『最高のリーダーは何もしない 内向型人間が最強のチームをつくる!』要約まとめ

「自分はリーダーに向いていないのではないか?」と感じている人も少なくないはず。しかし、15年以上にわたって1000人超の経営者をインタビューしてきた著者は、そうした心配をする人こそ「リーダーとしての資質」があると考えています。リーダーというと最前線でチームを引っ張るカリスマ的イメージですが、リーダー像そのものが変わりはじめている!?

 リーダーというと「即断即決・勇猛・大胆」「カリスマ性」「頼りになるボス」といったイメージがある。しかし、著者が知る最前線で活躍するトップリーダーは共通して内向的で、心配性で、繊細な社長だったという。強力なリーダーシップでチームを引っ張っていくというより、権限を現場にゆだね、メンバーに支えられることでチームを導くというタイプだ。そのため一見リーダーらしい仕事を何もしていないように見える。もちろん本当に何もしていないわけではない。リーダーに求められる役割自体が変わってきているのだ。

 これには21世紀に入って急速に進んだ情報通信革命が影響している。かつては一定の枠組みのもとで小さな改善をしていけば会社は安泰だった。そのためルールやマニュアルが重視され、そこからはみ出るメンバーを注意し、統率する軍隊の隊長タイプのリーダー像が求められたのだ。しかし、今ではITの力によって消費者の細かなニーズや価値観が顕在化し、画一的なサービスが適さなくなった。しかも変化のスピードが速い。

 そうなるとリーダーが自社の商品やサービスをすべて把握し、意思決定をしていくことは不可能。トップダウン型リーダーシップだけでは、目まぐるしく移り変わる消費者のニーズに素早く対応できないのだ。そこで現場のメンバー各自が自律的に動き、臨機応変な対応をしていくことが求められるようになった。そして、その際の指針となる「目的=ビジョン」をつくることが、リーダーのもっとも重要な仕事へと変わったのだ。

 ビジョンがメンバーに浸透し、自律的に動くチームができれば、リーダーは現場への指示に時間を奪われなくなり、広く世の中を察知するためのインプットの時間にしたり、次なる展開を考えたり、変化に備えるといったリーダー本来の仕事ができるようになる。飲み会や会合に参加したり、新聞や雑誌を読んでいたり、なんとなく遊んでいるように見えてしまうが、実際はそうした時間こそがリーダーにとってヒントを与えてくれる情報源となる。優れたリーダーはそうして四六時中、考え続けているものなのだ。

 常に頭を働かせているリーダーの姿は、極端なまでの心配性にすら見える。高いポジションになればなるほど、チーム編成や人材補強、利益率やリスク回避といった細部まで気になるようになり、そうした心配事と向き合うには徹底的に考えるしかないからだ。そして「これ以上は心配できない」というところまで考えつくすと、あとに残るのは「自信」のみ。誰よりもネガティブチェックをしているからこそ、自信を持って決断できるのだ。こうした過程を知らなければ、ただ「大胆」な人に見えてしまうだろう。

 ビジョンをチームに浸透させるためには、まずリーダー自身が心からビジョンに信念を抱いている必要がある。これがなければ伝え方をいくら工夫したところで、「きれいごと」や「お題目」になりかねない。朝礼でも会議でもお酒の席でも繰り返しビジョンを語る社長がいるが、これはメンバーに語りかける以上に、自分に言い聞かせて自己暗示をかけているようなところがあるという。

 グローバル化を背景として、性別や国籍、さまざまな価値観の人々がともに働くようになり、これまで「阿吽の呼吸」で伝わっていたことを、あらためて伝える「説明能力」がリーダーに求められるようになった。ビジョン伝達の本質はやはり「言葉の力」。だからこそリーダーには誰よりも言葉に敏感であることが求められてくる。

 ビジョンづくりにおいては、「社会貢献」の視点を持つことが大切だという。世界的な潮流として、若い世代の仕事の目的が変わりつつある。「最近の若者はハングリー精神が足りない」とよく言われるが、はたして本当だろうか? 著者はいつの時代も若者は純粋な精神を持ち、「今の世の中に足りていないものに敏感に気づく」という仮説を立てた。

 戦後の日本にはモノとお金が足りていなかった。だから若者たちは「物質的な豊かさ」を求めて一生懸命働いた。その甲斐あって日本はたしかに豊かになった。一方で「人と人のつながり」や「助け合い」といった「精神的な豊かさ」は失われてしまった。今の若い世代はこのことに気づいているのだ。そのため「物質的な豊かさ」に対してはハングリーではないが、「精神的な豊かさ」に対してはハングリーになる。

 現代の若い世代は、「ノルマを達成すれば給料が上がる」と言われてもがんばれない。むしろ、それを達成することが他者の幸せにつながるというビジョンを共有できたほうががんばれるのだ。実際にアメリカでも日本でも金銭的な報酬を提示する以上に、社会的意義を示したほうが優秀な人材が集まってくるそうだ。

 これからのリーダーは、「会社のために頑張ろう」ではなく、「社会のために頑張ろう」というビジョンを発信していくことが大切。それがメンバーの意欲の支えになるばかりか、リーダー自身がゴールを目指して走りきるための力の源にもなる。そして、ただ言葉にするだけでなく、本当に実行し達成する人のもとに、ますます人は集まってくるだろう。

『最高のリーダーは何もしない』3つのポイント

●ビジョンをつくり、チームに浸透させることがリーダーの仕事

●心配性の人が徹底的に考えるからこそ、自信を持って決断できる

●「会社のため」ではなく「社会のため」というビジョンを発信

文●大寺 明