『職場の問題地図』要約まとめ

日本は労働時間が長いわりに、生産性が低いとされています。そのため「ワークライフバランス」が唱えられ、なるべく残業をせず、きちんと休みをとることが奨励されていますが、仕事の量も仕事のやり方も、社員の能力も変わらないわけだから、そもそも無理があるのかも。結局どこかでひずみが生まれ、社員は疲弊していくばかり……。こうした「職場の問題」は、制度を導入したり、個人のスキルアップをはかるだけでは改善されません。問題の本質を洗い出し、業務のプロセスを改善していく必要がありそうです。

「ワークライフバランス」が唱えられるようになってから、残業時間の上限設定や裁量労働制の導入といった制度を取り入れたり、プレゼンテーション研修や管理職研修といった研修が実施されるようになった。しかし、「業務改善・オフィスコミュニケーション改善士」という肩書きを持つ著者は、制度や研修で職場の問題が根本的に改善されることはなく、業務のプロセスを見直すほうが大事だという。そこで本書では職場のさまざまな問題をマッピングし、1丁目から11丁目までの章立てて改善策を提案していく。

 まず1丁目は、「残業だらけ」「休めない」という長時間労働の原因になっている「手戻り」について。その原因は、①いきなり100点をとろうとする。②状況の変化に対応できていない。③仕事のやり方や品質がバラバラ。④レスや判断が遅いの4つ。改善策としては、仕事に着手する際にきちんと成果物のイメージ合わせをすることと、いきなり100点をとろうとするのではなく、各段階で報連相をして、着実に100点に近づけるようにするといい。

 2丁目の「上司・部下の意識がズレてる」という問題については、上司の伝え方不足、部下の理解不足として、コミュニケーションや相性の問題として片づけられがちだが、それも原因の一部にありながら、やはり業務のプロセスの問題なのである。そこで大切になるのが、「仕事の目的を確認する」こと。さらに成果物の利用シーンを確認したり、成果物を生み出すための元データや部材を確認するといい。そして期限を確認した上で仕事の進め方を提案するといったプロセスを踏むことで、上司と部下の意識のズレはなくなっていくはず。

 3丁目では「報連相」の改善を提案している。ポイントとしては、①所要時間を示し、相手の都合を確かめる。②まず「報」から「連」か「相」かを伝える。③結論を伝える。④論点を数で示すこと。これは部下だけの問題ではなく、報連相を受ける立場の上司も意識する必要がある。報連相を定常業務のプロセスに組み込んだり、日報をフォーマット化するなど、「ルール」として改善するのもいいだろう。

 4丁目の「無駄な会議が多い」という問題に対しては、まず会議の目的を決め、どんなアウトプットを期待するのかを最初に定義するといい。目的がはっきりしていれば、わざわざ会議をやらなくてもメールのやりとりで十分ということもありうるし、期待するアウトプットを得るために誰が出席すべきかを選定することもできる。出席者それぞれが議事録をとりやすい発言を意識したり、会議の最後に「決定事項」「宿題事項」「次回予告」を確認して締めるようにすれば、会議のやり方そのものが標準化され、効率も品質も良くなる。

 5丁目の「仕事の所要時間を見積もれない」という問題は、業務プロセスがなく、個々人の経験と感覚のみを頼りにしているため、効率やスピードが測定できなくなっている状態だ。これは6丁目の「属人化」の問題でもあり、経験やノウハウが共有されていないため、毎回イチから業務にあたる非効率な状態になっているのだ。この「属人化」はなくならないものだという。なぜなら人には「承認欲求」があり、ベテラン社員ほど「自分にしかない(と思っている)」独自の知識やノウハウに自分の存在意義を感じているからだ。

「属人化」は職場の問題の王様みたいなもの。なくすことはできないが、各業務の「仕事の優先度」と「属人化の度合い」を測定して改善に務めるなど、軽減することはできる。業務の引き継ぎの際にマニュアル化したり、前任者の趣味やこだわりで続いていた無駄な業務を切り捨てるようにするといいだろう。

「属人化」は7丁目の「過剰サービス」や9丁目の「仕事をしない人がいる」という問題の原因にもなる。仕事の「遅い/速い」や「がんばる」といっても、それは主観的かつ属人的なことで、人によって解釈が異なる。これをなるべく客観的にするために、たとえば「1時間以内に」というふうに、「何を」「どこまでやればいいのか」を把握できるようにするといい。

 10丁目の「だれが何をやっているのかわからない」状態も、組織のさまざまな病気の素になっている。話しかけづらい空気や常に忙しく余裕がない状態を放置しておくと、知識やノウハウが共有されず、毎回ゼロベースで業務にあたるという非効率な状態になるのだ。こうしてその人独自のやり方が生まれ、属人化はどんどん加速していく。この負のスパイラルを断ち切るためにも、率先して雑談したり、勉強会や飲み会を開くなど、コミュニケーションの「場」を作るように心がけたい。

 最後の11丁目は「実態が上司や経営層に伝わっていない」という問題だ。現場レベルの改善には限界があり、「人を増やす」「仕事を減らしてもらう」「システムを入れてもらう」など、上司や経営層に動いてもらわないと打開できない問題も多々ある。なぜ上に伝わらないかというと、多くの場合、「結果」だけ報告しているから。伝えるべきは「プロセス」なのだ。

 人事部やコンサルタントに言われるがまま制度や業務改善術だけを取り入れてもうまくいくものではない。一緒に働いている仲間同士で膝をつきあわせて議論し、現場目線で主体的に改善策を考えていくことが大切だ。

『職場の問題地図』3つのポイント

●制度の導入や研修を実施するだけでは変わらない

●問題を洗い出し、業務のプロセスを見直す

●仕事の「属人化」をなくし、ノウハウを共有する

文●大寺 明