『一生を賭ける仕事の見つけ方』要約まとめ

人生の大半を費やすのが「仕事」です。仕事を生活の糧を得るための「ライスワーク」と捉えるか、自分の夢や目的を実現するための「ライフワーク」にするかで、人生の充実度はまったく変わってきます。だけど、「一生を賭けてまで達成したい何か」が見つからないという人も多いはず。起業家の登竜門と呼ばれる「モーニングピッチ」発起人の著者は、仕事をライフワークにするためには、自分が心の底からやりたいと思える「ミッション」が必要だと言います。それは、どうやったら見つけられる!?

 著者は世界的な監査法人トーマツグループの「トーマツベンチャーサポート株式会社」で精力的にベンチャー企業の経営支援をしている。さまざまなベンチャー企業を見てきた著者がいう「一生を賭ける仕事」とは、自分が本当にやりたいこと、自分にとって大切なことから生まれるライフワークである。そのために必要なのが「ミッション」だ。

 しかし、多くの人は人生を賭けるに値する「ミッション」がわからずにいるだろう。そこで最初のステップが「原体験」を見出すこと。著者の原体験としては、中学2年のときに父が脱サラして旅行代理店を開業し、経営で苦しんでいる姿を間近で見てきたことが大きかった。そんなとき、図書館の「職業本」コーナーで「独立事業者をサポートする公認会計士」という見出しを見て、将来、公認会計士になろうと誓った。

 しかし、当時の公認会計士試験は合格率8%台という超難関。3度連続で不合格となり、4度目でついに合格するわけだが、あらためて振り返ると、万全を期しながら不合格になったときの絶望感や、体調を崩すほどのプレッシャーなど、それは人生のどん底だった。合格後は希望どおり「監査法人トーマツ」に就職が決まり、人生は一転するはずだったが、思い描いていたようなベンチャー支援の業務がない……。

 そこで著者は平日の夜と週末を利用して個人的にベンチャー企業の経営者を訪ね歩くようになる。手弁当でそうした活動を3年も続けるうちに、トーマツベンチャーサポートという法人が立ちあがった。まさに著者がやりたかったベンチャー企業を支援する新規事業であり、当初は著者ひとりだったが、少しずつ人が増え、今では100人を超すチームとなっている。

「ミッション」のタネは、原体験の「山」か「谷」のどちらかにあることが多いという。そして「山」と「谷」の振幅が大きい人ほど、ミッションを生きる原動力も強くなる傾向がある。起業をするような人たちはみな強烈な「原体験」と高い「熱量」を持っているものだという。著者の場合、公認会計士試験に合格するまでの長い長い「谷」の原体験が、ミッションを遂行する原動力になった。

 この社会には、解決すべき課題やさまざまなニーズが存在する。それは誰かが挑むべきテーマだが、必ずしも自分が挑まなければいけないわけでもない。それでもなお挑まなければ気がすまないテーマこそが、自分の「ミッション」になる。これを著者は「山登り」にたとえる。

 その際、気をつけたいのが5年、10年は取り組めそうな山(テーマ)を選ぶこと。それだけの長い時間になると、心の底から納得できるものでなければがんばり続けることは難しい。そして、状況に応じて登り方は変えてもいいが、「最初に登ろうと決めた山」は変えてはいけないという。

 ベンチャービジネスの世界では、事業がすぐに売上や利益につながることはきわめて稀だ。しばらくは耐え忍ぶ時期をどうにかしのぎ、浮上のきっかけをつかむことができたベンチャーだけが、成長企業のスタートラインに立てる。だからこそ、最初に登ると決めた山を変えてはいけない。

 本書では起業当初の苦しい時期を乗り切るために求められる、覚悟や心構えを「マインド」と呼ぶ。このほか、事業を軌道に乗せるためには、ビジネスモデルを組み立てて遂行する「経営スキル」と、組織内外に豊かな人脈を持つ「ネットワーク」の3つの資質が起業には求められるという。

「ビジネスモデル」とは、自分のミッションやアイデアからお金を生み出す戦略や計画といったロジックを指す。それは自分たちだけのためにあるのではなく、むしろミッションに共感・賛同し、応援してくれる協力者を募るためのものでもある。出資を募るためには、まず「マーケット」に可能性があり、そこでどう「差別化」していくかが問われ、さらにチームのメンバーの力や本気度が問われてくる。

「ネットワーク」は自分の「熱量」を保つためにも大切。著者の場合、新規事業が軌道に乗るまで苦しい時期が続いたが、同じように「熱量」の高い人と会い、ミッションを語り続けることで自分を鼓舞してきた。そしてミッションは人に語れば語るほどブラッシュアップされ、自分の「熱量」も高まる。さらには共感を集めて人を巻き込んでいくことができる。

 ミッションの伝え方としては「My―Our―Now」という3つのポイントを意識するといい。自分のミッションを語っているだけだと「My Story」だが、これを聞き手の視点に合わせて課題や価値観を共有すると「Our Story」になり、重要度が高まる。そして、「なぜ今やらなければならないのか(Now)」を示すことが肝要。今すぐ行動に移す必要のないことに人はなかなか重い腰を上げない。重要度と緊急度を兼ね備えたテーマだけが、人に行動を促すことができるのだ。

 世の中にはスキルやキャリアを高める方法が溢れているが、それだけでは他の「誰か」や「何か」によって代替される可能性がある。しかし、自分にしか成しえないミッションを歩む人生は、他の誰にも何にも代替されることはない。「キャリア志向」から「ミッション志向」へ――。これが本書のメッセージの核心部分だ。それは、「ライスワーク」から一生を賭ける「ライフワーク」へのチェンジと言うこともできるだろう。

『一生を賭ける仕事の見つけ方』3つのポイント

●自分の「原体験」から「ミッション」を見出す

●「ミッション」を語り続け、熱量を高め、人を巻き込んでゆく

●「キャリア志向」から「ミッション志向」の生き方へ

文●大寺 明