『人生ドラクエ化マニュアル』要約まとめ

「現実もゲームみたいだったらいいのに……」と思ったことはないだろうか。 そこには“なんでも思い通りにできる”という感覚があるわけだけれど、実はゲームとは「敵」や「ルール」があるから面白いものなのだ。最初からレベル99でクリアするより、徐々に経験値やゴールドを貯めて目的に近づいていくから面白い。人生をゲーム化する「人生ドラクエ化理論」とは?

 誰もが夢中になった国民的RPG『ドラゴンクエスト』。著者はドラクエの制作会社エニックスに勤務していた頃、ゲームの三大要素を人生に投入すれば、「人生がドラクエ化するのではないか?」という『人生ドラクエ化理論』を思いついた。そして、この理論を実証するために会社を辞めて独立。その後、情報誌の創刊、商品評価サイトの企画運営、そして本書の執筆・出版など、ドラクエのミッションをクリアするかのごとく次々と精力的に事を成していった。

 私たちは現実を辛いものと感じ、現実逃避をするようにドラクエにハマる。しかし、「人生はドラクエの何万倍も面白いゲームに変えることができる」と著者は断言する。何しろドラクエでは選択できるコマンドが「話す」「呪文」「調べる」など8つだけだが、人生で選択できるコマンドは無制限。しかも、グラフィックもサウンドも肌触りまで超リアルという超体感型ゲームが人生なのだ。

 そもそもゲームとはなんだろう? 簡単に言うと「目的を達成するためのルールに則った敵との楽しい闘い!」である。ところが、人生の「闘い」となると途端に苦しくて嫌なものになる。この認識を「楽しい闘い」に変えることが本書の目指すところ。そこで著者は人生をドラクエ化すべく、ゲームの三大要素「目的・敵・ルール」を“あるもの”に投入することを提案する。この“あるもの”は勉強や仕事など、なんにでも代替可能だ。

 ドラクエの場合、ボスを倒し、お姫様を救出し、世界平和を取り戻すという「目的」をゲームデザイナーの堀井雄二氏が設定している。しかし、人生ゲームの場合、目的を設定するのはあなた自身。自分の意志で変更も可能という自由を手にしているのだ。当たり前の話のようだが、この肝心なことが意外と見落とされている。良い学校、良い会社に入って平穏無事に暮らす……といった親や会社に設定された目的に、なんとなく流されている人が実に多いものなのだ。それでは「他人の人生を生きることになる!」と著者は疑問を投げかける。

 目的を決めても体がなかなか動かないことがある。それは本心から自分がワクワクする目的ではない場合と、目的達成までの具体的手順が見えていない場合がある。前者の場合は、ワクワクするものが見つかるまで何度でも目的を変更すればいいし、後者の場合は、「はじめの一歩」をできるだけ具体的にするといい。たとえば著者は「本を出版社から出す」という目的を掲げたものの、どうすればよいのかわからず最初は動けずにいた。そこで、自分の原稿に近いテイストの本を出している出版社を探す、という「はじめの一歩」を踏み出してみたのだ。そうすることで自然と二歩目も見えてきたという。

「敵」については、ドラクエではモンスターと迷路やパズルが行く手を阻む。人生ゲームにおいて「モンスター」にあたるのが「アナタの目的達成を阻もうとする人間達」だ。たとえば「いちいち嫌味を言ってくる人」や「頭の固い上司」「世間体に縛られた両親」など。ドラクエでは経験値やゴールド求めて敵と闘う。得られるものがあるから強敵を攻略することが楽しみになるのだ。この感覚を人生にも取り入れて攻略してみよう。

 人生ゲームに出現する敵の面白いところは、「誰も敵を作ってはいない」ということ。実は目的を設定した瞬間に、それを阻む者として敵が自動生成されているのだ。そうした敵は一見厄介に思えるが、「敵がいるからこそ、ゲームは面白い」とも言える。たとえばシューティングゲームで無敵の裏ワザを使っても何も面白くないように、ゲームを楽しむために敵は必要不可欠。そう考えると「嫌な奴」だと思っていた人も、わざわざ悪役を買って出てくれている愛おしい存在に見えてこないだろか? しかも、ドラクエのように単純な敵ではなく、うまく攻略すれば仲間や協力者になってくれる可能性だってあるのだ。

 これは「ルール」もしかり。ゲームに緊張感のある面白さを与えるためにルールは存在する。しかもドラクエのルールと違って、ものすごく自由度が高い。ドラクエでは最初スライムなどの難易度が低い敵が出現し、徐々に強敵が現われるように設定されているが、人生ゲームの場合は、大きな夢を設定すると手強い敵が現れ、小さな目的を設定すると弱い敵が出現するようになっている。自分のレベルに合った難易度の目的設定をしてもいいし、何度変更してもかまわない。人生ゲームのルールでは、敵との戦いに勝っても負けても、あるいは途中で逃げても経験値が増える。負けることを恐れて闘わないことが、レベルも上がらず一番リスクが高いことなのだ。

 ただし、ドラクエとは異なる強烈なルールとして、死んだら終わりの「ゲームオーバールール」がある。だからといって恐怖におびえるのではなく、今この瞬間を存分に楽しむべきだと著者はアドバイスする。なぜならゲームの楽しみとは、目的を達成した瞬間以上に、目的達成を目指して遊んでいる最中にあるからだ。むしろ人間は遊んでいるときこそもっとも真剣になる。そう考えると、目的達成に過剰に縛られることなく、気長に闘いを楽しめるはず。

 人生のゲーム化なんて言うと不謹慎に聞こえるかもしれないが、ゲームと人生を対比させることで実にいろんなことが見えてくる。「人生ドラクエ化理論」を頭に入れたこの瞬間から、あなたの冒険は始まっているのだ。

『人生ドラクエ化マニュアル』3つのポイント

●「目的」を設定して、人生をゲーム化する

●「目的」を阻む敵を攻略する「闘い」自体を楽しむ

●闘いを避けて何もしないと、レベルが上がらない

文●大寺 明