『チームの力――構造構成主義による〝新〟組織論』要約まとめ

『チームの力――構造構成主義による〝新〟組織論』

『進撃の巨人』で描かれる巨人――。もともと人間だったものが巨人化し、人々の暮らしをおびやかす。それは、巨大になりすぎた組織の比喩のようにも読める。巨人に対抗するためには、僕たちもチームを組まなければいけない。SNSを使ってチームが結束し、日本最大級の支援団体となった「ふんばろう東日本支援プロジェクト」に“チーム作り”の考え方を学ぼう。

 2011年の東日本大震災の直後、著者は被災地に支援物資を届ける個人的なボランティアに向かった。そこで目にしたのが、物資が集積していながら本当に困っている人に届いていない状況……。一部の人にだけ物資を配布すると不公平になるため、行政がストップをかけていたのだ。このときの憤りがきっかけとなり、著者は「ふんばろう東日本支援プロジェクト」をスタートさせた。

 本書の冒頭で、メガヒット作『進撃の巨人』の「巨人」が組織や為政者の比喩としてあげられている。もともと人間でありながら巨大化し、圧倒的なパワーで人々の暮らしをおびやかす存在。その最たるものが日本政府という巨人だ。原発事故収束のメドすら立っていないのに目先の利益を求めて原発再稼働に動き出す。これでは人を食い物にする巨人の暴走と変わらないではないか。物語の主人公エレン・イェーガーが自ら巨人化して巨人の侵攻を食い止めたように、一人ではできないことがあるから、私たちはチームを作って対抗するのだ。

「ふんばろう」のコンセプトは「クジラではなく、小魚の群れになろう」というもの。パワーはあるが機敏に方向転換ができないクジラのような組織になるのではなく、小魚の群れのように状況の変化に応じて臨機応変に方向転換できるチームを目指した。SNSを通して集った3000人を超えるチームをまとめるために著者が応用したのが“構造構成主義”である。これは「方法の原理」「価値の原理」「人間の原理」からなる論理的に行動するための学問だ。

「方法の原理」とは、方法の有効性は“状況”と“目的”によって変わるという考え方だ。「ふんばろう」の目的は「必要なものを必要な人に必要な分だけ届ける」こと。東日本大震災という未曽有の状況であるから、現地で聞き取りを行い、HPとツイッターで素早く情報共有するなど臨機応変な支援を続けた。

 そもそもチームとは目的を達成するために作られるものであり、すべての価値判断は目的に応じてなされる。これが「価値の原理」に基づく考え方だ。あらゆる価値は目的や関心、欲望から生じるものであり、「何がよいか」という判断基準もそれに応じて変わってくる。だからこそチーム作りにおいて、何より重要なのが目的や理念を明確にすること。これを抜きにしてチーム編成も戦略も考えることはできない。

 チームを運用する際に気をつけなければいけないのが、人間同士の摩擦だ。特に「ふんばろう」のように運営にSNSを用いる場合、文面だけのやり取りによる「すれ違い」に気をつけなければいけない。たとえば誰かが「賛成できない」と書き込むと、書かれた側は否定されたと感じ、防衛的な反応になる。こうしたネガティブなやり取りが続くと、周囲の人を異様に消耗させてしまうものなのだ。

 構造構成主義は極めて論理的なものだが、「感情は論理に先立つ」ところがある。たとえ正しい論理の意見であっても、「気に食わない」と思われていると話を聞いてもらえない。そうした感情的な問題は、ほとんどの場合、自分が否定されたと感じることで生じているものなのだ。そこで著者は「建設的なやり取りをするための7カ条」を共有することにした。これは「すべての人間は肯定されたいと願っている」という“人間の原理”に則した考え方であり、必ず肯定してから意見を述べるように働きかけた。

「ふんばろう」では、チームを機能させるコツとして100以上あるプロジェクトごとに数十人から数百人のグループを作り、メンバーにはできるだけ複数のグループに入ってもらうようにした。一つのグループだけに所属していると、「自分のプロジェクトにできるだけ多くのお金を持ってこよう」といった縦割り的な考えになったり、「自分たちの方が正しい」といった対立が生まれがちだが、様々なグループに所属することで全体最適の視点が持てるようになり、自発性も生まれてくるものなのだ。

 一連の活動のなかで著者は行政をはじめとする様々な組織の不合理を目の当たりにした。そして、我々の社会における理不尽の9割は、複雑怪奇化した組織がもたした“組織災”ともいうべきものであることを理解した。怪物と化した組織では、一人の人間である前に“組織人”となり、前例主義に陥ったり、理不尽なことを当たり前のように行ってしまう。「ふんばろう」はこれとは対照的にあくまで個人の意見を尊重した“チーム”であろうとしたのだ。

 寄付金などで一度利権を得た組織は、それを維持し、延命することが目的になりがちだ。こうした状況に陥らないようにするため、著者は「なくなることが目的」という理念を先に掲げた。そもそもチームとは、何らかの目的を達成するための機能体であり、時限的に成立すべきものなのだ。そして、3000カ所以上のエリアで物資支援のサポートをし、2万5000世帯に家電を配布した時点で「ふんばろう」は当初の宣言どおり発展的に解散。最初から最後まで構造構成主義をまっとうした見事なチームの在り方だった。

『チームの力――構造構成主義による〝新〟組織論』3つのポイント

●「目的」と「状況」に応じて臨機応変に“方法”を変える

●相手を尊重することで、メンバー同士の摩擦をなくす

●延命ではなく、「目的」を達成するためにチームは存在する

文●大寺 明