『トヨタで学んだ「紙1枚!」にまとめる技術』要約まとめ

世界に誇る大企業トヨタの強さの秘訣に、書類を「1枚」にまとめる習慣がある。豊田社長が「決断は3秒以内で行う」という独自ルールを持っていたことから、短時間で内容を把握できる書類が求められたらしい。かつてトヨタHPの管理人をつとめた著者が、「トヨタの1枚」に秘められた「伝える」極意を伝授。あらゆる仕事に有効なノウハウが詰まっている。

 トヨタでは業務上の書類は、すべてA3またはA4サイズの紙1枚に収める習慣が企業文化として根付いている。その特徴は、①ひと目で全体が見える(一覧性)、②枠がある(フレーム)、③枠ごとにタイトルがついている(テーマ)の3点。短時間で内容を把握できるようにレイアウトが工夫されているのだ。

 言葉で伝えたほうが手っ取り早いと思うかもしれないが、人に道を聞かれて言葉で説明するよりも地図を見せたほうが正確かつ短時間で伝わるように、「トヨタの1枚」はひと目でわかる“地図”と同じ働きをしている。

 1枚の紙に「一覧性」を持たせることは、地図で言うと出発地から目的地までの道のりを示すという意味合い。このわかりやすさをさらに高めるのが「フレーム」と「テーマ」だ。この2つによって、その部分に何が書かれているかの見通しがつくため、情報の取捨選択もしやすくなる。

 トヨタの会議では、進行役となる社員が必ず会議用の1枚を用意する。あらかじめ「テーマ」を提示することで、議題が一目瞭然となり、話が脱線しても軌道修正がしやすいため、建設的な議論が行いやすいのだ。

 会議用の書類では「空白のフレーム」をあえて用意するのも効果的。たとえば、「対策」というテーマの何も書かれていないフレームがあると、出席者の意識は自然とそこに集中し、空白を「埋めたい」という心理が働く。こうして出席者全員が「対策」を考えるようになるというわけだ。そして、議論の中で対策のポイントとなる意見が出たら、空白に書き込んでしまう。そうすれば、会議終了とともに議事録が仕上がり、一石二鳥だ。

 このようにトヨタではどんな仕事のベースにも「1枚」の書類がある。著者がトヨタの社員だった頃、先輩や上司が作った何枚もの「1枚」を見ていくうちに、そこには共通する5つのテーマがあることに気づいた。

「①目的 ②現状 ③課題 ④対策 ⑤スケジュール」の5つがそれだ。この5つさえクリアされれば、あとは行動を起こして仕事を進めていくだけ。これをフォーマット化した1枚を作っておけば、考える時間も書類作成の時間も大幅に短縮される。こうして著者は年間400時間だった残業をゼロまで減らしたという。

 書類を1枚にまとめるには、考えに考え抜いたうえで不必要な贅肉を削ぎ落としていかなくてはいけない。この作業には次の3つのステップがある。
①考えるベースとなる情報を書類に「整理する」
②自分なりの「考え」を書類に「まとめる」
③書類の内容を誰かに「伝える」

 紙1枚にまとめるうえで大切なことは、資料そのものの作成法よりも、前段階の思考法なのだという。そこで著者が推奨するのが、自ら考案した3色ペンを使った「エクセル1」という思考整理法だ。

 まず、緑色のペンで紙に8分割や16分割のフレームを書く。そして、考えようとしていることのテーマ名を付ける。たとえば「今日のランチ」というテーマを決めたら、今度は青色のペンで思いつくままに「ラーメン」「とんかつ」「パスタ」というふうにフレームを埋めていくのだ。次に「油っぽい」「昨日食べた」など、今日のランチにふさわしくないものに赤色のペンで×印を付けていく。頭の中だけで考えを整理しようとしても、ごちゃごちゃして取りとめのないものだが、実際に手で書き出してみる「動作」によって考えがまとまりやすくなるそうだ。

 頭の中を整理するためにも、まずテーマが明確であることが大切だ。「そもそも何のために、この『1枚』を作るのか?」というふうに、「そもそも」と問いかけてみるといいだろう。そして、誰に何を伝えたいのか「読み手」をはっきりさせ、「どのような反応をしてもらいたいか」を考える。そうすることで、自分本位ではない客観的な書類を作ることができるのだ。

 今度はそれをまとめる作業だが、その際ポイントになるのが「ひとことで言うと?」という問い。甲乙つけがたい場合は、最大3つまで選んでもいい。「強みは3つあります」と論理立てて説明していくことも立派な「ひとこと」である。先に話の構造を示すと、相手は内容を理解しやすくなるのだ。

 こうしたプロセスは、すべて「伝えたいこと」を相手にとってよりわかりやすく絞り込んでいくこと。それは「山登り」にも似ている。山の裾野には「伝えたいこと」が沢山あるが、頂上はひとつ。そうして1枚の書類に絞り込んでいったプロセスを、今度は「下山」するイメージで順序立てて説明していけばよいのだ。

 「伝わらない」ことで不本意な経験をしてきた人も多いはず。「トヨタの1枚」は、長年に渡る業務上のやりとりから、自然と最適化されていった伝達手段である。伝え方を工夫することで、私たちの仕事は途端にスムーズになるかもしれない。

『トヨタで学んだ「紙1枚!」にまとめる技術』3つのポイント

●業務上の書類は、A3かA4の紙1枚にまとめる

●何のために書類を作るのか、「読み手」と「目的」を明確にする

●頭の中を整理し、不必要な部分を削ぎ落としたうえで、伝える

文●大寺 明