『仕事は楽しいかね?』要約まとめ

仕事は楽しいかね?

ビジネス書や自己啓発書を読み漁って、その通りに実践しているのに一向に変わらない……。そう感じている人も多いのでは? 実は、成功例を参考に目標を定めることにこそ、落とし穴があるのかもしれない。本当に生き生きと仕事をして成功をつかんだ人とは、「右に倣え」をしなかった人たちだというのが本書の考え方だ。では、私たちは何を目標にすればいいのだろう?

 吹雪によって空港が閉鎖され、主人公は26時間も待つハメになった。たまたま出会った風変わりな老人に「仕事は楽しいかね?」と聞かれ、主人公は日頃の不満をぶちまけてしまう。

 勤続15年になる主人公はまじめに週50時間働いているが、給料も上がらず出世もできず人生に退屈している。同時に将来の不安も抱えていて、最新の自己啓発書を買ってきては新たな夢に向かおうとしていた。しかし、妻子を抱え、住宅ローンのある身では、叶わない夢だとどこかで諦めている。

 その背景には過去の失敗経験があった。大学卒業後、友人と3人でコピーサービスの店舗で起業したが、近くに規模の大きな同業者が出店したことで赤字となり、店を畳むことになったのだ。貯金を使い果たしただけでなく、友人も夢も同時に失い、思いだしたくもない苦い経験となった……。

 老人に不満をぶちまけたことを主人公は恥じたが、実はその老人はマックス・エルモアという巨万の富を築いた起業家だった。空港が再開されるまで、老人は自らの成功哲学を語り、主人公に助言を与えることになる。

 これまで主人公は山のように自己啓発書を読み漁ってきたが、これぞと思える戦略や哲学には出会えなかった。老人は「目標の設定」「生きる姿勢を変える」といった自己啓発書のエッセンスを書き出した上で、デカデカと×印をつけた。

 そして、「試してみることに失敗はない」と断言するのだ。

 目標を設定し、それに向かって努力することを私たちは学校で教えられてきたが、「人生はそんなに規則正しいものじゃない」と老人は言う。むしろ、規則から外れたところにこそ、いろんな教訓があると言うのだ。目標を設定することで、自己管理ができていると納得しているだけで、たとえ目標に到達しても満足感は得られない。「今日の目標は明日のマンネリ」なのだと老人は言う。多くの自己啓発書に書かれている目標設定の重要さを老人は真っ向から否定してしまうのだ。

 そんな老人がこれまでに掲げた目標が一つだけある。それは、明日は今日と違う自分になるというもの。これは簡単なことではなく、とんでもなく疲れる方法だ。しかも普通の目標と違って、最終的にどこに行き着くかもわからない。だからこそ、ワクワクする方法なのだと老人は熱を込めて話す。

 世界的な成功を収めた発明者や革新者は、最初に目標を定めて計画どおりに事を進めていった人たちのように見えるが、実はそうではないと老人は言う。たとえばアップル・コンピュータ第1号を作ったスティーヴ・ウォズニアックは、世界を変えたかったわけでも大企業のトップになりたかったわけでもない。遊び感覚でいろいろやって、成り行きを見守るうちに大企業のトップや億万長者になっていたのだ。

 これは確率の問題でもある。買わなければ宝くじが当たらないように、手当たり次第あれこれやってチャンスの数を増やすことが成功の条件なのだ。頭が切れたり勤勉であることは必ずしも条件ではないが、10回中10回失敗するものを9回に減らし、確率を上げることはできると老人は言う。

「空前のヒット商品」の多くは偶然の産物だ。たとえばコカ・コーラは、薬屋の従業員がシロップ状の頭痛薬を水で割って飲むと美味しいということに気づいたことがきっかけ。ジーンズのリーバイスは、カリフォルニアの鉱夫に必需品を売ることで一儲けしようと考えた創業者が、物がすべて売り切れてしまったため、テント用の帆布をオーバーオールに仕立てたことから始まった。
「必要は発明の母かもしれない。だけど、偶然は発明の父なんだ」と老人は言う。大勢の人が計画ばかりを崇めているが、本来はまぐれ当たり専門家こそが必要だというのが老人の考えだ。

 主人公はかつての起業を失敗に終わった実験だったと考えている。しかし、老人に言わせれば、その段階にさえ至っていない。そもそも専門家がレクチャーするビジネスの正攻法を参考にした時点で、誰もが考えつく似たりよったりのビジネスであり、価格競争やサービスの質といった小競り合いになるのは必然。成功を研究しても成功は手に入らないというのが真実だ。本当に成功した起業家というのは、「右に倣え」をしなかった人たちなのである。

 完璧な目標を思い描くと、それを達成した時点でストップしてしまう。「完璧はダメになる過程の第一段階」だと老人は言う。あらゆるアイデアを試し、あるべき状態より、より良くなること。それがろくでもないアイデアだったとしても、元の場所に戻ることはない。必ず何かしらの教訓が得られるからだ。そもそも人は試してみることが大好きなものであり、「ホーソン効果」が示すように、試すことで人は活き活きと仕事をするようになるものなのだ。

 コカ・コーラやリーバイスの例が示すように、誰のもとにも優れたアイデアはやってくるかもしれない。しかし、ほとんどの人は目の前を素通りさせている。ただそれを待っているだけでは気づくことはできず、常に何かを試し、アイデアを求めている人こそが、それに気づくことができるだろう。

『仕事は楽しいかね?』3つのポイント

●成功を研究しても成功は手に入らない

●明日は今日とは違う自分になる

●あらゆることを試し、チャンスの数を増やす

文●大寺 明