『潜在意識から「自分」を変える方法』要約まとめ

会議ではみんなから否定されるし、上司にも認めてもらえない。私ってなんてダメなんだ……。実はこの状況、事実とは異なる「思い込み」かもしれません。かつてライブドアの初期メンバーとして600名もの組織をマネジメントしていた石山喜章氏は、毎日のように人間関係のトラブルに頭を悩ませていました。そんなとき出会ったのが「潜在意識」を解明する理論。心の奥底にある「自己否定」に気づき、意識的に変えていったところ、仕事も人生も好転していったといいます。仕事と人間関係に革命を起こす方法とは?

 いつもビジネスで結果を出している人と、がんばっても結果が出せない人はどこが違うのだろう? 著者は組織開発コンサルティングの仕事を通して、多くのビジネスパーソンに質問を繰り返していくことで、ひとつの答えにたどり着いた。それは「潜在意識のなかで自分自身をどうとらえているか?」が左右しているというもの。

 これはビジネスに限った話ではなく、「私には価値なんてない」と自己否定をしている人は、親や恋人の愛情を素直に受け取れず、上司からも評価されることなく本当に価値のない存在になっていく。逆に自己肯定感が高く自分に自信を持っている人は、自分と同じように他者を認めることができるため、友達が多く仕事でも仲間に恵まれ、どんどん成果を出していくものだという。

 著者が潜在意識の重要さに気づかされた背景として、もともと著者自身が自分を「価値のない存在だ」と思い込み、切実な悩みを抱えていたことがある。少年時代は友達の輪に入れずいつも孤独を抱え、社会人になってからも周囲の評価を素直に受け取れず、疑心暗鬼に陥ってばかり……。夢だった事業プロデューサーの立場となり、年収、権限、影響力、社会的使命感を手に入れても、自分を認めることができなかった。

 自己肯定感の低い人は、他人の基準で自分の価値を判断するため、常に周囲が気になっているものだという。それは裏を返すと自分にばかり関心が向いているということ。そのため人の言うことを曲解し、コミュニケーションがズレてしまいがちだ。そうなると職場や取引先との人間関係もスムーズにいかなくなり、ますます悪循環になっていく。

 では、自己否定や自己肯定はどこから生まれてくるのだろう? 本書のベースになっているマインドーム理論では、潜在意識を「思考・感情・イメージ(価値観や判断基準)・エネルギー(意志やモチベーション)・アイデンティティー」の5階層にわけて考えていく。最深部に位置するアイデンティティーは「自分自身をどう思うのか?」という自己認識を指し、「私は日本人です」「私は医師です」といったプロフィール的なもののほか、「私は何をやってもダメな人間」といった自分の存在価値の認識によって規定される。このアイデンティティーをもとに「思考・感情・イメージ」が決まってくるのだ。

 アイデンティティーが形成されるのは、おおよそ7歳までの幼少期だとされている。しかし、そもそもこの「自己認識」自体が事実とズレていることが往々にしてあるのだ。人は自分の五感を通して認識した世界を事実だと思い込んでいるが、実のところそれは事実ではない。正確には「事実+解析」なのだ。潜在意識から自分を変えるには、客観的な「事実」と「思い込み」を分けることがポイントになる。

 著者の場合、幼少期に祖母の家に預けられて育ったことで、親から「捨てられた存在=価値がない存在」だと思い込んでしまった。「人に裏切られるなら、信用しない方がいい」と無意識のうちに決断し、大人になってからも人を信用できなくなった。これは、心が深く傷つくことを防ぐリスクヘッジであり、「自己否定」をすることで心の安全が確保された状態でもある。

 ところが、後年になって母親と祖母に尋ねたところ、当時は父親が起業したばかりで、子どもを食べさせていくために必死に共働きをしていたことが判明する。また、母親自身が幼い頃に預けられた経験があり、特に悪いことだとも思っていなかったことがわかった。この事実が府に落ちた瞬間、「捨てられたと思っていた自分」が「実は愛されていた自分」に変化したという。

 著者が母親に尋ねたように、事実と解析を分けるには当事者にヒアリングして事実確認をする方法(探偵法)と、自分一人で取り組む方法(内観法)がある。二つはほぼ同じ方法で、内観法は探偵法の作業を自分一人で行うというもの。当時を思い浮かべながら、関係者一人ひとりの観点に立って解析していくというものだが、自分の観点から出ることがきわめて難しいため、プロのコーチのアシストなしでは難しいそうだ。

 その前段階のプロセスとしては、まず自分自身の潜在意識を把握する必要がある。具体的な方法としては、最近あったムカつく出来事や感情が揺れたことを10個から20個ほどノートに書き出してみるといい。自分が何に反応しているかを観察し続けると、やがて毎回のように登場する共通点や類似点が見つかる。できれば信頼できる人の協力があったほうがより効果的だ。恋人や家族、友人や同僚に自分のクセを伝え、そのパターンが出ているときに教えてもらうように頼んでおくと気づきやすくなる。

 次に「それがどこからきたものか」を探ってみよう。幼少期の家庭環境や両親との関係が影響している場合が多いが、社会人以降もショックを受ける出来事があれば、それを機に考え方が変わることもあるそうだ。

 こうして事件現場を明らかにしたうえで、事実と解析を分けていく。自己否定の根っこに事実と異なる錯覚があったことに気づけたら、この1年で知ったことや達成できたことをノートに書き出すなどして、「自分で自分を認める」ことを習慣にしていくといい。徐々に自己肯定の割合を増やしていくのだ。

 しかし、父が酒乱でDVだったというように錯覚とは言えない場合もある。そんなときは過去の状況に関係なく、根本から自己否定をひっくり返す裏ワザがあるという。やや観念的になるので説明しづらいが、数千年来の思想、哲学、宗教、科学がたどり着いた答えから「人間とはなんなのか」を理解し、「すべてはひとつ」と気づくこと。この状態を著者は「無条件自己絶対肯定」と表現する。

 無条件自己絶対肯定にアイデンティティ(自己認識)を変える4ステップが紹介されているので、関心のある人はぜひ本書を手にとって思考法の一端だけでも触れていただきたい。潜在意識の気づきから人生を好転させるヒントがきっと得られるはず。

『潜在意識から「自分」を変える方法』3つのポイント

●潜在意識のなかの「自己認識」が、仕事も人生も左右する

●自分が信じている「事実」は、実は「事実+解析」

●「事実」と「思い込み」をわけることで、自分の潜在意識を理解する

文●大寺 明