『出世する人は人事評価を気にしない』要約まとめ

出世する人は人事評価を気にしない

仕事は速くて正確で、周囲からも信頼されている。そうした人が課長から部長、取締役へと出世していくものと思われているが、実はそうでもないらしい。なぜなら会社人生の中で競争のルールが2回変わるからだ。この変化に気づかなければ、いくら成果を上げても部長以上の役職には就きづらいという。経験豊富な人事コンサルタントが人事の秘密を明かします!

 著者は人事コンサルタントとして、これまで130社以上の企業で人事に携わってきた。そうして見てきた経営幹部の若い頃(といっても30代後半~40代)には共通点があったという。それはタイトルにもあるように、人事評価を気にしていなかった、ということ。さらにその背景には、仕事の進め方や人付き合いの方法、プライベートで共通する行動があったという。

 まだ役職についていない若い世代は、人事評価制度のルールを知っておくべきだと著者は考えている。なぜなら人事評価制度とはビジネスというゲームのルールのようなもの。ルールを熟知して使いこなせれば、勝利も得やすくなるはずだ。ただし、ある役職以降はこのルールが適用されなくなる。これが出世の秘密でもあるのだ。

 評価の基準は、まず結果を出すこと。あるいは社内で評判がよかったり、上司に気に入られている人が出世しやすいと思われがちだが、それは課長手前までの話。なぜなら会社生活の中で競争のルールが2回変化するものだからだ。最初の出世にあたる主任や係長への昇進は、当然のごとく今担当している仕事の評価結果に基づく。しかし、課長になると、別の昇進基準が用いられるのだ。それが経営側の人間として管理職の考え方ができるか否か。つまり、ただ仕事ができればいいという基準ではなくなるのだ。

 一昔前ならば、課長を10年やれば、年功序列で自然と次長や部長に昇進するものだった。しかし、近年は「職務主義」をとる企業が増え、優秀な課長が部長になるとは限らない。部長は複数の事業ユニットを束ね、中長期の計画を策定する職務として捉えられ、部長の仕事をするに相応しいと判断された人が部長に選ばれるようになったのだ。

 この課長から部長以降の昇進が2回目のルール変化だ。課長の管理職までは経営層に「使われる側」の立場で出世競争が行われる。チームワークや責任感といった評価基準は、実はすべて「使われる側」の基準なのだ。逆に言うと、この基準は「使う側」には求められない。ワンマンでカリスマ的な経営層の方が成功している場合が多々あり、必ずしも部下に慕われているとは限らないように、パーツとしての優秀さとは別の基準が適用されているのだ。

 そもそも経営層はそんなに大勢はいらない。しかし、その事実を伝えてしまうと、やる気がそがれてしまうため、毎年の昇給や賞与の増減で優秀さを求め続けるというのが人事評価制度の仕組みなのだ。

 では、「使う側」へと出世するためには何が必要かというと、ビジョンや戦略性といった「視点の高さ」になってくる。たとえば、会社の存在意義を常日頃から考えていたり、競合他社を見据えていたり、あるいは、予想もしない業界に参入できないかといった発想を持った人だ。

 とても優秀だけれど問題児。品行方正で平均よりは優秀。こんな2人の候補者がいた場合、経営層は前者を経営層への昇進候補に選びたがるものだという。あるワンマンの権化のようなオーナー社長の会社で取締役にまで出世したのは、社長に対して平気でものを言う2人の部長だったそうだ。この2人は極端に高い評価と低い評価を繰り返し、平均的には他の管理職より低い評価だった。にもかかわらず、社長に「俺がいないときには2人のどちらかに相談しろ」とまで言わしめた。自分に似ているタイプだからこそ彼らを信頼したのだ。

 しかし、「戦略」や「ビジョン」が大事だとわかっても、具体的にどうすればそれが身につくのかはわかりづらい。そこで著者は、出世している人に共通する二つの行動パターンを示す。

 第一に、つながりを大事にしている。
 第二に、質問を繰り返している。

 こうした行動をとっていると、ビジョンや戦略性、人材マネジメントといった経営層に求められる資質が自然と手に入りやすくなるという。

 また、経営層になる人の共通点に、仕事とプライベートを区分しない生き方をしていることがある。それが「人事評価を気にしない」ということにもつながるのだ。人事評価を気にしないでも、全力で仕事をしているので低い評価がとりづらくなり、給与も増えるので経済的、精神的に余裕がある。さらに仕事に打ち込んだ方がストレスは減っていくものだという。

 人事評価の結果が良くなれば給与も増えるし、社内での存在価値も高まる。そのため多くの人が人事評価を気にして、評価する側の上司に気に入られようとして行動するわけだが、それでは「使われる側」の課長止まりなのだ。むしろ、上司に言いにくいことでも、自分が正しいと思う意見をはっきり言える人の方が、ゆくゆくは執行役員や取締役といった経営層に出世しやすいものだという。

「出世」というと、課長から部長、部長から取締役へと社内で昇進していくものだと考えられがちだが、今の時代はそれだけが出世ではない。起業して成功する人もいれば、転職してステップアップするケースもある。そうした選択肢を持つためにも、会社にいる間に一個人として人とのつながりを築き、人的資本を蓄えておくべきだと著者はアドバイスする。

『出世する人は人事評価を気にしない』3つのポイント

●会社生活の中で競争のルールは2回変化する

●「使われる側」の評価基準と「使う側」の基準がある

●上司の顔色をうかがわない人の方が、ゆくゆくは出世する

文●大寺 明