『最強の働き方 世界中の上司に怒られ、凄すぎる部下・同僚に学んだ77の教訓』要約まとめ

ムーギー・キム 最強の働き方

「マッキンゼーでは」「ハーバード流はこうだ」といったビジネス書が多いけれど、食傷気味の人も多いのでは? たしかに一流の働き方だろうけど、「すごいですね」で終わってしまいがち。これに対し、著者のムーギー・キム氏は自身を「凡人」だと言います。そんな著者が世界中の一流のビジネスリーダーたちに怒られ、説教され、感心してきたなかで見えてきた、一流のプロの「働き方」「生活習慣」「考え方の視点」を77カ条の教訓として面白おかしくまとめたのが本書。あらためて自分の働き方を再点検してみませんか。

 高学歴でMBAを取得した典型的なエリートであっても何も成し遂げていない人はけっこう多い。逆に学歴はそこそこでもビジネスの世界で成功している一流のプロフェッショナルは数多くいる。世界的な大手コンサルティングファームや世界最大級の資産運用会社で働いてきた著者は、世界各国の「一流」といわれるビジネスパーソンと接してきた経験から、勉強ができるIQと「仕事のIQ」は種類が違うと気づかされた。

 グローバルに活躍する一流のビジネスパーソンの仕事術というと、「ハーバード流」や「マッキンゼー流」といったものが大流行りだが、本書には目新しいビジネス理論や魔法のような秘策が記されているわけではない。一流の仕事とはつまるところ一流の基本の積み重ねだという。

 メールにせよ資料作りにせよ、一流の人に共通しているのは論理が明確で文章が簡潔なこと。要点が整理され理解しやすいばかりか、メッセージもパワフルだ。逆に二流の人ほど自信がないせいか膨大な資料を作り、見る側の眠気を誘ってしまう。一流の人が何かウルトラCを実践しているわけではなく、こうした基本の一つひとつの完成度によって大きな差がついているものなのだ。

 そして、仕事ができる人はメールの返事がとにかく速いという。ちょっとしたことのようだが、これが一事が万事で、「今できる仕事はすぐ片づける」という習慣がメールの返信速度に反映されているのだ。メモをとるにしても白板の使い方にしても、一流のプロはとにかく速い。ただ書き殴っているのではなく、論理構造をつかみながら一瞬で物事を整理していく。

 このように仕事のできるできないは「整理力」が大きく関わってくる。一流のプロは机やカバンの中もきれいに整理されているという。これも一事が万事で、机の上やPCのデスクトップ画面が散らかっている人は、資料や領収書をしょっちゅうなくし、資料の細かな数字が間違っていることが多い。逆に整理力が高い人は正確に仕事をこなし、情報のリサーチも早く、仕事の生産性が全般的に高い傾向がある。

 しかし、コンサルかぶれの二流の人ほど「理由は3点ありまして」「MECEのフレームワークが云々……」といったロジカルぶったプレゼンをする傾向がある。実のところこうしたロジックはえてして解決策にたどり着くためというより、自分の仮説をもっともらしく説明するために使われる。それよりも大事なことは、心の奥底からほとばしる「どうしても伝えたいこと」だと著者はいう。

 ビジネススクールで「モンテカルロシミュレーション」を学ぶより、メールを即座に返す人のほうが出世するものだし、マーケティングのチャートを作るよりも、顧客の期待を上回ろうとする心構えを持つほうが大切。具体的かつ実践的な「基本」の大切さとともに、「本質」こそが大事だというのが本書の一貫したテーマだ。

 学歴やIQではなく、仕事能力の大きな差は心がけてなんとかなる自己管理に根ざしている。たとえば、一流のビジネスリーダーは決まって早寝早起きの生活を送っているそうだ。余裕を持って行動しているので早朝のミーティングにも絶対に遅刻しない。逆に二流の人は不思議なくらい絶対に5分遅刻するものだという。これもまた一事が万事で、「何事も時間ぎりぎりにならないと動かない」という生活習慣上の欠陥がそうした行動に表れてしまうのだ。ちなみに競争が激しいビジネスの世界で人生を棒に振る最短ルートは、平気で待ち合わせに遅れたり、仕事のデッドラインを守らないことだという。

 他にも服装や体型にも生活習慣が表れてくるので気をつけたい。一流のプロは総じてストイックに運動に励んだり、自分をより向上させようとする学習習慣があり、しっかりとした自制心を持っている。その一方で趣味や遊びでストレスを解消するすべを心得ていて、仕事とプライベートのバランスがいい。自分の仕事のフィールドだけでなく、他の分野においても教養と鋭い洞察を有しているため人間的にも魅力的な人が多いという。

 頭脳優秀で仕事の基本もできていて生活習慣も整っている。それなのに出世しないエリートがいる。彼らの最大の特徴は「主体的なマインドセット」の弱さにある。それは「起業家精神(アントレプレナーシップ)」と「目線を高める」の二つの要素に尽きる。自分の役職に求められる仕事を完璧にこなすだけの受け身の姿勢では、いつまで経ってもうだつが上がらない。自分の強みを特定して、自分から提案していく主体性がなければ、面白い仕事は回ってこないのだ。

 そして最終章では自己実現について言及している。自分の人生でありながら、周りが期待する職業上の役割をこなすだけの人生を送っている人は多い。これこそエリートが陥りがちな「世間体の罠」。苦労して勉強して経験を積んでいくにしたがって、責任が大きくなってどんどん人は不自由になっていく。いくら社会的ステータスや収入が高くても、それが幸福な働き方だとは限らないだろう。

 著者が知る一流のプロには、そうした肩書きや高収入を捨てて、自分がやりたかったことにゼロから飛び込んだ人たちが多くいる。あらためて「自分はなんのために働いているのか」を問うことが大切だと著者はいう。好きなことに熱狂的に打ち込めるなら、今のキャリアにこだわる必要もなければ、何歳になっても引退する必要はない。人生が有限であることを知り、やりたいことを今すぐ実践する生き方こそが、「最強の働き方」なのかもしれない。本書のいう「自己実現」とは「自分を自由にすること」なのだ。

『最強の働き方』3つのポイント

●学歴やIQの高さと、「仕事のIQ」は種類が違う

●一流の仕事とは、一流の「基本」の積み重ね

●日頃の「生活習慣」や「視線の高さ」が、仕事の細部に表れる

文●大寺 明