『モチベーション革命 稼ぐために働きたくない世代の解体書』要約まとめ

出世するため、お金のため、モテるため、美味しい食事を楽しむため……。こうした欲望を糧に人生まるまる仕事に捧げる上司を見て、「自分はこうはなれない」と思ったことはないだろうか? 出世のための飲み会に時間を割くより、家族と過ごしたいし、高級店でなくてもサイゼリアで十分。だからお金や地位が仕事の目的にならない。「なんのために頑張るか」という働くためのモチベーションが、ある世代を境に大きく変わってきている!?

 戦後の何もなかった時代は、お金を稼ぎたい、家を建てたい、いい車に乗りたいといった欲望が直接的に仕事のモチベーションになっていた。団塊世代以上の人が「ないもの」をいかに埋めるかを目標にしたのに対し、30代以下の世代になると、生まれたときから何もかもが揃っていて、「ないもの」がない。そのため物やステータスを欲して頑張るというモチベーションが持てない。本書ではそうした世代のことを「乾けない世代」と呼ぶ。

 だからといって「乾けない世代」に欲望やモチベーションがないわけではない。団塊世代以上が仕事に対し、「達成」と「快楽」を強く欲したのに対し、「乾けない世代」は「意味合い」「良好な人間関係」「没頭」を求める傾向があるという。上の世代からすると理解しがたいモチベーションかもしれないが、今後、AI(人口知能)によって仕事がなくなっていく時代において、むしろ「乾けない世代」こそが希望になると著者は考えているのだ。

 戦後の食糧すら足りなかった時代は、いかに安く広く食べ物を配れるかが重視された。そのため仕事も、決められた手順でひたすら同じものを生産していればよかった。しかし、どの家庭にも食品が行きわたると、今度は安くて美味しいという「品質」が求められるようになった。そして今の時代は、安くて美味しいものが世の中に溢れたため、それに加えてダイエットという付加価値やインスタ映えするなど、消費者の欲求はどんどん多様化した。

 やるべきことが明確であれば、与えられた仕事をこなし、人より良い結果を出せば成功することができただろう。しかし、今の時代はそれ以前に消費者の潜在的な欲求や、購買意欲のツボである「インサイト(新しい視点)」を見つけ出さなければいけない。さらにはユーザーの体験をプロデュースすることが重要になり、与えられた仕事をこなしていればいいという時代でもなくなってきている。

 1年中会社勤めをしているようでは「インサイト」を見つけることはできない。シリコンバレーでは残業ゼロ、週休3日の会社も珍しくないが、ただ社員を休ませているわけではなく、そこには休みの間に「インサイト」を発見してくるという“仕事”が課せられているのだ。日本でもオイシックスやYahoo!といった会社で同様の取組みが始まっている。まず社員自身が生活者として生きることで、世の中の潜在的なニーズを拾い上げ、課題を解決するだけでなく、課題自体を発見することが期待されているのだ。今後こうした取り組みはあらゆる業界で増えていくだろう。

 そうなると仕事と遊びの境目があやふやになり、ずっと仕事をしているような感覚になりかねない。これを苦しいと感じる人はそもそも仕事が合っていないのかもしれない。コピーライターが電車の中でもコピーを考えているように、自分が好きなことを仕事にしている人は、「仕事をしている」という意識ではなく、「好きなことをしている」という感覚で日々を過ごしているものなのだ。だからこそ人より得意なことになり、人とは違う強みになる。

 たとえお金にならなくても、自分が好きなものに没頭できることを「ライフワーク」という。これまでは仕事とライフを切り離す「ワークライフバランス」の時代だったが、これからは自分が好きでたまらないことを仕事にし、仕事とライフを「公私混同」する「ライフワークバランス」の時代になると著者は考えている。

 なぜなら「人工知能革命」が加速していくと、他の人でもできてしまうような単純作業はどんどんAIが担っていくからだ。では、どんな仕事ならロボットに代替されることなく、持続していけるだろうか?

 人口知能にも代替不可能なものに「嗜好性」がある。いわば「私は誰になんと言われても、これが好きだ」という偏愛だ。頭で考えて答えが出せるようなものは、人口知能のほうが優れた答えを早く出せるようになるが、この「嗜好性」は非常に非効率なもので、ロボットには代替できない。その典型がファッションで、ロボットは機能性でしか衣服を判断できないのだ。この非効率な「好き」こそが次の産業であり、日本はゲームやアニメといった産業で世界にリードしている。この偏愛を突き詰めることは「乾けない世代」の得意とするところなのだ。

 では、どうやって偏愛を育てていけばいいだろう? まずはアウトプットを目的とせず、ただひたすら好きなことに「没頭」すること。世の中の人にとって「新しい意味」をもたらすものは、人との違いやズレから生じる「好き」や「歪み」である。確固たる強度になるまで偏愛を育てることができれば、それがあなたの価値となる。それが周囲から評価され、求められるようになったとき、「生きがい」になってくるのだ。

 最初はちょっと孤独かもしれない。だけど、あなたが心底楽しそうに没頭し、それが少しずつ形になっていく姿を見ているうちに、周囲の人も応援してくれるようになり、本当の意味での「仲間」が増えていくはずだ。

『モチベーション革命』3つのポイント

●「ないもの」がない世代の価値観を理解する

●人との違いやズレから生じる「偏愛」を育てる

●好きなことに没頭し、ライフワーク化する

文●大寺 明