野菜収穫ロボットが令和元年に実現!AIロボットが農家の人手不足を解消し、ベーシックインカムも夢じゃない⁉ inaho・菱木豊インタビュー

inaho株式会社
代表取締役CEO・菱木 豊
(ひしき・ゆたか)
1983年神奈川県生まれ。鎌倉育ちの鎌倉っ子。不動産コンサルタント会社に入社し、4年後に独立。震災復興のための野外フェスの主催、鎌倉の地域活動「カマコンバレー」の運営、「The Wave(湯川塾)」の事務局等、幅広い分野で活動。2014年に大山宗哉(現COO)らと株式会社omoroを設立。不動産Webサービスを開発運営後、事業を売却。2017年にinaho株式会社を設立し、人工知能による野菜収穫ロボットの開発に取り組む。富士通アクセラレータプログラム「第7期ピッチコンテスト」最優秀賞、ICCサミット「スタートアップ・カタパルト」優勝など受賞歴多数。

野菜収穫ロボットを販売するのではなく、収穫量に応じてマージンを得る世界初のビジネスモデルを考案


 来るべき未来、AIに人間の仕事が奪われる――という事態が懸念されている。いずれはそうなるだろうと想像しながら、遠い未来のSFのように感じている人がほとんどではないだろうか。しかし! これがそう遠い未来の話でもなさそうなのだ。2017年創設のinaho株式会社が、AIによる野菜収穫ロボットの開発を進め、2019年5月から40台もの野菜収穫ロボットをテスト出荷し、佐賀県のアスパラガス農家で実運用されることになった。

 大企業のバックアップを受けたスタートアップかと思いきや、共同創業者の一人である菱木豊氏の個人的活動から始まったロボット開発事業であり、オフィスにしても築100年という鎌倉の古民家を改装したノスタルジックな雰囲気である。もともと菱木氏の地元である鎌倉に本社をかまえたわけだが、ロボットの実験を行うために庭に畑がある環境がベストだったという。最先端テクノロジーを扱っていることはたしかだが、人間味があって土の匂いがするスタートアップである。

 inahoが開発した野菜収穫ロボットは、AIによる画像認識によって野菜の位置や形、サイズを判別し、ロボットアームによって収穫を行う。現在はアスパラガス用に作られているが、ディープラーニングによる画像認識の仕組みは同じであるため、いずれはきゅうり、トマト、ピーマン、ナスといった他の野菜でも応用が可能だという。今回のアスパラガス農家に向けたテスト出荷は、あくまで全構想の初めの一歩にすぎないのだ。菱木氏は野菜収穫ロボットによってどんな未来を思い描いているだろう?

「今回のテスト出荷で正式にローンチすることになり、もちろん期待も大きいですが、もっと先のことを考えているので、特に気負いも感慨深さみたいなものもあまりないんですよね。今のところ最低限のことは問題なくできていますが、画像認識率をもっと上げることや、収穫スピードを上げることなど、全ての面でまだまだやるべきことがあります。技術も日進月歩ですから、改良の連続で完成はないと思っていますね。今後は7月にきゅうり、他にもトマトやナスなどの野菜に対応できるようにしたいですし、グローバルな展開もしていきたい。スタートアップはスピードが重要なので、いかに早く実現するかを日々考えていますね」

 興味深いのは、AIやロボットの技術面だけでなく、野菜収穫ロボットならではのビジネスモデルである。トラクターやコンバインといった農機の場合、メーカーが製造販売するわけだが、inahoは野菜収穫ロボットを農家に無料で貸し出し、ロボットの収穫量に応じてマージンを得るビジネスモデルを構想している。見方を変えると、リースやレンタルというより、ロボットのアルバイトを派遣して賃金を得る仕組みのようでもある。この特殊なビジネスモデルを選択した理由とは?

「一般的な農機は大手メーカーが製造販売しているわけですけど、高額な商品を買ってもらうわけですから、10年間は使えることが前提としてあるんですよね。そうすると、僕らが野菜収穫ロボットを販売しようとしたとき、当然、10年先まで使えるかが問われますよね。そもそも耐久年数もわからないですし、10年先まで会社が存続しているかもわからない。また、65歳の農家さんと話をしたところ、高齢になった今から何百万円もかけるような長期の設備投資は必要ないという意見があったんです。そこで販売以外に野菜収穫ロボットを使ってもらえる仕組みを考えていったところ、このビジネスモデルに帰着したわけです」

 野菜収穫ロボットは農家が直接運用する。ただし「アグリコミュニケーター」というinahoのスタッフが支店に常駐し、ロボットの運用とメンテナンスを行う。この仕組みであれば、農家はメンテナンス費用もかからないし、さらにバージョンアップした野菜収穫ロボットを導入することも可能だ。これまでずっと手作業だったところに最先端ロボットがやって来るわけだが、受け入れ側の反応はどうだろう?

「農家さんの反応は非常にいいです。アスパラガスは1年のうち8~9カ月は収穫作業が続くんですが、腰の負担が大きい重労働なので、どの農家さんも人手が足りなくて困っていました。収穫ロボットによってこの問題が解消されることを期待して、生産面積を増やそうと考えている農家さんもいて、実際にすでに増やしている方もいます。みなさんポジティブに受け止めてくれていますね」

 もともと菱木氏が野菜収穫ロボットを作ろうと思ったきっかけは、アスパラガス農家の切なる願いを聞いたことだった。ロボットに仕事が奪われる……というより、「気の遠くなる作業から解放される」という期待のほうがはるかに大きいのだろう。

「単純作業がなくなるぶん、野菜の品質改善や収量を増やすような工夫や販路開拓に時間を使ってもらうのもいいと思います。これまで農協だけに出荷していたのが、販路を開拓してレストランへ直売できれば、販売単価も高くなり、農家さんも潤いますよね。もともと僕が野菜収穫ロボットを作ろうと思ったきっかけは、完全にニーズファーストでした。まず困っているアスパラガス農家さんがいることを知って、みんなが楽になるなら絶対にやったほうがいいと思いました。それからいろいろ調べていった先に、高齢化による農業人口の減少という大きな問題があることを知ったんです。後付けですが、『これは意義があることだ』と確信を持つことができました」

 農業人口は、2010年の約261万人から2018年には約175万人へと3分の1以上も減少している。しかも、そのうち120万人が65歳以上。そう考えると、農業の人手不足は喫緊の課題であり、これほど世の中に求められる事業もないだろう。

20代の頃、「何をやりたいのか?」を探し続けていた。野外フェスを主催後、「AIを使って何かをやりたい」と考えるように

 農業関係者でもなければ、ロボット研究者だったわけでもない菱木氏が、なぜ野菜収穫ロボットを作ろうと考えたのか? プロフィールによると、不動産コンサルタント会社を経て独立し、野外フェスの主催やテクノロジーの勉強会「TheWAVE」の事務局に携わるなど、活動は多方面に渡っている。2014年に現COOの大山宗哉氏らと共に共同創業した株式会社omoroにしても、社名どおり自分たちが「おもろい」と思ったことを事業化する会社で、メイン事業は不動産Webサービスの開発運営だったようである。つまり、菱木氏はまったくのゼロイチで野菜収穫ロボットを作り出しているのだ。菱木氏はどんな人生遍歴を経て、野菜収穫ロボットに辿りついたのだろう?

「大学1年のときに休学して、アメリカのサンフランシスコに1年間留学したんですよね。ずっと日本人グループで行動しているダメ留学生の典型でした(笑)。だけど、自分にとってはすごくいい経験だったんです。日本人グループの友達はみんな僕より4、5歳上で、19歳の頃の自分は世の中を斜に構えて見ているようなタイプだったんですけど、自分より年上の人たちに囲まれていたおかげで、ねじ曲がった根性をだいぶ叩き直されましたね(笑)」

 アメリカ生活中に料理を作ったところ、年上の仲間から「美味い」と褒められたことがきっかけで、菱木氏は帰国後、大学を中退して調理師専門学校に入学。このときは将来、調理師になるつもりだったが、卒業後、菱木氏は不動産コンサルタント会社に入社する。20代前半の頃の菱木氏は、やりたいことが定まらないごく普通の若者だったようである。

「途中で調理師の仕事は自分に向いてないと思ったんです。今思えば、もっと工夫のしようもあったと思うんですけど、当時は浅はかだったので、ルーティーンの仕事のように感じてしまったんですよね。それで調理師を目指すことは辞めて、不動産投資コンサルタント会社に入社しました。土地を購入して新築マンションを建てる投資や、中古マンションやアパートを一棟購入する投資など、動くお金が大きいので、人の人生を背負っているくらいの気持ちで仕事をしていました」

 菱木氏の立場はあくまで投資コンサルタントとして、投資対象となる不動産を見つくろってお勧めする役割である。高い利回りが期待できる不動産であれば自信を持ってお勧めできるが、景気や相場動向によっては、あまりお勧めできない場合もある。ここにジレンマがあったようだ。

「不動産も株もすべてそうだと思うんですけど、投資はあるものの中から選ばなければいけないわけですよね。たとえば1年前は10%の利回りだった金融商品が、相場が悪くなって今は8%しかないとなったとき、心からお勧めできないですよね。だけど、会社としては売っていかなければいけない。あるものの中から選んでお勧めしなければいけないということに、すごく不自由さを感じていて、それだったら自信を持ってお勧めできるものを自分で作ったほうが、気持ち的に楽だなと思うようになりましたね」

 不動産コンサルタント会社は4年で退職し、菱木氏は5年ほどフリーランスとして生計を立てていたそうだ。前職のノウハウを使ってマンションの運営管理を手伝ったり、映像の仕事やwebサイトの立ち上げを手伝ったりしながら、本当にやりたいことを探していた。そんなとき、2011年の東日本大震災が起きた。友人に誘われて石巻市にボランティアに行くことになり、このときの経験がひとつの転機となる。

「ボランティアというと高尚なイメージですけど、実際行ってみると、すごく楽しかったんですよね。天井まで浸水した屋内の修復作業をしていたんですけど、帰る頃には石巻の人たちに対して、僕のほうが『ありがとうございました!』って言ってるんです。全員が全員そうなるので、不思議なものですよね。それから何度もボランティアに行くようになったんですけど、どうやったらもっと他の人もボランティアに参加するだろう?と考えたとき、震災復興のための野外フェスを思いついたんです。ボランティアに参加した人が無料で入場できる野外フェスという仕組みがあれば、ボランティアをするきっかけになるんじゃないかって」

 こうして1年がかりで準備をし、2012年に山梨で震災復興のための野外フェスを開催した。このときの経験が、最初の起業へとつながっていった。

「野外フェスのボランティアスタッフだけで100人以上が集まったんですよね。会社を辞めてから3、4年はずっと一人で仕事をしていたわけですが、一人でやるよりもチームで何かをやるほうがよっぽど楽しいことなんだなって実感して、チーム(会社)を作りたいと思うようになったんです。やるんだったらユニークな会社にしたい。そこで面白そうな人間を二人つかまえて、一緒に会社をやろうって(笑)。そんな感じで何をやるかも決まっていなかったので、とにかくブレストをやりましたね。こうして野外フェスの開催、不動産webサービスの開発運営、地域振興のコンサルタント、スタートアップの研修合宿の企画運営など、幅広くやるようになったんです」

 その一方で、菱木氏は個人的な活動としてテクノロジーの勉強会「TheWave(湯川塾)」事務局の手伝いを続けており、講座を通してAIに興味を持つようになったという。

「2014年頃からずっと『AIを使って何かできないか?』と考え続けていました。あるとき勉強会でアメリカのブルー・リバー・テクノロジーズ社がAIでレタスを間引く『レタスロボット』を開発したことを知って、それを鎌倉で農家をしている友人に話したら、『ロボットで雑草を取ってほしい』と言われたんです。さっそく友人の畑に行って雑草取りを手伝ってみたら、これがとにかく大変だったんですよね。野菜か雑草かは画像認識技術によって見極めることができるはずなので、これならAIで困っている人を助けることができるかもしれないと思いました」

 当初はomoro社で雑草取りロボットを開発するつもりだったが、一旦会社を清算することにした。不動産Webサービスが短期間で数百社の会員を集めていたことで事業を売却することができたのだ。こうして雑草取りロボットの開発に専念することにしたわけだが、問題は開発資金である。しかも農業の知見もなければ、ロボット開発のノウハウもないという、ないない尽くしである。そこからどうやって菱木氏は実現にこぎつけたのだろう?

無知だったからこそ、未知のものに挑戦できた。どれだけ難しいかわかっていたら、逆にできなかったかもしれない

 そこで菱木氏は、まず農家の課題を自分事にするかのように動いた。神奈川県を中心に様々な農家を訪ね、雑草取りについて調査したのだ。こうしてニーズがあることを明確にした上で、次は開発者を探すために大学の研究室を訪ねて周った。こうしてロボットアームを研究する教授や画像認識技術の研究者とめぐり合い技術的に可能であることが検証できた後は、一番の問題ともいえる開発資金である。スタートアップにとってプロダクトを実現できるか否かは、何はさておき資金調達にかかっていると言っていいだろう。

「そもそもこの世にないものを作ろうとしているわけですから、トータルでいくらかかるかもわからないわけです。大学の先生に話を聞きながら一応は試算を出して、製品化できるレベルのものを作るには、およそ3億円くらい必要になるだろうと見立てました。だけど、資金調達をするにしても、その時点では紙資料しかないわけですからベンチャーキャピタルを当たるのも難しい。最初はエンジェル投資家の方々に話をして周ったんですけど、『なぜ農家でもない君がやるの?』といった厳しい意見が多くて、まったくダメでしたね……」

 そこで菱木氏は農水省の助成金プログラムに応募することにした。するとTPP対策の担当者が興味を示し、会って話をすることになった。しかし、雑草取りロボットのアイデアを話しても微妙な反応しか得られず、「その技術を使って他にできることはないか?」と問われたそうだ。

「福岡の農家さんを訪ねたときに『アスパラガスの収穫ロボットを作ってほしい』と言われたことを思い出して、その話をしたところ、相手の反応が変わったんですよね。その助成金プログラムはTPP関連の補正予算だったため、TPPで関税撤廃される野菜に対する対策を求めていたというのもあったと思うんですけど、今だからわかるのは、雑草取りよりも収穫のほうが圧倒的に作業時間が多いので、市場も大きいですよね。結局、助成金は降りなかったんですが、農水省の方と話すことで、野菜収穫ロボットのほうが求めている人が多いことに初めて気がついたんです」

 雑草取りからアスパラガス収穫へと切り替え、菱木氏は北は北海道から南は九州まで全国各地のアスパラガス農家を訪ね歩いたという。このとにかく“動く”ということこそが、菱木氏の起業家としての資質のように思うのだが、いったいどんな思いが彼の原動力になっていたのか?

「4、5年の間、ずっとAIを使って何かできないか?と毎日考え続けていて、やっとニーズがあるものを見つけたわけですから、それは動きますよね。それにしても、お金もないのによく行ってましたよね(笑)。やっぱり一人や二人に話を聞いただけではわからないですし、間違っている可能性もある。だから数をこなしたほうがいいと思っていて、いろんな農家さんを訪ねて、畑の通路幅は何センチで、一人あたり何キロ収穫して、今ある課題は何かということを徹底してヒアリングしていきました。いわば彼らの課題感を自分に植え付けるような感じです。実際にアスパラガスの収穫もやってみたんですけど、かがんでの作業になるので大変だということがよくわかりましたね。若い人でも腰を痛めて、できればやりたくないような重労働なんですよ」

 その後、どうにか1千万円ほどの資金調達に成功し、画像認識とロボットアームの機構を開発した。実際にモノができれば、次の資金調達もだいぶ楽になる。こうして二度目の資金調達に成功し、2017年のinaho設立後、ようやく自律移動型のプロトタイプが完成した。

「結局、着想してからプロトタイプができるまでに2年かかっているんですよね。早いと思われるかもしれませんが、最初から潤沢な資金があったらもっと早くできていたかもしれない。その間、リサーチをしていたのでいきなりは作れないですけど、ちょっとずつノウハウも溜まってきたので、これから一気に資金を入れて事業を拡大したいと思っています。販売をしないビジネスモデルなので、まず自分たちで製造コストを負担して提供する流れになるわけですから、ロボットを何台作ることができて、どれだけ早く農家さんに提供できるかは、僕がどれだけ資金調達できるかにかかっている。一日でも早く農家さんに提供したいと思っています」

「AIを使って何かやりたい」という強い思いがあったとはいえ、おそらく世界初となるであろう野菜収穫ロボットを、よくぞ形にできたものだと思う。誰もやったことがないことに挑戦できた理由を聞くと、「無知だったからですよ」と菱木氏は笑った。

「どれだけ難しいかを知っていたら逆にできなかったと思います(笑)。あとはTheWave(湯川塾)の講義で影響されたことがありますね。講師の方はみんな5年後、10年後の社会がテクノロジーによってどう変化しているか?ということをベースに考えるんですよね。10年後を考えたとき、雑草取りにしても野菜の収穫にしても人が手作業でやっている時代ではなくなっているはずだと確信しています。そこに一番早く到達することができれば、自分たちで市場を作ることができる。大きなポテンシャルを秘めた事業だと思えたことが、自分の原動力になっていたと思います」

 AIに人間の仕事が奪われる……という最初の話に戻ろう。野菜収穫ロボットが普及すれば、これまで人間が担っていた労働は減り、一方で野菜の生産量は大幅に増加するかもしれない。これまで私たちは基本的に“食っていく”ために働いていたわけだが、「食うには困らないが、仕事がない」という状況も考えられる。最後にこの問題について聞いたところ、実は菱木氏の最終目標はそこにあるのだという。

「ロボットが生産を担うことで人間の生活コストが下がって、月10~12万円ほどで十分暮らしていけるような時代になったとき、ベーシックインカムという選択肢が現実味を帯びてくるはずです。今のところデイリータイムは仕事をすることがベースになっていますが、それが常識である必要もない。たとえばボランティア活動は、お金が発生していないので仕事とは言えないかもしれないけど、世の中のためになっているわけですよね。あるいは、趣味やスポーツといった好きなことをやっていてもいい。今は労働時間の削減が推奨されていますけど、ベーシックインカムが基本になったとき、ものすごく働いている人は、やりたいからやっているだけ、という自分の意志によるものになると思うんです。僕自身もそうした選択肢があったほうが世の中的にいいと思っていて、将来的な一番大きな目標にしています。とはいえ、誰のためにやるのか?が重要なので、今は農家さんが喜んでくれるモノづくりをしていきたいですね」

菱木 豊氏を知る3つのポイント

座右の書/『アイデアのつくり方』ジェームス W.ヤング

「1940年にアメリカで出版された本なんですが、結局、アイデアというのは組み合わせでしかない、ということを80年近くも昔に言っているわけです。なるほど!と思いましたね。たしかに野菜収穫ロボットにしても、ロボットアームと画像認識技術の組み合わせでしかない。この本を読んで感じたのは、組み合わせるための素材をどれだけ持っているかが重要だということでした。僕は以前、専門的な知識を持っていないことにコンプレックスを持っていました。研究者のように専門領域の造詣が深い人は、やたらと奥が深い引き出しを持っているイメージで、そうした引き出しを持った人同士は、ジャンルが違っても奥の方でわかりあっているような印象でした。それに対し、僕は深い引き出しを持ったことがない……。この本を読んで、奥が深い引き出しは持てないかもしれないけど、そのかわり、とにかくたくさん引き出しを持ってやろうと思いましたね。引き出しがあればあるほど、いろいろ組み合わせて新しい提案ができるはずです」

「誰とやるか」より「何をやるか」

「事業をやるにおいて、『誰とやるか』と『何をやるか』という問題がありますよね。最初に起業したとき、僕は『誰とやるか』を重視していたんですけど、今になって、やっぱり『何をやるか』のほうが大事だと思うようになりましたね。現在、inahoにはロボット制御のエンジニアや元本田技術研究所の開発マネージャー、画像認識技術の研究者など、優秀なスタッフが集まってくれているんですが、それは僕の魅力うんぬんではなくて、選んだセグメントが良かったからだと思うんです。『何をやるか』を決める際、課題感が大きくて社会的に求められるものを選べたら、自然といいチームができるものだと思います」

サウナで思考を整理する

「最近はサウナにハマってますね(笑)。10分間セットで入るんですが、その際、仕事に関わることなど、『これについて考えよう』とテーマを決めて入るんです。サウナは他にやることがないから考えるのに適しているんですよね。サウナの後に水風呂に入ると、頭がシャキッとしてクリアな感じになる。あの頭の中がぱっと開くような感覚がたまらないです(笑)」

取材・写真・文●大寺 明

農業の未来を一緒につくる!
inahoが人材募集

【ロボットエンジニア】
●ハードウェアエンジニア

不整地を走行するinahoロボットが安定的かつ高速に野菜を収穫できるように、ロボットのハードウェア部分を改善していきます。開発中のアスパラガス収穫ロボットだけでなく、きゅうりやナス等の他の野菜に適したロボットについて考え、開発する部分をお願いしたいと思っています。

●ソフトウェアエンジニア
移動体、ロボットアーム、カメラを統合する制御ミドルウェアの開発を行います。 認識した収穫対象物を、高速かつロバストに収穫できるようなアーム制御や、移動体制御、データ取得等をお願いしたいと考えています。

【アグリコミュニケーター】
農家さんとコミュニケーションをとりながら実際にロボットを運用し、
世の中に収穫ロボットを拡げていくお仕事です。

2019年5月から順次、収穫ロボットを農家さんの畑で動かします。
第1号支店は佐賀県鹿島市にあり、2019年中に2つの支店を新たに開設予定です。
これから短期間で多くの支店を出していく予定です。
ご入社いただく方は、将来的に拠点のリーダーとなっていただくことを想定しています。

●菱木氏コメント
「画像処理やロボットの制御など、ロボット開発全般に携わるエンジニアを積極的に採用しています。ロボコン経験者など、ロボットを作ることに興味がある方が来てくれるとうれしいですね。まったくロボットを作る技術はないんだけど、ロボット技術を使って農業に貢献したいという人に関しては、アグリコミュニケーターとして現場で収穫ロボットを運用する仕事をしてもらっています」