『ユダヤから学んだモノの売り方』要約まとめ

『ユダヤから学んだモノの売り方』 立川光昭/著 秀和システム 1404円

スターバックス、GAP、グーグル、フェイスブックといった世界的企業の創始者は、いずれもユダヤ人です。紀元前8世紀頃に国を失ってから、ユダヤ民族は世界中に散らばってビジネスを続け、3千年の長きにわたって商売の「知恵」を蓄積してきたのです。そんなユダヤ民族の優れている点が、「マーケティングセンス」です。マーケティングというと難しい学術理論を思い浮かべがちだけど、実は彼らの考え方はいたってシンプル。ユダヤ人のビジネス感覚を学んでみましょう!

 中古バイクショップ、広告代理店、電力系ベンチャーなど、さまざまな業界で成功を収めてきた著者だが、学歴は高校中退で、20歳のときの所持金はわずか1500円だったという。そんなとき、たまたま捨ててあるバイクを譲り受け、リサイクルショップに持っていったところ、なんと8000円で売れた。

 こうして著者はバイクのリサイクルショップを開業。驚きの低価格でバイクを売る店として繁盛し、11店舗まで拡大した。そして21歳のときにこの事業をユダヤ系商社に売却。しかもスカウトされ、英語も話せないのにユダヤ系商社で働くことになった。若き日の著者はユダヤ流マーケティングをひたすら学ぶことになる。

「マーケティング」というと難しく考えてしまいがちだが、シンプルにいうと「モノやサービスを、売れるようにすること」である。日本人はとかく商品やサービスの質にこだわったり、宣伝の斬新さで売ろうとしがちだが、ここがユダヤ人の発想とは根本的に異なる。ユダヤ人が商売で一番大切にしていることは、「買う人がいるか」ただ、それだけなのだ。

 したがってユダヤ人は「面白い商品」に飛びついたりはしない。あくまでそれは「買う側」が決めることであり、まずその商品を「求めているお客さんはいるのか?」ということからビジネスを発想していくのだ。ユダヤ人はこの点をしっかり考え抜いてから商売を始めるため、高い確率でうまくいく。逆にいうと、「必ず成功するもの」以外は彼らにとってビジネスの対象にはならない。

 そして買う人がいるとわかったら、今度は「こういうモノも欲しがるんじゃないか?」「売り方を変えれば、こういうお客さんにも展開できるんじゃないか?」というふうに、すでに確定している利益を2倍にも3倍にも大きくする方法を考えていく。

 昨今の日本では会議に時間を費やすのはよくないという風潮があるが、ユダヤ系商社では、ミーティングがやたらと多く、しかも問題の原因が解明されないことには先に進まないという。なぜなら彼らは結果よりもまず「ビジネスプランの完璧さ」にとことんこだわるからだ。

「我々は国内の大手商社に比べれば弱者だ。規模の面でも、財力でも、勝つことはできない。だったらもっと頭を使うんだ」と著者は言われ続けてきた。これこそが迫害や逆境に打ち克ってきたユダヤ民族の強さである。規模や資金力で勝てないとわかっているからこそ、徹底して頭を使うのだ。

 マーケティングにおいて「どこに店を出すか」は最重要のテーマだが、ユダヤ人の立地の基本は「ものすごくいい場所」か「ものすごく悪い場所」のいずれか。後者のメリットは「家賃が安い」ということであり、そのぶん広告宣伝費にお金を使える。そのため著者が勤めていたユダヤ系商社の本社は埼玉県の川口市にあったそうだ。

「ものすごくいい場所」については、それだけで大きな集客効果と宣伝効果が得られることがメリットになる。スターバックスが顕著な例だが、1996年に銀座に1号店を出して以来、実はCMも雑誌広告もほとんど出さずにスターバックスは日本人に馴染みの店になっている。

 ユダヤ系商社でモノを売る法則を学んだ著者は、独立して再びバイクショップのビジネスを立ち上げ、年商5億に到達。しかし、あともう少しで上場というところでITバブルがはじけ、すべてが白紙に戻ってしまった。その後、「ユダヤ流マーケティング」を最大限生かすべく、広告代理店を立ち上げた。

 そこで著者が思いついた新たな広告ビジネスが、「歩合制でタレントのギャラを決める」というもの。これにより大手企業しか起用できなかった人気タレントを、中小企業でも起用できるようになり、タレントからすればメディアに映る機会が増えることになる。事業はすぐに軌道に乗り、急拡大していった。

 さらに著者は電力自由化にともない、2016年2月に「レジェンド電力」を設立。しかし、電力が安くなるといっても、ひと月で数十円から数百円程度のことだから、電力会社を乗り換える人はわずか4%にすぎない……。そこで著者は「誰からなら買いたいか」を考えた。

 まずコンサルティング契約をしている企業やショップといったクライアントに、電気の販売権を委託した。さらにJリークチームの「東京ヴェルディ」と提携し、「ヴェルディ応援電力」という代理店を作った。契約することでチームを財政的に応援できるという仕組みだ。これが成功し、20チーム以上のスポーツチームと契約を結ぶまでになる。こうしてレジェンド電力は初年度で売上げ50億円を達成した。

 日本では、マーケティングやビジネスは「お金があるという前提」から始まるものだが、ユダヤ流のビジネスはそれとは対極にある考え方だ。著者はまさに彼らの成功法則を実践し、お金をかけずにできるビジネスプランに頭をひねった。ユダヤ流マーケティングとは、とどのつまり「お客さんが困っていることを見つけ出し、解決策を提案すること」に尽きる。「お客さんをじっくり観察する」ことが、マーケティングセンスを磨く出発点になるだろう。

『ユダヤから学んだモノの売り方』3つのポイント

●「買う人がいるか」を見極める

●徹底的に頭を使ってビジネスプランを練り上げる

●お客さんをじっくり観察することがマーケティングの基本

文●大寺 明