『生きている会社、死んでいる会社』要約まとめ

いくら有名な大企業でも、社内に閉塞感が漂い、活気が感じられなかったりするものです。一方、創業間もないベンチャーのほうが、俄然やる気と活気を感じることがあります。30年にわたって経営コンサルタントの仕事をしてきた著者は、会社を「生命体」になぞらえ、「生きているか/死んでいるか」で判断するそうです。そこで問われるのが、“新陳代謝”を繰り返し、“創造”し続けていること。会社に「生命体」としての輝きを取り戻すには?

 欧州最大の経営コンサルタント会社「ローランド・ベルガー」の日本法人で会長を務める著者は、会社は「生き物」であり、経営において本質的に大事なことは、会社が「生きている」ことだと指摘する。それは数字だけで安易に判断できるものでもないという。

「生きている会社」とは、ただ存在すればいいということではなく、未来を切り拓こうとする明確な意思を持ち、挑戦と創造を続ける会社のことを指す。そのための鍵になるのが「新陳代謝」だ。私たちは創造やイノベーションばかりに目を向けがちだが、経営にとって大事なことは、「事業・業務・組織・人」の4つを見直し、新陳代謝を繰り返していくことだという。逆に「死んでいる会社」は著しく代謝が悪いものなのだ。

「会社の目的」は利益の追求だと考えられがちだ。それはたしかに大前提ではあるが、目的ではないと著者は考えている。では、会社の真の目的が何かというと、「社会に必要とされる」ことだという。事業が社会に必要とされ、その使命が果たせていれば、自ずと利益は上がる。そして、社会に必要とされる会社が為すべきことが、「価値の創造」だ。

 しかし、苦労して生み出した独自価値もやがては陳腐化し、競合が参入することで独自性は失われていく。そのため、会社が長期間存続し、発展し続けるには、独自価値を連続的、継続的に創造し続けなければならない。だからこそ、会社は挑戦し続ける必要があるのだ。

 一部の人だけが挑戦するのではなく、挑戦する気概を「会社の文化」にまで高めなければ、「生きている会社」にはなれない。理想主義だと切り捨てることは簡単なことだが、私たちに今もっとも欠けているのは、「挑戦―実践―創造」という理想なのだ著者は指摘する。

 なぜ「創造し続ける」ことが難しいかというと、会社は「老いる」からだ。その最大の要因のひとつが、現状維持でいいと「安住」し、創造よりも「管理」に軸足が移っていくこと。会社誕生時の「デーワン」は、少人数のため管理する必要もないが、会社が成長するとともに管理部門が肥大化していく。コスト増につながるだけでなく、形式重視、前例踏襲といった「官僚主義の蔓延」を招き、会社にとって深刻な病になっていく。そうすると誰もリスクをとらなくなり、社員たちのチャレンジする気持ちも萎えてしまうのだ。

「生きている会社」は、喜怒哀楽が実に豊かだという。困難に挑戦し、成功すればみんなで喜び、うまくいかなければみんなで落ち込む。ときには意見が衝突し、怒りも生まれるが、それもまた人間臭い。一方、「死んでいる会社」は無気力、無関心が蔓延し、無表情なものだという。会社を「生命体」として捉えたとき、「人」こそが会社の根源であり、その根っこを元気にすることが経営者の最大の仕事だ。

「生きている会社」を作るために必要な条件は、①熱(ほとばしる情熱)、②理(徹底した理詰め)、③情(社員たちの心の充足)の3つである。多くの日本企業が抱える根本的かつ致命的な課題は、「熱の消失」だという。普段あまり意識することはないが、「会社が存在する目的」はとてつもなく重要であり、会社が「熱」を帯びるためには、個人のほとばしる思いという「種火」が不可欠。それが他者へと広がり、組織の中に充満していくのだ。

 しかし、熱い気持ちだけが空回りし、無為にエネルギーや資源、時間を浪費しても、創造にはつながらない。熾烈な競争に打ち勝ち、「創造」という目的を果たすには、ときに冷徹なほど「理詰め」がなくてはならない。「熱」は主観によってもたらされるものだが、戦略は客観によって担保され、合理的な視点で吟味する必要があるのだ。

 そして、「情」とは、人の「心」のことを指す。会社は生活の糧を得るためだけではなく、会社で働く一人ひとりの「心」を充たさなければ、「生きている会社」とは言えない。そのためには「やりがいの創出」と「承認欲求の充足」という2つの条件を充たすことが大切。やりがいを創出するもっともシンプルな方法は、仕事を「まかせ切る」ことだという。その成果やプロセス、それによる自分の成長が他者から承認されたとき、働く人の「心」が充たされる。

「熱」「理」「情」の3つの条件は、それぞれ独立しているように見えるが、実は密接につながっている。「熱」を帯びるからこそ、それを実現するために「理」にこだわる。そして、「理」の探求の行き着くもっとも合理的な道が、働く人の「心」を充足させることなのだ。そして、充たされた「心」がまた新たな「熱」を生み出し、挑戦と創造につながっていく。どれかひとつが欠けても「生きている会社」にはなりえない。この3つの条件を整え、つなげていくことにマネジメントという仕事の本質がある。

 本書が伝えたかったことは、会社は「生命体」であり、「それはいったいどんな生き物なのか?」ということ。規模や歴史、収益性や名声などではなく、会社にとって本当に大事なことは、「生命体」としての輝きであり、日本に「生きている会社」を増やすことに著者の使命感があるようだ。

『生きている会社、死んでいる会社』3つのポイント

●「生きている会社」は、「挑戦―実践―創造」を続けている

●会社は「生命体」であり、新陳代謝をしないと老いていく

●「情熱・理詰め・心の充足」の3つが、「生きている会社」の条件

文●大寺 明