『運の良くなる生き方』要約まとめ

思わぬトラブルに巻き込まれたり、失敗が続くと、「運が良くない」と思ってしまいますよね。逆にピンチのときに誰かに救ってもらったり、周囲の協力によって成功すると「運が良い」と感じるものです。いずれにしても人が関わっていて、単なる確率論の話でもなさそうです。弁護士として1万人以上の依頼者を見てきた著者は、運にも法則があることを発見しました。トラブルや不運に見舞われず、平和で幸せな人生を送るには?

 著者は50年近く弁護士の仕事をし、依頼者はのべ1万人を超える。そんな著者だからこそわかるのが、世の中にはたしかに運の良い人と悪い人がいるということ。運の悪い人は何度も同じようなトラブルに見舞われ、再三にわたって弁護士の著者のもとに相談に来るのだ。

本来、弁護士とは争い事があるからこそ成り立つ職業だが、争い事には何も良いことはないと著者は断言する。なぜなら運を落とすからだ。かつて著者は、人が法律を守れば争いはなくなると考えていたが、それが間違いだったと気づいた。「法律を守れば何をやってもいい」という考えそのものが、争いの原因だったからだ。それから著者は「法律的な罪」ではなく、「道徳的な罪」という見方で物事を考えるようになった。

 道徳を科学的に研究した「モラロジー」という学問では、人は生きている限り、道徳的な罪を犯していると考える。毎日の食事で魚や野菜の生命を奪い、鉄道や道路を利用するにしても誰かの犠牲の上に成り立っている。私たちが生活できるのは、必ず誰かの“おかげ”だといっても過言ではない。モラロジーではこれを「道徳的な負債」と呼ぶ。

 この負債を放っておくと、運が落ちると著者は考えている。まず道徳的な罪に気づき、感謝の心を持てば運が落ちるのを防げる。さらに道徳的な罪を返済することを意識して人の役に立つことをしていると、運が良くなるという。

「情けは人の為ならず」という諺がある。「人に情けをかけると、甘やかすことになって、良くない」という意味だと思われがちだが、実はまったくの逆で、「情けをかけるのは他人のためではなく、自分のため」という意味。つまり人の役に立つことをすると、回り回って自分に返ってくるという考えなのである。

 逆に私利私欲が強かったり、ズルい生き方をしていると必ずといっていいほど不運な結果が返ってくる。法律の隙間をぬって儲けたり、刑罰を受けずに済ましてきた人を著者は大勢見てきたが、後には必ず転落していたそうだ。悪賢く立ち回って成功した人は、派手に贅沢をするものだし、普通の人は、うまくいった話ばかり聞かされるので錯覚してしまうのだ。しかし、弁護士はうまくいっていないときに立ち会う仕事である。だからこそ、悪いことで得た成功は長続きしないと断言できるのだ。

「類は友を呼ぶ」「朱に交われば赤くなる」といった諺があるが、しょっちゅう争い事を起こしている人の周りには、やはり同じようなタイプの人が集まっているそうだ。逆に良い人の周りには良い人が集まっている。良い人ばかりなので自然とトラブルも少なくなり、困ったときには周りが助けてくれる。気分よく生きられるだけでなく、のびのびと仕事に打ち込めるため、成功もおさめやすい。そうした好循環を作るには、自分の人格を良くするのが近道だという。

 皮肉なことに、大変なことや立派なことをすると、かえって不幸になることがある。そこには“高慢の罠”があると著者は指摘する。高慢になると人に嫌われ、人間関係が悪くなる。そうすると争いごとも起きるし、人からの信頼や協力も得られなくなる。運を良くするには謙虚な心を忘れてはならない。

 高慢さのほかに運を落とすのが“恨み”である。多くの争い事の大本には恨みがあり、自分の親兄弟のことを恨んでいる人も珍しくない。そうした恨みが遺産相続の際に争い事になるのだ。比較するから恨む。恨むから争う。争うから不運になる。たとえ争いに勝っても、後になって相手が自分の邪魔をすることは往々にしてあることなのだ。

 仕事で運を呼ぶには、損得を忘れた方がいいと著者はいう。著者は弁護士事務所で人を雇う立場にあるが、100働いても80しか要求しないような従業員がいると、逆に著者の方から何かをしてあげたくなるという。損をしているようで、実はお金とは別の何かを得ているのかもしれない。現代には100働いて120も200も取ろうとする風潮があるが、得をしているようでいて、実は別の形で余分を返さなくてはいけなくなると著者はいう。

 運を運んでくるのは人である。だからこそ人付き合いを良くする必要がある。その際に大切になるのが言葉だ。運を開く良い言葉は、人を思いやる言葉、励ます言葉、褒める言葉の3つだという。実際、兄弟で遺産相続の争いが起きたとき、弟が兄を思いやる言葉をかけたことで丸く収まったことがあったそうだ。褒める言葉には人を元気にし、苦手を克服させる力がある。事業で成功した社長には、褒め上手な人が多いそうだ。励ましの言葉も同様に人を前向きにさせる力がある。運を良くするには、こうした良い言葉を使うことがコツだ。

 著者は弁護士を開業して50年近くの間、さまざまな困難に遭遇してきたが、どこからともなく援助者が現れ、救ってもらったことがたびたびあったそうだ。それを思うと、自分は世界でもっとも運の良い人間だと思える。だからこそ無償で「いのちの電話」の相談員をしたり、近所のゴミ拾いをして、受けた恩を返そうとする。人に受けた恩を別の人に返し、その人がまた別の人に恩を返す。こうして世の中に「恩返し」が循環していく。これこそが著者のいう「運が良くなる生き方」というものだろう。

『運の良くなる生き方』3つのポイント

●争い事は運を落とす

●謙虚な心で、人の役に立つことをしていると、運が良くなる

●運を良くするには、自分の人格を高めるのが近道

文●大寺 明