそAIにはできないことで、人間にしかできない。だから僕は機械的に正しい方を選択するということだけはしないようにしています。当然、Aの方が正しいんだろうけど、本当にBが間違っているかどうかは、実際にやってみないとわからないし、自分で間違わないと納得もできない(笑)。人間にしかできない選択をする――これが僕の行動指針になっていますね」

取材・文●大寺 明  写真●松隈 健

SNS速報配信サービス
Spectee(スペクティ)

国内240社以上で導入、世界40ヵ国でご利用いただいています。

SNSに上がってくる無数の情報から、
人工知能の機械学習をベースとした画像解析や自然言語解析を通して
ニュース性を判断し、どこよりも早く、正確にリアルタイムで配信。
国内唯一、SNS4プラットフォーム(Twitter、Facebook、Instagram、YouTube)に対応しています。
SNSに投稿された映像や画像をAIで解析し、リアルタイムに配信するシステム及び、
自然言語解析に基づき発生場所を特定するシステムは、当社の特許技術です。

スペクティではエンジニアを募集しています。

弊社では、SNS速報サービス「スペクティ」や、企業様のAI開発ニーズに対応する情報解析AIプラットフォーム「SIGNAL」、AIアナウンサー「荒木ゆい」などの人工知能をつかったサービスの開発を行っています。

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