『第四次産業革命 ダボス会議が予測する未来』要約まとめ

歴史を振り返ったとき、あのときは「○○時代だった」と言われます。しかし、その渦中にいる当人は、それをはっきりとは意識していないもの。自動運転車やAIの技術進歩、生命科学の新たな発見など、日々、SF映画のようなニュースが飛び込んできますが、まだ私たちの日常に劇的な変化をもたらすほどでもない。だけど21世紀初頭の今は、人類の歴史のなかでも空前絶後の〝変化の入り口〟にいる可能性が高いのです。数十年後、私たちは「第四次産業革命の初期の人たちは……」なんて語られているかも。

 ダボス会議(世界経済フォーラム)の創設者として知られる著者のクラウス・シュワブが、来たるべき「メガトレンド=第四次産業革命」を技術、経済、社会など多角的に解説する。そもそも「第四次産業革命」とは何か? まず歴史的位置づけから理解してみよう。

 人類の生活様式が根底から変わったのが、約1万年前の「農業革命」。狩猟生活から農耕生活になり、食糧生産量が増えたことで人口が増加し、都市化につながっていった。次に根本的な変化をもたらしたのが、18世紀後半の「第一次産業革命」だ。それまでの約1万年間は人間と家畜が動力だったが、蒸気機関と鉄道建設により、はじめて機械動力に移行した。

 19世紀後半にはじまった「第二次産業革命」では、電気と流れ作業による大量生産時代に突入。そして1960年代からはじまった「第三次産業革命」は、半導体やコンピュータの開発、インターネットによって推進されたことから「デジタル革命」とも呼ばれている。

 21世紀から現在は、「第四次産業革命」の入り口にいると著者はいう。それは「デジタル革命」の延長上にあり、私たちは今でも十分にデジタル技術による思考や生活の変化を実感しているが、まだほんの序の口にすぎないらしい。

 これはスマホやインターネットに限定される話ではない。遺伝子配列解析からナノテクノロジー、再生可能エネルギー、量子コンピューターなど、あらゆる分野で同時にブレイクスルーの波が起きているのだ。

「第四次産業革命」の技術的なメガトレンドを、著者は「物理的」「デジタル」「生物学」の3つに分類している。まず「物理的」なメガトレンドは「自動運転車・3Dプリンタ・先進ロボット工学・新素材」の4つである。その架け橋となるのが「デジタル」のメガトレンドだ。いわゆるモノやコト(製品・サービス・場所など)と人間を結びつける「IOT」である。

「生物学的」なメガトレンドでは、遺伝子解析のイノベーションが驚異的だ。かつてヒトの全遺伝子情報を解析するには10年を超える歳月と27億ドルもの費用がかかった。これが今ではわずか数時間、1000ドル未満ですんでしまう。DNAを書き換えて臓器をカスタマイズできるようになるばかりか、物理的メガトレンドのひとつである3Dプリンタで作った移植用臓器が使用されるようになる。

 このように、3つのメガトレンドが相互に関連していくことが、「第四次産業革命」がこれまでの産業革命と異なる特徴だ。農業やバイオ燃料生産なども劇的に進歩する可能性があり、その影響ははかり知れない。まさにSF映画のような未来が訪れようとしているわけだが、根本的な変化は当然さまざまな混乱をもたらす。特に私たちに直接的に影響する変化として、雇用の問題があるだろう。

 典型的な例では、1990年のデトロイトの三大企業を合わせた時価総額は360億ドル、従業員は120万人だった。これに対し、2014年のシリコンバレーの三大企業を合わせた時価総額は約1兆ドルで、収益はほぼ同じだが、従業員数は約10%の13万7000人に減少。企業が富を築くために必要な従業員数が、15年前と比べてはるかに少なくてすむのは、デジタル事業の開発費用がゼロに近づきつつあるため。こうした労働力の削減が今後ますます進む可能性があり、さらにはAIやロボットが労働を代替するようになる。

 タクシーの予約、製品の購入、音楽や映画の視聴など、テクノロジーの恩恵を受けることで、一見もっとも得をしているのは消費者のようだが、実際は少数の独占的プラットフォームに集中し、大きく得をしているのはイノベーターや投資家、株主であり、労働者との富の差が拡大し続けている。第四次産業革命で危険なのが、国家間と国家内で「勝者総取り」の力学が展開されること。これにより大量移民や暴力的過激主義が激化するなど、社会的緊張と対立が悪化し、より不安定な世界となりうる。

 新たな変化には、必ずプラスの面とマイナスの面がある。本書の後半は、自動運転車やAIなど新テクノロジーがもたらす変化をプラス面、マイナス面にわけて考察しているが、そうした個々の影響が、経済や社会、国家の在り方や個人のアイデンティティにどれほどの変化をもたらすかは、ほぼ予測不可能だ。

 しかし、著者は「現実的楽観主義者」として、世界的に見たときプラス面のほうが大きいと考えている。その根拠となるのが、競争ルールが従来のルールと異なることだ。競争力を維持するには、企業も国もあらゆる形で革新の最先端を走る必要があり、環境破壊やエネルギー問題など、私たち全員が直面している地球規模の大きな課題のいくつかを緩和させる可能性を秘めている。

 私たちが第四次産業革命からよい影響を享受するためには、この劇的な変化を理解し、意識を高めていくこと。そして、どのように第四次産業革命を具現化するかを構想し、その恩恵を活用するために、経済も社会も政治のシステムも再編に乗り出さなければいけない。重要なことは、いま私たちは将来に目を向け、その道程に影響を与える力を持っていることなのだ。

 最後に著者はこう述べている。「第四次産業革命は人間をロボット化し、これまで私たちが重視していたもの――労働、コミュニティ、家族、アイデンティティ――を脅かす可能性がある。その一方で、人間を共通の運命感に基づいた新たな集団的、道徳的意識へ到達させる可能性も秘めている。後者となるようにするのは、私たち全員の責務である」と。

『第四次産業革命』3つのポイント

●21世紀から今は、「第四次産業革命」の入り口

●さまざまな分野でブレイクスルーが起き、相互作用している

●劇的な変化には、必ずプラス面とマイナス面がある

文●大寺 明