『伸びる会社は「これ」をやらない』要約まとめ

「いかに社員のやる気を引き出すか」が社長やマネージャー職の悩みのタネ。そこで、親身に部下の相談に乗ったり、飲みに誘って熱く語ったり、社長自らが現場に指示を出したりしがちだけど、コンサルティング会社の代表を務める著者によると、これらはむしろ逆効果で、「やらない」ほうがいいとと言います。少人数のスタートアップならいいことかもしれないけど、ある程度の組織の規模になると、むしろ弊害のほうが大きい!?

 著者は「識学」という意識構造学にもとづいて企業コンサルティングに取り組んでいる。これまで組織運営に悩む多くの社長や管理者と会ってきたが、みな会社をよくしようと一生懸命取り組んでいるにも関わらず、組織が壊れてしまっていたそうだ。「識学」の観点からとらえると、そこには「誤解」や「錯覚」があるという。

 そうした「誤解」や「錯覚」を解くには、まずビジネスにおける「事実のしくみ」を正しく理解させること。①お客さまにサービスを提供する⇒②お客さまから対価をいただく⇒③会社が社員に給与を支払う。これが正しい順番なのだが、多くの働く人たちは、次のように勘違いしているのが実情だという。①会社が社員に給与を支払う⇒②お客さまにサービスを提供する⇒③お客さまから対価をいただく。

 正しい順番を理解していないと、「何かを得ることができるから働く」という思考になり、逆に「モチベーションが上がらないから、がんばらない」という思考も成立してしまう。社長や上司は部下のモチベーションを上げようと懸命になりがちだが、そうするとモチベーションが上がらないのは上司や会社のせいといった不満ばかりが増幅してしまうのだ。

 では、どうすればよいのか? それは複雑なことではなく、「自分は誰から評価を得なければいけないのか」を正しく認識させること。それは①の「お客様にサービスを提供する」ことであって、何よりもまず市場から評価されなければいけない。「市場は会社を結果のみで評価する」ものであり、プロセスは評価されないのだ。

 上司が部下を評価するときも、モチベーションの高さや、たくさん残業したといったプロセスで評価しがちだが、こうした感覚的な評価は、基準が曖昧であり、個人的見解が入って平等な評価ができなくなる弊害のほうが大きい。同じ結果を出しているなら、残業時間の少ない人のほうを評価すべきだろう。

 社長や上司がやるべきことは、ルールを明確にすることだという。近年の風潮として、社員にルールを押し付けず、自発性にまかせたほうが自由な発想が生まれて組織も成長していく、という考え方がある。たしかにそれは理想だが、コンサルティング業務を通して多くの組織を見てきた著者は、組織運営の仕組みとして、それは「あり得ない」と断言する。

 当然のごとく社員それぞれが独自のルールを持っている。だからこそ組織全体として何を良しとするかというルールを明確にしておかないと、答え合わせに時間が費やされ、莫大なロスタイムが生じてしまう。ルールという前提条件があってはじめて組織のコミュニケーションは成り立つものなのだ。

 部下からの評価が怖くてルールが決められないという社長も多い。いきなり厳しくすると辞めてしまうのではないか……と考えてしまうのだ。しかし、ここで確認しておきたいことは、本来、組織にはリーダーが決定したルールを部下が評価する機能はないということ。なぜならルールを決めるという権限は、市場に対する責任とセットで与えられるものだからだ。

 リーダーは、その組織において一番高いところに位置する。とういうことは、一番遠い距離まで見渡せるということ。ここでいう距離とは「時間」のことを指す。リーダーはどのメンバーよりも遠い未来を見る必要があるのだ。たとえば、新入社員時代に上司に厳しく指導され、当時は怖いと思っていたが、振り返ってみると、今の自分があるのもそのお蔭だったと思えることがよくある。部下の未来の成長にコミットし、そのために必要なことをやらせるのが、本来のリーダーの役割なのだ。

 これは部下の育成だけでなく、会社の意思決定も同じ。今は一時的にメンバーに負担をかけ、無意味に見えることであっても、それがチームの未来にとって最善の選択であると判断するのであれば、責任を持って決断していかなければならない。

 決断していくためには、正しい情報が必要になる。そのため社長という立場ではなかなか把握できない「現場で起きていること」を知ろうと、社員一人ひとりの声に耳を傾けようとしがちだ。これ自体は正しいことなのだが、間の役職者を飛ばして社員に直接指導したり、決断を委ねてしまうことは、組織運営でもっともやってはいけないことだという。

「社長が指示したことだから」と役職者が無責任になり、成長しないという悪循環に陥るばかりか、社員が上司と同等であるかのような誤解を持つようになり、上司を上司として認識しなくなってしまう。こうなると組織は機能しなくなってしまうという。

 小説やドラマで描かれているような「感情豊かな人間味のあるリーダー」を理想としがちだが、現実の世界でリーダーに求められる資質は、組織を勝利に導くために、感情とは無関係にメンバーの誰よりも冷静に事実を見極めること。社長が社内で孤独にならないということは、「会社の機能がどこかで不具合を起こしている可能性がある」と著者はいう。

『伸びる会社は「これ」をやらない』3つのポイント

●ビジネスにおける「事実のしくみ」を正しく理解する

●社長や上司の仕事は、「ルール」を明確にすること

●リーダーは「孤独」でなければいけない

文●大寺 明