『成功の神はネガティブな狩人に降臨する バラエティ的企画術』要約まとめ

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社交的でアクティブなイメージのテレビ制作者の仕事。しかし、TBSの敏腕プロデューサー・ディレクターとして知られる著者の角田陽一郎氏は、人見知りでネガティブな性格と自己分析します。ただし、けして「後ろ向き」ではなく「前向きだからこそネガティブ」。これってどういうこと!? 企画を実現させる秘訣から仕事を楽しむ人生哲学まで、著者がテレビ業界で培ってきた仕事術を学んでみましょう。

「さんまのスーパーからくりTV」や「中居正広の金曜日のスマたちへ」など数々の人気番組を手がけてきた著者だが、意外なことに自分の企画が採用されたことがほとんどないという。企画の良し悪しだけでなく、テレビ業界は視聴率が重視されるからだ。

 しかし、だからといって著者は「やりたいこと」を諦めない。夢を叶える一番の方法は “思い込み”だというのだ。いつか叶うと思い込んでいると「日々の行為」と「夢を叶えるための行為」がどんどん重なってくる。そうした本気の想いが外面ににじみ出て、周囲に伝わっていくものだという。

 たとえば著者には15年間ずっとやりたかった企画があった。大学の難しい講義をわかりやすい脚本にし、大学教授に扮した俳優が講義を演じるといった知的エンターテインメントだが、何度企画を出しても通らない。それでもめげずに会う人ごとにプレゼンしていたところ、世界的ベストセラー『7つの習慣』を発行する出版社を紹介され、BSの放送枠やキャスティング、講義場所となる女子大など、とんとん拍子に決まっていった。

 しかし、一番の問題はぶ厚い本の内容をいかにわかりやすい脚本にするか。ちょうど数カ月前に著者は初めて映画監督を経験し、脚本を手がけていた。また、大学でマスコミ学科の授業を受け持っていたので学生を前に講義を演じ、その反応をもとに修正を加え脚本を完成させることができた。そして映像化が実現すると、それを見た編成マンにその面白さが伝わり、地上波で第2弾をやることが決まった。

 これらは様々な条件がそろった今だからこそ実現できたこと。もし数年前に企画が通っていたら、脚本を書いた経験もなく、うまくいったかわからない。そう考えると、「他人がこの企画を受け入れなかったから」ではなく、「自分にそれを“カタチ”にするだけの準備ができていなかった」というのが本当の理由だったかもしれない。自分にスキルが備わり、周りの環境がスタンバイできてくると、やりたいことのほうからやって来るものなのだ。

 著者のスタンスは、企画を採用してもらおうとするより、実現させるためのレギュレーションを考えること。基本的にテレビ制作者の宿命として、視聴率は避けては通れない。なぜなら広告費によって制作費がねん出されているからだ。そこで著者は視聴率を気にせず思う存分番組を作るためのレギュレーションを考えだした。

 こうして生まれたのが「オトナの!」というトーク番組だ。様々なジャンルの天才がテレビで語るという趣旨の番組だが、通常は視聴率がとれそうな人をキャスティングする。しかし、著者は自分が心底「会いたい」と思う人に限定し、好き勝手にキャスティングした。なぜそんなことができたかというと、音楽&トークライブのフェスを毎年開催し、その入場料で制作費をねん出するという独立採算方式をとったからだ。

 既存のレギュレーションではなく、新たなレギュレーションを作るところから始めることは、当然難しい作業だ。しかし、そのぶん設計がより自由になり、様々なアイデアが実現しやすくなる。関東ローカルの深夜放送だった「オトナの!」をより多くの人に観てもらうため、当時としては前代未聞だったYouTubeに番組をアップし、いつしかYouTubeのほうが公式版のようになった。こうなるともはやテレビ番組という範疇ではなく、新たなエンターテインメントの冒険である。

 こうした突拍子もないアイデアをカタチにするからこそ、人生がより面白くなっていくのだと著者はいう。著者は人からよく「好きなことを仕事にしていていいですね」と言われるそうだが、著者がなぜ仕事を楽しめているかというと、やりたいことを実現するために仕事をしてきたから。著者はこれを「おいしい果実を狩る」と表現する。逆をいうと、仕事を楽しめていない人は「狩り」に出ていないのだ。

 かといって著者がポジティブな人間かというと、むしろ非常にネガティブで暗い男だと自己分析する。ただし“後ろ向き”ではない。何事にも積極的だし、新しいことも大好き。ルールや慣例を絶対的なものとして服従するスタンスが大嫌いで、むしろ問題の本質を見据えて変えていこうとするタイプだ。こうした自身の性格を「前向きだからこそのネガティブ」と著者は表現する。

「狩り」に出ても何も手に入らないかもしれない。仕事でチャレンジすると、そのぶん軋轢や責任を背負い込み、至極疲れるもの。失敗するリスクは後ろ向きの人よりはるかに高い。だからこそ極力リスクを避けようとして、用意周到にネガティブチェックをするのだ。

 本来、仕事とは「食べていく」ということ。それこそ石器時代は命がけで「狩り」に行った。ところが現代では、極端にいうとエクセル表を作っているだけでも食べていける。たしかにリスクは避けられるが、そのぶん単純作業ばかりで退屈を感じるだろう。だけど実際のところ、現代のリスクなんて「狩り」に出ても死ぬわけでもないし、戦国時代のように首をはねられるわけでもない。こんな恵まれた時代のご褒美を使わない手もない。だからこそ、著者はおいしい果実を求めて日々狩りに出るのだ。

『成功の神はネガティブな狩人に降臨する』3つのポイント

●やりたいことを実現する秘訣は「思い込み」と「準備」

●後ろ向きのネガティブではなく「前向きなネガティブ」

●リスクを冒してでも「狩り」に出るから仕事が面白くなる

文●大寺 明