『ハイパフォーマー 彼らの法則』要約まとめ

ハイパフォーマー 彼らの法則

長時間労働もいとわず、いつも忙しそうにしている人がいる。一見、誰よりも会社に貢献しているように見えるが、実際はそうでもなかったりする。むしろ仕事ができる人ほど、余裕を感じさせる場合が多い。これが仕事における悪循環と好循環。そのままでいると、どんどんその差は広がっていく。どうすれば好循環に入ることができるだろう?

 仕事において常に高い成果を上げている人を本書では「ハイパフォーマー」と呼ぶ。人事・組織コンサルタントとして長年に渡ってハイパフォーマーを分析してきた著者は、ある特徴に気づかされた。ヒアリングのために時間調整をする際、できる人は「暇です」と言い、普通の人は「忙しい」と言う傾向があるというのだ。

 いつも忙しそうにしている人ほど成果がかんばしくなく、余裕を持って仕事をしている人ほど高い成果を上げている。この事実から、著者は悪循環と好循環にわけて分析を進める。循環構造なわけだから、いずれも強化されつつ継続されることになるため、ローパフォーマーの人はここから脱することを意識すべきだろう。

 好循環に入るための鍵となるのが失敗のとらえ方だ。世の中に流布する「成功法則」では、ポジティブ思考で失敗を乗り切ることが奨励されるが、それが好結果を招くとは限らない。それ自体は否定すべきものではないが、ともすると「長時間労働も前向きに頑張ろう」と考えてしまいがちだ。また、失敗したとき精神的ダメージを減らそうとして、過去を振り返らないようになってしまうため、次も同じことを繰り返してしまいがちだ。

 これに対し、むしろ求められるのは長時間労働の原因をつきとめ、その状況を打開しようとする考え方であり、失敗したときにそこから教訓を学んで改善しようとする発想だ。ハイパフォーマーは現実に即したネガティブ思考を前向きに活かそうとするものなのだ。

 常に忙しそうにしている人は、土壇場になって問題を解決しようとする傾向がある。これが悪循環を生み出している。常に問題が発生してから対処しているため、付け焼刃的になり、業務が遅れる。そのため時間的にも気持ち的にも余裕がなくなり、品質的に必要最低限に留まり、ミスも多くなる。結果、顧客の信用も失われる。土壇場まで対応に追われているため、次の業務にとりかかるのが遅くなり、問題が発生する予兆も見逃してしまう……。

 逆にハイパフォーマーの人は着手するのが早い。事前にどのような問題が起こりうるかをあらかじめ想定し、対処法を用意しているため、実際に問題が発生した際、スムーズに対処でき、次の業務でも同じように早めに着手することができる。先に先手を打っておくことで余裕が生まれているのだ。

「女性管理職300人調査」でも、エラくなる男を見極めるポイントが「いつも締め切りよりも前倒し」が86.7%であったのに対し、できない男を見極めるポイントが「ギリギリの追い込みで勝負」が94.7%という結果を示している。

 ローパフォーマーの人は自分の能力を過信しがちな傾向があるという。人から能力がないと思われたくないため、先輩や同僚に教えを乞うことをせず、仕事を一人で抱え込んでしまいがちなのだ。コミュニケーションが不足しているため周囲の協力が得られず、問題解決にも時間がかかるという悪循環に入ってしまうのだ。

 逆にハイパフォーマーの人は、たとえ能力的に万全でなかったとしても、周囲の意見を聞き、協力を得ながら進めていくのでかえって仕事が早い。それが信頼感にもつながり、人から様々な情報が入ってくるという好循環にある。他者と良好な関係を築こうとする「親和欲求」が好循環の起点になっているのだ。

 これらは結果重視とプロセス重視の違いでもある。ローパフォーマーの人ほど効率を求め、業績に直結しない時間を良しとしない傾向があるという。一方、ハイパフォーマーの人は失敗を成長機会として捉え、自らのモチベーションを上げていく。部下の業績が上がらないとき、上司は管理を強化して効率化しようとしがちだが、むしろ逆効果だそうだ。人は期待に応えようとして頑張るものであり、管理すればするほど自発的に行動を起こすことを辞めてしまう。管理しすぎることが悪循環に加担することになっているのだ。

「とにかく、やってみなければ分からない」というのがハイパフォーマー共通の口癖だという。たとえうまくいかない可能性があったとしても、真っ先にアクションを起こし、早く学びとる。そこで自分のスキルや知識の限界に向き合うことが好循環へとつながっているのだ。最初に綿密に計画して着実に進めようとする完璧主義者よりも、状況に応じて軌道修正していく人の方がビジネスの世界ではうまくいくものらしい。

 こうした経験が蓄積されることで「困難に打ち勝つ力」となり、より一層、好循環が強化されていく。「やる気が出ない」と言う人がいるが、まずは行動が先。行動せずにやる気が出ることは絶対にない。少しでも前進しているという実感が、やる気を持続させ、次の展開を拓いていくのだ。

 こうして好循環に入っていくと、ストレスも感じにくくなり、いいアイデアも生まれるようになる。だから、ハイパフォーマーの人はいつも楽しそうに仕事をしているのだ。

『ハイパフォーマー 彼らの法則』3つのポイント

●いつも忙しいのが悪循環、余裕があるのが好循環

●失敗を成長機会として捉え、教訓を次に生かす

●考えているよりも、早く着手して、早く学ぶ

文●大寺 明