『絶滅企業に学べ!』要約まとめ

「企業の寿命は30年」と言われているけど、2014年の倒産企業の平均寿命は23.5年。自分の仕事人生のほうがずっと長い。できるだけ長く一つの会社で働くには大企業のほうがよさそうだが、かつて栄華を極めながら倒産した大企業も数知れず。「反面教師」と言うけれど、成功例よりも過去の失敗例から学ぶことは多い。企業を長生きさせるために必要なこととは?

 かつて地球上を支配した巨大な恐竜も6500万年前に絶滅した。同様に、一時代を築きながら時代の変化や不運が重なり絶滅に至った巨大企業がある。本書は「温故知新」と「反面教師」をキーワードに絶滅企業10社から未来へのヒントを見つけようとする。

 大手レコード会社に反旗を翻し、小室等、吉田拓郎、井上陽水、泉谷しげるら4人の現役ミュージシャンによってフォーライフ・レコードは設立された。「自分たちの作りたい音楽を作る」という志のもと、既存のレコード会社にはなかった発想で70年代の音楽シーンに旋風を起こしたが、新人を売り出すために次第に大手レコード会社と同じような手法をとるように。皮肉なことに初期メンバーが去り、普通のレコード会社になってから売上げも好調に。しかし、バブル期に建てた本社ビルなど60億円の負債を抱え倒産。当初の志を忘れ、会社を維持・発展させることを目的とした末路だった。

 映画全盛期にはプロ野球球団を持ち、スタジアムを建設するほどだった大映は、スター俳優を抱え込むべく松竹・東宝・東映らに呼びかけ、俳優や監督の引き抜きを禁じる「五社協定」を結んだ。しかし、これが仇となる。テレビの台頭により映画業界が斜陽になったことで、彼らを養い続ける負担が大きくなり、結局、他社の仕事がしたい看板スターや監督が相次いで独立。ヒット作にも恵まれず、1971年に倒産した。映画純潔主義を貫くあまり、時代の変化に対応できなかったのだ。

 漫画の神様・手塚治虫の虫プロダクションは、日本初のテレビアニメ『鉄腕アトム』を制作し、日本アニメの礎を築いた。当初『鉄腕アトム』の製作費として広告代理店は1話150万円を提示したが、なんと手塚は「55万円でいい」と逆に値切った。他社の参入を寄せ付けないための策であり、赤字は漫画の原稿料で補てんすればいいという考えだ。著作権をテレビ局に渡さず、キャラクタービジネスや海外の放映権で収益を出すビジネスモデルだったが、結局、コスト意識が希薄になり、赤字体質から抜け出せず倒産した。

 かつて「世界最大の航空会社」と呼ばれたパンアメリカン航空は、イギリス貴族の価値観である「ノブレス・オブレージュ(持てる者の義務)」を実践し、世界初のジェット旅客機の開発に寄与するなど航空業界の発展に貢献。海外旅行が高嶺の花だった50~60年代に豪華さを売りにして一時代を築いたが、さらなる巨大旅客機の開発・発注で大幅な赤字に。オイルショックや規制緩和により低価格化が進んでいたにも関わらず、貴族的な誇りと巨大さゆえに大衆化の舵を切れず、64年の生涯を閉じた。

 80年代に“感性”を売る企業集団として一世を風靡したセゾングループ。西武百貨店を中心にパルコやロフト、無印良品など最盛期には179社を擁した。グループ代表の堤清二は、場末の百貨店からスタートしながら渋谷に進出し、文化戦略に注力。80年代カルチャーをけん引する巨大グループを築き上げたが、その裏では相次ぐ出店や新規事業によりグループ全体の借金がなんと1兆円超! バブルの寵児となった巨大グループは、バブル崩壊とともに解体。堤清二の敗因は、その繁栄を独力で成し遂げたものと錯覚したこと。有能なブレーンたちを次々遠ざけ、晩年は一人きりの状況だった。

 1997年に日本中に衝撃を与えた山一證券の倒産。明治30年の創業後、企業に代わって証券や債券の売買を行うビジネスモデルを確立し、「法人の山一」の名を盤石にした。ところが東京オリンピックの後、日本経済は一転して不況となり経営危機に陥る。日本経済が持ち直したことでなんとか持ち直したが、危機を脱したことで大口顧客主義の企業体質を変えなかったことが後に敗因となる。一方“中流”が増加した高度経済成長期に個人客をターゲットにした野村證券は業界トップに躍進し、今も健在だ。

 このほか、日本の石油エネルギー確保を目指して中東各国と交渉し、油田の採掘権を得たアラビア油田の末路や、世界三大倒産劇の一つに数えられる世界的商社・鈴木商店の倒産、太平洋戦争時にもっとも多くのゼロ戦を生産し、GHQにより解体された中島飛行機、社員数40万人を誇った南満州鉄道のシンクタンク・満鉄調査部といった戦前戦後の絶滅企業エピソードが記される。いずれも創業者の熱意を原動力として大躍進をとげながら、敗戦の時代変化に対応できなかったことや、時とともにその精神が忘れられてしまったことが敗因だ。

 絶滅した企業には共通点があるという。それは、過去の成功神話に胡坐をかいて独善的になり、時代遅れになってしまったこと。企業が存続するために大事なことは、過去の成功体験ではなく、創業期の志というDNAなのだ。恐竜は絶滅したのではなく、鳥に進化したという説があるように、DNAを継承しつつ時代に即して変化することが求められる。

『絶滅企業に学べ!』3つのポイント

●失敗例を「反面教師」にして未来に活かす

●過去の成功神話に胡坐をかくと、時代遅れになる

●創業期のDNAを受け継ぎ、時代に即して変化すること

文●大寺 明