『好奇心を〝天職〟に変える空想教室』要約まとめ

植松電機はもともと炭鉱で使うモーターの修理業を営んでいた。時代の移り変わりとともに車の部品修理業になり、さらにはリサイクルで使う巨大マグネット製造へと転換。そして今では宇宙用ロケットや人工衛星を開発している。北海道にあるわずか20人足らずの工場でありながら、JAXAやNASAも一目置く会社だ。子どもの頃からの夢を実現した経営者の考え方とは?

 著者は幼い頃から飛行機やロケットを作ることを夢見ていた。しかし、夢を語ると大人たちは決まって「どうせ無理」と否定する。なぜなら著者は『よく飛ぶ紙飛行機集』という本を読み込んで計算式を全部覚えるなど、好きなことは夢中でやるものの学校の勉強はさっぱりだったからだ。ロケットや飛行機を作るには、お金もかかるし相当頭が良くないと無理だと先生に説教され、ずっと「現実を見なさい」と言われ続けてきた。

 先生たちが言う「現実」とは、「無駄なことをしてないで、ちゃんと勉強をしていい大学に進んで、いい会社に入りなさい」ということ。しかし、実際にロケットが作れるようになったのも、子どもの頃に紙飛行機の計算式を覚えたからで、けっして無駄ではなかった。夢をあきらめさせようとする日本社会の風潮に対し、著者は大いに疑問を感じている。

 戦後、先進国の技術をコピーして日本にも大量生産の時代が訪れ、数々の大企業が生まれた。そうした会社に就職することが安定した「楽な生き方」だとされ、応募が殺到するようになった。そこで選考が面倒になった大企業は学歴によって一次試験をするようになる。いつのまにか学問が「いい会社に入るための資格」になっていたのだ。

 しかし、大量生産の時代でもなくなり、偏差値の高い素直でマジメなロボット的な人よりも「やったことがないことを、やりたがる人」が求められるのが今の時代だ。アップルやダイソンといった先進的な企業がそうした人材を集め、どんどん変わったことに挑戦しているように、これまでとは違う方法を「考える力」が世界的に求められるようになった。

 大学卒業後、著者は夢だった航空機設計の仕事に就くも5年半で退職した。なぜなら飛行機に興味のない人がどんどん入ってくるようになったからだ。彼らは新しい仕事の依頼に対し、「自分には無理です」「やったことがないからできません」とことごとく断っていた。そう言っておけば「楽ができるから」というのが理由だった。

 しかし、能力とは失敗や成功の「経験」によって身につくもので、楽をすればするほど「無能」になる。ましてやり甲斐や達成感は、その仕事が困難だったからこそ得られるもの。「楽な仕事なんてつまらない」というのが著者の仕事観だ。ついにはその部門自体がなくなり、楽をしていた人はみんな仕事を失ってしまった。

 こうして著者は34歳で起業する。最初から順調だったことで天狗になってしまい、事業で大失敗をして2億円もの借金を抱えることに……。一時は完全に自信を失っていたが、安全なロケットを研究していた北海道大学の永田教授と出会い、再びロケットを作る夢を取り戻した。

 こうして二人は、世界で誰も作ったことがない変わった仕組みのロケットエンジンを作ろうと試みるが、開発資金もなければ参考になる本もない。もちろん失敗を重ねた。あらためて考えると、教科書に書いてあることや親や先生が教えてくれることは全て「昔のこと」だと気づかされた。昔の人の知識を参考にしながら「自分で考えて、自分で試してみる」ことが、未来を生きるために大切だと考えるようになる。

 やったことがないことを試すと失敗するのが当然のこと。しかし、「失敗しそうだから」「失敗したらどうする?」というやらない理由となる言葉に負けてはいけない。これこそ何の意味もないくだらない言葉だと著者は言う。大事なのは「なんで失敗したんだろう」と考え、次の挑戦に活かすことだ。植松電機では、失敗の際には従業員同士で「だったら次はこうしてみたら?」と声をかけ合うようにしているそうだ。

 著者が本書で伝えたいことは、母から教えてもらった「思うは招く」ということ。「あきらめなければ、夢は叶う」というのは本当のことだと著者は実感しているが、この言葉には副作用がある。「夢が叶わなかったのは、あきらめた自分が悪い」と自分を責めてしまいがちなのだ。これも子どもの頃から親や先生に「あきらめ方」ばかり教わってきたせいだと著者は考えている。

 どういった人が「あきらめ方」を教えようとするかというと、「やったことがない人」である。やりたいことがあるとき「やったことがない人」に相談すべきではない。全力でまずは「やったことがある人」を見つけて相談するといいだろう。

 現実というのは「変えられない過去」のことをいう。「過去」を見て「未来」をあきらめてしまうと、「努力しても無駄だ」「どうせ無理」と考えるようになってしまう。地域紛争も幼児虐待の問題も、この世のあらゆる不幸は「どうせ無理」という思い込みに端を発していると著者は感じている。

 子どもの頃の夢をあきらめずにロケット開発を続けてきた背景には、この「どうせ無理」をなくしたいという思いがあったという。夢を実現した現在は、「今できないことを、追いかけること」が夢だと確信するに至った。そしてまた新たに宇宙開発で得られた技術を応用して、人々のライフスタイルを劇的に変える可能性を持ったプロジェクトに挑戦しているのだ。

『好奇心を〝天職〟に変える空想教室』3つのポイント

●これまでとは違う方法を「考える力」が求められる時代

●今できないことを追いかけることが本当の夢

●「どうせ無理」という言葉に負けてはいけない

文●大寺 明