『僕らが毎日やっている最強の読み方』要約まとめ

超情報化時代の昨今、情報の有無と理解の深さがビジネスの決め手になってきます。だけど、ネットやテレビからは情報が洪水のように溢れ、新聞や本を読もうにも時間がない……。何をどう読めば効率的に有益な情報が得られるのか? 今こそ問われるのが、新聞、雑誌、ネット、書籍などありとあらゆる情報を「読みこなす技法」です。毎日10紙の新聞に目を通すというジャーナリストの池上彰と、毎月300冊以上の本に目を通すという元外交官の作家・佐藤優が、対談形式で「最強の読み方」を伝授!

 基本的に活字は紙で読むというアナログ派の池上彰に対し、電子書籍や雑誌の定額読み放題サービス「dマガジン」を活用するという佐藤優だが、両者ともに今も情報の窓口は新聞がメインだという。まず新聞で日々のニュースの全体を捉え、気になるニュースがあれば、書籍で深掘りしていくというスタンスは共通している。

 新聞の優れている点は、一面から順にめくっていけば、政治、経済、国際情勢、文化、スポーツなど世の中の動きが短時間で俯瞰できること。だからといって新聞を隅から隅まで読んでいると、時間がいくらあっても足りない。毎日10紙に目を通す池上彰は、朝は自宅に届く新聞8紙の「見出し」にざっと目を通した後、外出先で2紙を購入してチェックし、気になった記事を夜寝る前に読み込むそうだ。「飛ばし読み」が基本であり、トータルすると1時間程度だという。

 一般のビジネスパーソンが何紙も購読する必要はないが、「新聞は少なくとも2紙以上読まなければ危険」というのが2人の共通意見だ。かつてはどの新聞も似たりよったりの内容だったが、近年は新聞ごとに報道のスタンスが大きく異なる。安倍政権に好意的な保守系と安倍政権に対立的な新聞があり、A紙では大々的に報道し、B紙では掲載すらしていないということもある。1紙だけ読んでいると、そうした報道のバイアスに気づくことができないため、「1紙は保守系、もう1紙はリベラル系」というように論調の異なる新聞を読むといい。

 雑誌も新聞と同様に世の中の風潮やトレンドを知るのに役立つ。池上彰も佐藤優もいくつかの週刊誌に連載を持っているが、どの雑誌に勢いがあるかの指標となるのがスクープ記事だ。ただし、気をつけたいのが「情報の信頼度」である。基本的に記者は情報の「裏をとる」ものだが、「週刊誌の記事はインパクトありき」なため、あらかじめ記者がストーリーとオチをつくり、ただ言質をとるために取材しているケースがあるからだ。記事の内容を鵜呑みにしないようにして読むべきだが、完全に信用できないと一刀両断するもの早計だ。「自分が信頼できる書き手の記事を中心に読む」というのが週刊誌との王道の付き合い方だと佐藤優はいう。

 ビジネスパーソンがチェックすべき雑誌というと経済誌とビジネス誌がある。その特徴は「特集主義」で編集されていること。シェールガスやピケティが世の中で話題になりはじめた初期段階で特集されるなど、書籍よりも情報が速く、雑誌はページ数か決まっているため、内容も簡潔でわかりやすい。池上彰が毎号目を通す週刊誌が8誌で月刊誌が10誌、佐藤優は週刊誌が11誌で月刊誌が21誌だというが、一般のビジネスパーソンは「興味がある記事や特集があれば購入する」くらいでいいだろう。

 新聞も雑誌も読まず、情報はネットのみという人も少なくない。しかし、ネットはむしろ上級者のメディアだと佐藤優は指摘する。たしかにネットの情報は「速報性」に優れ、誰でも情報発信できるというメリットはあるものの、新聞や雑誌のように作り手が真剣にお金と人手をかけて作っているわけではない。「編集」「校閲」という2つの機能が働いていないため、情報の真偽が見極めにくく、「ノイズ過多」になっている。
むしろ時間を浪費したり、ノイズ情報に惑わされる危険性が高く、そもそも元をたどると一次情報は新聞ということがほとんど。それだったら最初からお金を払って新聞や雑誌を読んだほうが効率的だというのが二人の考えだ。

 さらにネットの大きな問題は、特定のものだけが大きく見えたり、別のものが見えなくなる「プリズム効果」があること。たとえばツイッターは自分が選んだ人の言説しかフォローしていないため、自分と違う意見や考え方がネット上に存在していても目に入ってこなくなる。ネット上には非常に多くの情報が溢れているため、「視野が広くなる」と錯覚しがちだが、実際は視野を狭め、偏見を増長させる危険性をはらんでいる。

 新聞、雑誌、ネットのニュースや記事を深く理解するために重要になるのが、土台となる基礎知識だ。いわば「急がばまわれ」であり、地道にコツコツと書籍を読むことでしか基礎知識は身につかないものだという。

 いい本に出合うためのコツは、「本をたくさん買うこと」。池上彰は毎日書店に足を運び、「迷ったら買う」を原則としている。もちろんハズレの本もあるが、本から得られる情報は「安い」と佐藤優はいう。人から情報を得ようとすると食事代や謝礼がかかるものだし、セミナーや講演会で高い受講料を払って90分の話を聞いたとしても、書籍のページ数に換算すると数十ページ分にすぎない。

 ただし、2人とも買った本を全部通読しているわけではない。知りたいテーマに沿ってまとめ買いした本を何冊か読んでいくと、それら関連書籍のもとになっている「タネ本」(基本書)がわかるという。池上彰はまずこのタネ本を熟読し、内容が薄い関連本は速読で済ませるそうだ。ただし、どの本も「はじめに」と「おわりに」には必ず目を通す。一方、毎月300冊以上を読む佐藤優は、1冊5分の「超速読」と1冊30分の「普通の速読」、3回は読み込む「熟読」の3パターンの読み方を使い分けているという。

「読みこなす技法」を語り合った本書だが、その根底にあるメッセージとは、知は「武器」であり「楽しみ」でもあるということ。かといって本ばかり読んでいないで、ときには酒の席に参加して人から情報を得ることも大切だとしている。ひとつに偏りすぎずバランスよく情報を収集していくことが肝心だ。

『僕らが毎日やっている最強の読み方』3つのポイント

●新聞や雑誌で世の中の動きを捉え、書籍で深掘りしていくのが基本

●ニュースを理解するには、書籍や教科書で培った「基礎知識」が必要

●ひとつのメディアに偏りすぎず、バランスよく「読む」

文●大寺 明