『ダークサイド・スキル 本当に戦えるリーダーになる7つの裏技』要約まとめ

会社は“人”で動いています。いくらスキルやロジックに秀でていても、人を動かす力がなければ、会社を動かすことはできないのが現実。逆に本気で会社を動かそうとする人は、しっかりと「調整・根回し・段取り」をやっているものです。社内政治のようでネガティブなイメージを持つかもしれないけど、そうした泥臭いことをやらなければ、結局、何も事は成せない。組織をよりよい方向に導くための「ダークサイド・スキル」とは?

 著者は製造業の「古くて大きな会社」の経営支援を主な仕事にしている。そうした昔ながらの会社では、「和をもって貴しとなす」という協調性や、「あうんの呼吸」で空気を読むことが美徳とされ、村社会的な帰属意識が強く、よそ者を排除しようとする傾向があるという。そうした価値観を一概に否定するのではなく、良い方向に作用させるにはどうすればいいか。そのカギを握るのが、部長・課長層のミドルリーダーだと著者は考えている。

 サラリーマン型組織の場合、社長や取締役といったトップは、あと5年か10年しか会社にいない。そのため在任期間中に問題が起きないほうがいいとなり、中長期的な視点で意志決定をしなくなってしまいがちだ。ところがミドルは10年、20年とその会社で働き続ける。問題を先送りして後々困るのがミドルであり、むしろミドルこそ中長期的な視点を持つべきである。

 日本企業の人事評価はたいてい減点主義のため、失敗を報告するとマイナス評価になることからリスクを避ける文化がはびこっている。しかし、保守的なエリート街道を歩んできた人は、たとえそこで生き残ってもいいリーダーにはなれない。事業の撤退戦や子会社の経営再建といった泥臭い経験を積んできた人のほうが、強いリーダーになる可能性が高いのだ。

 大会社を動かし、方向転換させていくためには、人に影響力を与え、ときには意のままに操るような泥臭いヒューマンスキルが必要だと著者はいう。それが本書のタイトルにもなっている「ダークサイド・スキル」である。本書では7つの「ダークサイド・スキル」を紹介している。

 その1は、「思うように上司を操れ」というもの。会社や自部門にとってあまりよくない情報は、ついつい隠ぺいしがちだが、冷静に戦局を見通し、このままではダメだと判断したなら、きちんと伝えるべきである。非難されやすい会議の席で報告しなくても、ときには社長にこっそり耳打ちするくらいのしたたかさが求められてくる。

 その2は、「KYな奴を優先しろ」である。とかく日本の組織は「あうんの呼吸」で事を進めようとする。そのほうがコミュニケーションは楽だが、その結果、同質化が進んでしまい、新しい発想や多様な意見が出てこなくなってしまうのだ。現場を預かるミドルに求められることは、多様性をうながすことを意識し、むしろ周囲に同調せずにKYな発言をする人を優先するくらいの心がまえを持ちたい。

 その3の「『使える奴』を手なずけろ」は、何か事を成そうとする際に、どうやって役に立つ人を集めてチームを作るかということ。そのためには普段から周りの人をよく観察し、頭の中で仮想チームをシミュレーションしておくといいだろう。また、神経回路のように社内に情報網を張り巡らせることも大事になってくる。神経回路は使えば使うほど太くなる。日頃からランチや飲みに行くなど積極的にコミュニケーションをとって情報網を築いておくことが、有事の際に生きてくるのだ。

 その4の「堂々と嫌われろ」は、意思決定の場面を指す。部下を持つと、みんなから好かれようとして顔色をうかがってしまうものだが、そうすると意思決定が遅れたり、問題を先送りにしがちだ。改革を推進しようとするリーダーがその責任を果たすには、ときには「あの人嫌い」と言われても、「それがどうした」と開き直るくらいの根性と信念が求められてくる。

 その5の「煩悩に溺れず、欲に溺れろ」は、仏教的にいうと「小欲を捨て、大欲に立つ」ということ。論理的に考えても答えが出ないとき、最後に物を言うのは自分の価値観だ。そこに企業理念を掛け合わせて、この先進む道を選ぶといい。ダークサイド・スキルは、自分の価値観や煩悩に基づいているものであり、それが強みにもなるし弱みにもなりうる。ときには自分の過去や価値観を棚卸ししてみるといいだろう。

 その6の「踏み絵から逃げるな」は、トラブルが発生した際に、自分の信念が試される場面を指す。たとえばお客とモメてクレームがあったとき、すぐに謝ったほうが丸く収まりそうなものだが、自分の信念や会社の方針と違うとなった場合、ときには一歩も退かず自分を貫くことも必要だ。なぜなら普段の言動から外れたことをしてしまうと、部下の信頼が一瞬にして崩壊してしまうからである。部下たちはあなたの行動をつぶさに観察しているのだ。

 最後のその7は、「部下に使われて、使いこなせ」というもの。部下は上司に「自分のことをちゃんと見てほしい」と思っている。そのためにも自分の時間の七割を部下に使うくらいの心がけでちょうどいいという。普段から時間を割いて部下の声を聞くようにしていれば、いざというときに自分の手足となって働いてくれるものなのだ。一見、部下のために時間を使っているようで、実は自分の目的を達成するために時間を使っているともいえるだろう。

「ダークサイド」というと、人の裏をかく政治力のようなイメージを持つかもしれないが、人間に対する深い理解を持ち、合理と情理をわかっていなければ使いこなすことはできない。このスキルを持ったミドルリーダーが会社のそこかしこで最強のチームを作ることが、「古くて大きな会社」に改革をもたらし、会社全体を強くするカギを握っているのだ。

『ダークサイド・スキル』3つのポイント

●組織で事を成すには、泥臭いヒューマンスキルが必要

●現場を知り、トップにパイプを持つミドルリーダーがカギを握る

●「部門最適」ではなく、「会社の未来」のために必要な行動をとる

文●大寺 明