『エッセンシャル思考 最小の時間で成果を最大にする』要約まとめ

身を粉にして働いているのに成果が出ない……。それは、あれもこれもやろうとして、結局どれも中途半端になっているせいかもしれない。コンサルタント会社のCEOを務める著者は、重要なことに集中して、最高のパフォーマンスを発揮すべきだとアドバイスする。そのためには、重要なこと以外に「ノー」と言わなければいけないわけだが、どう判断すべきだろう?

 本書が提唱する「エッセンシャル思考」とは、重要な仕事を見極め、それ以外の仕事は計画的にそぎ落とすというもの。時間とエネルギーを効果的に配分し、「より少なく、しかしより良く」を追求することで最高のパフォーマンスを発揮しようという考え方だ。

 優秀な人ほど、「あの人に任せておけば大丈夫」となり、ひたすら仕事に追われかねない。相手の機嫌を損ねたくないし、期待に応えたい。深く考えずに引き受けているうちに、どうでもいい仕事に追われ、結局は他人の言いなりの人生を送ることになってしまうと著者は警告する。

 この10年ほどで私たちの選択肢は急激に増えた。インターネットを通してなだれ込む他人の意見や、欲を刺激し続けるテレビCM。そうした影響から、あれもこれもと手を出す感覚が蔓延し、何が大事で何がそうでないかを見分けられなくなっているという。こうした状況を著者はクローゼットに例える。二度と着ない服でいっぱいになり、本当に着たい服が見つからないような状況だ。

 いらない服は捨てなければいけないわけだが、「いつか着るかもしれない」という考えをまず捨てなければいけない。人は自分の持ち物を実際より高く評価する傾向があるため、なかなか捨てる決断ができないものだからだ。

 服は捨てれば終わりだが、仕事や用事はどんどん増殖していくため、日頃から整理整頓を習慣にしなければいけない。その都度、イエスかノーかを吟味して判断する必要があり、検討せずに何でも引き受ける人に比べ、エッセンシャル思考の人はより多くの選択肢を検討することになる

 エッセンシャル思考はまず「選ぶ」ことが第一歩となり、このほか「ノイズ」「トレードオフ」の3つの考え方が基礎をなしている。
「ノイズ」とは大多数のものごとは自分にとって不要であることを知ること。著者は子どもの頃にアルバイトを通して、時給1ポンドの仕事がある一方で、時給6ポンドの仕事があることを知り、時間と成果の関係に気づかされた。ただがむしゃらに頑張ればいいというものではなく、どこに重点を置くかが大事なことであり、それ以外は目を向けないようにするという考え方だ。

 何かを選ぶには、何かを捨てなければいけない。これが「トレードオフ」の考え方だ。ビジネス戦略でいえば、格安航空がその典型となる。過剰なサービスを廃止するかわりに、低料金を選んで利益を出す仕組みにした。

 この判断が意外と難しい。なぜならトレードオフが起こるのは、どちらも捨てがたいような状況だからだ。非エッセンシャル思考の人はトレードオフが必要な状況になったとき、「どうすれば両方できるだろうか?」と考えてしまうものだという。さらには忙しく動き回ることを有能さの証だと思っているため、余暇や睡眠時間を削ってまで全ての仕事をやろうとしてしまう。

 しかし、それこそ逆効果。「睡眠」は体調を整え、脳のパフォーマンスを高めるために必要なものだし、「遊び」は脳を創造的にし、ストレスを軽減してくれる。なにより寝る間も惜しんで働いて、心身のバランスを崩しては元も子もない。ときには電話もメールもシャットアウトして、考える時間を意識的に作ることも大切だ。ビル・ゲイツは年に2回ほど「考える週」を定期的にとっていたことで知られる。その1週間に大量の本や記事を読んで最新技術について学び、ビジョンを考えるようにしていたのだ。

 とはいえ、人は本来的に関係性に縛られた生き物だから、なかなかノーと言えない。上手に断るには、関係性から切り離して考え、直接的でない表現を使うといいと著者はアドバイスする。たとえば、沈黙してそれとなく意志を伝えたり、別の日の代替案を出したり、「予定を確認して折り返す」と一端、間を置いて断るのだ。相手が上司で断りにくい場合は、「どの仕事を後まわしにしますか?」と返し、上司にトレードオフを意識させるといいだろう。

 ノーを言うことで、たしかに短期的に相手と気まずくなることはある。しかし、長期的に見ると「自分の時間を安売りしない」というメッセージになり、プロフェッショナルの証として相手から敬意を得られることにつながる。

 自分にとって重要なことと不要なことを見極めるためには、最終的にどう生きたいかという「本質目標」を定めることだという。たとえば、「弁護士ではなく医者になる」と決めてしまえば、何を学ぶべきかが明らかになり、その後のあらゆる決断の助けになる。あるいは社会的な意義や家族を大切にするというのでもいい。一番大切なことを決めることで、次々とやってくるタフな選択の前で、後悔せずに判断できるようになるのだ。

 エッセンシャル思考の目標は、単に世間的な成功を手に入れることではない。人生に意味と目的を見出し、それを成し遂げるために、それ以外のものを捨て去る勇気を持つことなのだ。

『エッセンシャル思考 最小の時間で成果を最大にする』3つのポイント

●すべてをやろうとすると、すべてが中途半端になる

●重要な仕事に集中し、それ以外を削ぎ落とす

●断る勇気を持ち、目標のために計画的に時間を使う

文●大寺 明