『脳を最適化すれば能力は2倍になる』要約まとめ

やる気が出ない仕事を気力で乗り切ろうとしたことはないでしょうか。だけど結局、モチベーションが上がらずグダグダ……。こうした仕事の取組み方は脳の仕組みにかなっていないと精神科医の著者は言います。脳は「不快」を避けるようプログラムされているため、無理をしても非効率。逆に脳の仕組みに沿って生活習慣や働き方を変えることで、モチベーションや効率はアップするそうです。バランスよく「脳内物質」を出す仕事術とは?

「精神科医でなければ書けないビジネス書」として本書では、重要な役割を担う7つの脳内物質を『新世紀エヴァンゲリオン』になぞらえるなど、わかりやすく説明している。たとえば主人公の碇シンジの有名なセリフ「逃げちゃダメだ」は、使徒から「逃げたい」という衝動を表し、こうした局面で分泌されるのが、「闘争と逃走のホルモン」と呼ばれる「ノルアドレナリン」というわけだ。

 暗いイメージのシンジとは対照的に、常にポジティブなアスカ・ラングレーは、モチベーションの源でもある「ドーパミン」を象徴する。「ドーパミン」は目標を立てた時点と、目標が達成されたときの2度分泌される。ただし、簡単すぎる目標や「将来の大きな夢」といった目標ではあまり分泌されず、「短期間で実現可能な目標」が効果的。ドーパミンは目標に向かって工夫することで分泌されるため、なんとなく幸運が転がりこんできた場合は分泌されない。

「適度な課題」を自分に課し、それが達成できたら、美味しいものを食べに行ったり、高額なものを買うなど、自分に「報酬」を与えるといい。人から「ほめられる」ことも効果的だ。こうして脳が「快」を覚えると、二度目の「快」を求めて自然とモチベーションが湧き上がってくる。目標を達成した後は、すぐに「新しい高い目標」を設定したい。なぜならドーパミンは「現状維持で大丈夫」と思った瞬間に出なくなってしまうからだ。

 ドーパミンが「快」を求めるのに対し、シンジが象徴する「ノルアドレナリン」は「不快」を避けようとする脳内物質。原始時代の人間が猛獣に遭遇した際、「闘う」か「逃げる」か判断するときに分泌されるもので、瞬発的に集中力や記憶力がアップする。そのため「明日の納期に間に合わない」といったストレスがかかると、かえって仕事がはかどったりするのだ。あるいは「叱る」といった指導でも効果を発揮するが、即効性がある反面、長期的にストレスをかけるのは逆効果。うつ病になる危険性があり、集中力が低下して「うっかりミス」として表れたりする。ノルアドレナリンの過剰な分泌を抑えるために、しっかり「休む」ことを意識したほうがいいだろう。

 勇猛果敢なネルフ作戦部長の葛城ミサトは、「闘争ホルモン」とも呼ばれる「アドレナリン」を象徴する。これも恐怖や不安を回避するために瞬発的に分泌されるもので、「火事場の馬鹿力」というように心臓と筋肉を中心に未知のボテンシャルを引き出してくれる。ピンチや危機を乗り切るために大切な反面、分泌されすぎると極度の緊張に陥ったり冷静さを失ったりするため、こちらも分泌を抑えることを意識したほうがいい。

 常に平静な心で使徒と戦う綾波レイは、「癒しの物質」である「セロトニン」が分泌されている状態だ。ドーパミンやノルアドレナリンなどの興奮系脳内物質の過剰な分泌を調整し、「脳のオーケストラ」とも呼ばれている。セロトニンは「睡眠」と「覚醒」をコントロールする物質で、日の出とともに合成と分泌が盛んになり、午後から夜にかけて低下し、深い眠りに入ると分泌されなくなる。早起きすると仕事がはかどるのは、まさにセロトニンの効果によるもの。イライラして仕事の能率が下がっているときは、セロトニンが低下している可能性があるので、外食や散歩、簡単な運動など外に出て気分転換するといい。

 シンジの同級生で授業中に居眠りばかりしている鈴原トウジは、睡眠物質の「メラトニン」が多めに分泌されている状態だ。著者がもっとも重要な仕事術をひとつだけ選ぶとしたら、「きちんと睡眠をとること」と答えるという。猛烈に仕事をがんばっている人は、昼間の疲れを回復すべく深い睡眠をとっているものであり、メラトニンは「細胞修復物質」でもあるため、病気のリスクを減らし、老化防止にも役立つ。メラトニンは光を嫌うため、入眠前は蛍光灯の光を浴びないようにしたり、スマホやパソコンを控え、真っ暗にして眠るのが好ましい。

 理知的でクールなエヴァの開発責任者である赤木リツコは、創造力や発想力に影響する「アセチルコリン」が分泌している状態だ。これも睡眠中に分泌されるので、仕事中に猛烈な眠気に襲われたからといって、コーヒーを飲んで我慢して仕事を続けるより、短い仮眠をとったほうが効率的。セロトニンは朝に分泌されるが、アセチルコリンは午後から夜にかけて分泌されやすくなるので、「ひらめき」や「斬新な発想」が求められるクリエイティブな作業は夜間が向いている。

 超越的な強さと自信にあふれた渚カヲルは、究極のストレス解消物質とされる「エンドルフィン」が分泌された状態だ。「痛み」や「苦しさ」を「幸福」に変換する物質だが、苦しいときだけでなく、ペットや自然と触れ合ったり、ヨガや瞑想をしたり、「癒された」「リラックスした」と感じた瞬間にも分泌される。よく「成功者は感謝の心を忘れない」と言われるが、エンドルフィンは人に感謝することでも分泌されるので、嫌々仕事をするより、何ごとも感謝するくらいポジティブなほうが成功しやすくなる。

 ドーパミンは「快」を求め、ノルアドレナリンは「不快」を避け、セロトニンがそれらを調整するなど、脳内物質にはそれぞれの役割がある。どれかひとつの脳内物質だけを徹底的に分泌させればいいというわけではなく、バランスを維持することが大切だ。

『脳を最適化すれば能力は2倍になる』3つのポイント

●脳の仕組みに沿って、生活習慣や働き方を変える

●脳内物質の分泌には、しっかり「休む」ことが大事

●脳内物質はどれか一つではなく、それぞれのバランスが大切

文●大寺 明