『「ない仕事」の作り方』要約まとめ

自伝的マンガ『アイデン&ティティ』や「大島渚」のミュージシャン活動、「ブロンソンズ」の人生相談や「勝手に観光協会」、そして「ゆるキャラ」ブームの火付け人……結局、みうらじゅんの本業は!? 本人は「イラストレーターなど」としているが、もはや「など」だけが肩書きだと感じているそうだ。初のビジネス本で明かされるみうらじゅんの仕事術とは?

 1980年にマンガ家デビューし、昨年35周年を迎えたみうらじゅん氏。あらためて自身の仕事を振りかえってみると、それは、これまでに「ない仕事」ばかりだった!? なかでも代表的なのが「ゆるキャラ」だ。誰も着目していなかったご当地マスコットを「ゆるキャラ」と命名し、今では一大産業になった。

 そのきっかけともなったのが、1997年の新語・流行語大賞トップ10入りした「マイブーム」。本来、「ブーム」とは多数の人が同じことに夢中になる現象のことで、一人のブームなど「ない」。著者が面白いと思ったものが世の中で話題になることが少なかったため、自分からブームを仕掛けていこうと考えたことが元々の意味合いらしい。

 そのためには、ネーミングからメディア露出、営業まですべて一人で行わなければいけない。こうした「マイブーム」活動を著者は「一人電通」と呼ぶ。

「ない仕事」の出発点は、まず名称とジャンルを与えること。著者のネーミングの多くは矛盾した言葉で作られている。AとBを合わせた造語の場合、どちらか一方がもう一方を打ち消すようなネガティブなものにするのだ。たとえば日本各地の奇祭を「とんまな+まつり」とした「とんまつり」、もらっても嬉しくないお土産を「嫌な+土産物」とした「いやげ物」など。

 人に興味を持ってもらうためには、絶対にこれは面白いと自分自身が強く思い込まなければいけない。そこで著者は自身を洗脳すべく、興味の対象を大量に集め、好きになるための「無駄な努力」をする。

 これを書籍化したりイベントに昇華して初めて仕事になる。ここに知られざる著者の努力がある。当然「ない仕事」なので、先方から依頼が来ることはまずない。そこで著者は自ら雑誌やテレビ局に持ち込みをかけるのだ。

 ここで鍵をにぎるのが「接待」だ。普通は出版社やテレビ局が作家やタレントを接待するものだが、著者の場合は逆で、相手を酒の席に招いてごちそうする。そして、酔っていい調子になった頃を見計らってプレゼンをするのだ。

 酒を酌み交わせばおのずと距離も近くなる。ざっくばらんに会話ができるようになったうえで、あの囲み記事を1ページにしてはどうだろうか?とネタを広めるための「見せ方」を交渉していく。「接待」こそ若いサラリーマンでも習得できる武器なので、ぜひ鍛えるべきだと著者はアドバイスする。

「一人電通」活動によって仕掛けを作り、実際にそれが「ブーム」になる転換期は「誤解」されはじめたときだという。最初は当事者に怒られたりしていたのが、いつしか「日本独自の着ぐるみ文化に光を当てた」といった深読みをする人が増えてくるのだ。こうした「誤解」こそブームの正体。これを促すべく、著者はあえて理論づけをせず、人に誤解されるような「余白」を残しておく。

 大量にモノを集めてマイブームを仕掛ける著者の仕事から、コレクターと勘違いされることもしばしば。もちろん収集癖もあるが、著者の本質的な目的は、集めたものを再構成して違う世界を人に見せること。また、自己主張の強い人間のように思われがちだが、実は自分のことはどうでもよく、あくまで著者の主語は「私が」ではなく、「海女が」や「仏像が」だ。これまでやってきた仕事はすべて好きな対象をプロデュースすることであり、それは“自分をなくしていく”ことなのだ。

 「ない仕事」を作る著者のターニングポイントになったのが般若心経だ。あるとき著者は駐車場の看板に「空あり」を見つけた。「ないもの」が「ある」。これほど簡潔に般若心経を言い得た言葉はないと感じ、般若心経の278文字すべてを街中で探して撮影する「写経」ならぬ「写真経」を始めた。そして、約5年をかけて『アウトドア般若心経』を完成。これ以降、「ない仕事」に自覚的に取り組むようになった。

 自分で作り、自分でツッコミ、人が驚き振り返る。要するに「ない仕事」とは依頼もないのに勝手にやった仕事のことだという。その原点ともいえるのが小学校1年のときに始めた「怪獣スクラップ」。怪獣の写真を切り取って再構成して貼り付けていくという作業で、いわば「一人編集長兼一人読者」である。

 京都に住んでいたこともあり、やがて好きなものの対象は「仏像スクラップ」に移行。仏像のかっこよさをなんとか周囲に伝えようとするも、友だちにはウケず、話が合わない。しかし、流行っているものは、いずれ流行らなくなる。逆に仏像は「まだヤングの間で流行っていない=これからブームになるかもしれない」とわくわくしていたそうだ。

 それが時を経て著者がイラストを担当する『見仏記』(文・いとうせいこう)に結実。仏像を「色っぽい」「かっこいい」とストレートに表現し、仏像鑑賞の堅くて真面目なイメージを変えてしまった。これがシリーズ化されてロングセラーとなり、その後の仏像ブームのきっかけとなった。

 これを子どものときからの「好きの貯金」だったと著者は考える。長く時間をかけてコツコツやり続けることで、自分を徐々に洗脳して「好き」を極める。キープオン・ロケンロール! やり続けることが大切だ。

『「ない仕事」の作り方』3つのポイント

●「一人電通」活動で仕事にすることが「マイブーム」

●大量に集める「無駄な努力」で自分を洗脳する

●長くやり続けることで「好き」を貯金する

文●大寺 明