『0秒リーダーシップ』要約まとめ

「リーダーシップ」というと、マネージャー職や経営陣といった立場の人に求められるものだと考えがちだけど、日本在住16年になるポーランド人のピョートル氏は、「年齢、肩書、性別、国籍、どれも関係ありません」と語り、新人社員でもリーダーシップは発揮できるといいます。モルガン・スタンレーやグーグルといった世界的企業で長年にわたって人材開発に携わってきたピョートル氏が考える「リーダーシップ」とは、自ら手を挙げて動き出すための力。それは、日本のビジネスパーソンに欠けている力かもしれない。

 かつての日本企業では、優れたトップが組織全体を引っ張ることで時代の変化に対応してきた。しかし、テクノロジーの進歩やグローバル化によって指数関数的に世の中の変化が速まっている今の時代において、誰か一人のリーダーの指示を待つ仕組みでは、もはや対応できなくなっていると著者は指摘する。そこで求められるのが、チームのメンバー一人ひとりが瞬時(0秒)にリーダーシップを発揮する組織のあり方だ。

 著者が考える「リーダーシップ」とは、従来の自分の枠を超えて、新たな一歩を踏み出すこと。プロジェクトや新規事業を立ち上げるといったことだけでなく、知らない人に声をかけたり、みんなと違う意見を口にするといったこともリーダーシップの範囲になるという。

 リーダーシップを別の言葉に置き換えると「影響力の行使」となる。たとえば会議中に誰かの発言によって議論の流れが変わったとしたら、その発言をした人はリーダーシップを発揮したといえる。日本人はともすると黙って波風を立てないことを美徳と考えがちだが、自分が感じたこと、思ったことを率直に口にするところからリーダーシップは始まるのだ。

 リーダーシップの基本となるマインドは「優しさ」「厳しさ」「茶目っ気」の3つ。まず相手のためを思って行動する「優しさ」が最初のステップになる。しかし、それだけでは信頼関係は築けない。ときには仕事において甘えは許さないという「厳しさ」も必要だ。ただし、これだけでは堅苦しく単調な関係になりがち。ときにはジョークのひとつでも言って相手の心をほぐし、いろんな視点から物事を見つめ直すといい。

 リーダーシップとは「空気を読んで、空気を壊す」という一連のアクションだという。暗黙の了解やチームの雰囲気といったものをあえて破壊して前に進めるのがリーダーの役割だからだ。そのため早く昇進する人やスピーディに結果を出す人は、敵が多いのも事実。しかし、どんなに嫌われても結果を出せば、最後はみんなついてくるはず。いつでも辞めてやるくらいの強い覚悟をもって挑むといいだろう。

 リーダーシップを発揮してどんどん成果を上げる人は勇気や覚悟があるだけでなく、とてもアクティブでイノベーティブだ。近年は企業が生き残る生命線として、既存の製品やサービスの価値を無効化する「破壊的イノベーション」が求められ、イノベーティブな人材のニーズが高まっている。しかし、どんなにイノベーティブな人でもまったくのゼロから何かを生み出せるわけではない。一見無関係に見えるものを組み合わせることで新しい価値を生み出しているのだ。

 斬新な組み合わせを思いつく創造力に加え、それが一見愚かなアイデアでも、やると決めたら何としても実現させる実行力が大切だ。そのためには人を説得し、巻き込み、決断し、先導していくプロセスが欠かせない。その際、有効なのが「プロトタイプシンキング」だ。

 いきなり完成品を提示するのではなく、プロトタイプの段階で見せることで反応を集め、それをベースに試行錯誤を重ねる方法である。現物を使ってデモンストレーションをしたほうが相手を説得しやすく、結論も速い。グーグルでは「Fail Fast(早く失敗せよ)」という言葉がよく使われるという。その都度、軌道修正を図っていけば、大きくコケることがないからだ。自分の作業をムダにせず、最短距離でゴールを目指す方法でもあるのだ。

 現代は最新テクノロジーの動向を無視してビジネスを展開することは難しい。テクノロジーを味方につけるためには、普段からテクノロジーの情報をアップデートしておく必要がある。リーダーシップを発揮するには、常に学び、学んだことをすぐに応用する機敏な動きも欠かせない。「学ぶ」というと、日本人によく見られるのが一方的な受け身の姿勢だが、社員同士が教え合う仕組みや、質問しやすい社内文化をつくるといい。

 グーグルのようなハイテク企業にはIQが高く、専門能力に優れている人が多いが、頭角を表す人はEQの高い人だという。これは自己や他者の感情を認識して上手にコントロールする能力で、「心の知能指数」とも言われる。一時の感情に流されず、いつでもブレずに決断できることがリーダーの大事な資質のひとつなのだ。

 まわりからリーダーと認められるためには「リーダーらしさ」も必要。それは言動や立ち居振る舞いから自然と感じられるものだが、自分が拠り所とする価値観を認識できている人は、自然とそれが態度に表れるものだという。そのためにも普段から自分がこうありたいという姿と、自分の言動を一致させるように気をつけたい。言行一致で裏表のない人のほうが一緒にいて安心でき、信頼関係も築きやすい。

 まわりの人を動かすためには、ストーリーテリングの力も大切だ。スピーチでは大事なメッセージを一つか二つに絞り、それを確実に伝えるためにストーリーを組み立てること。ただし、「今期の売上目標は○○億円です」といくら数値目標を掲げても人は動かない。最後にモノを言うのは、その人の価値観や信念だという。リーダーがどんなストーリーを描くかで、チームの動きが変わり、結果も大きく変わってくるはず。

 かつての日本は、生産率を上げるために社員に勤勉さと服従を求め、さらに知能が追加の条件となった。しかし、これからはAIなどの自動化が進み、さまざまな仕事が機械に取って代わられる時代になっていく。それでも人間にしか発揮できないのが情熱と創造力と率先であり、それこそが「リーダーシップ」なのだ。

『0秒リーダーシップ』3つのポイント

●年齢・肩書・性別・国籍に関わらず、リーダーシップは誰でも発揮できる

●「空気を読んで、空気を壊す」のがリーダーの役割

●リーダーシップとは、自分の枠を超えて新たな一歩を踏み出すこと

文●大寺 明