『あの会社はこうして潰れた』要約まとめ

「自分の会社は大丈夫だろうか……?」と不安に思ったことはないでしょうか。たとえ普段は会社のグチをこぼしていたとしても、毎月必ず給料がもらえ、生活が成り立っているのも会社があってこそ。しかし、「会社の寿命は30年」といわれる今の時代、“倒産”は他人事ではありません。経営が行き詰まると、会社はあらゆる手段を使って延命をはかろうとするもの。経営陣の相次ぐ交代や不祥事の発覚など、そこには何かしら倒産の予兆があるはず。37社の倒産事例から壮絶な倒産ドラマをのぞいてみましょう。

 帝国データバンク情報部に勤務する著者は、この25年間で数千社の倒産を見てきた。産業構造の変化、高齢化による人手不足、事業承継問題など、倒産の原因や背景を知ることで今の日本経済が抱える問題が浮かび上がってくるという。また、赤字経営を隠ぺいするために不正会計に走ったり、複雑に絡まる利害関係が浮き彫りになったり、会社が倒産する際には、想像を超えるシナリオが用意されているものだという。

 そうした予兆をどう判断し、倒産を予測するか。本書では信用調査マンが取材した37社もの倒産事例が取り上げられている。経営破綻の原因は本当にさまざまだが、各章から典型的な事例をいくつか紹介してみたい。

 倒産事例で多いのが、「構造変化」に対応できなかったケースだ。05年設立のザ・サードプラネットは大型ゲームセンターを全国展開し、ピーク時の07年には年商約99億円に達したが、その2年後から3期連続最終赤字となった。スマホのソーシャルゲームの普及もあって、以前ほどゲームセンターが流行らなくなったのだ。ゲームセンターの市場規模はこの8年間で4割も減少したという。しかもキャッシュフローが厳しくなったことでリニューアルが後手にまわり、さらなる客離れを招いた。採算性の検証が不十分なまま、やみくもに店舗拡大を続けたことが経営破綻の理由だった。出展費用などで膨らんだ負債総額は約60億円にのぼる。

 日本の中小企業には100年以上の老舗企業が約2万社もあるという。なかでも500年以上の歴史を持つ和菓子の名門・駿河屋は別格だ。92年のピーク時には売上高60億円を突破し、04年には株式上場を予定していた。しかし、その前年に20代目社長が架空増資で逮捕されてしまう。これも業績の低迷が続いたことから、上場廃止を避けるための裏工作だった。不祥事を起こした会社の和菓子は贈答用に相応しくない。ますます業績は落ち込み、駿河屋は533年の歴史に幕を降ろすことに。上場維持の信用よりも「のれん」の信用を守るべきだった。

 一方で急成長を遂げたベンチャー企業の倒産も少なくない。電力自由化の規制緩和にともない2010年に電力事業に参入した日本ロジテックは、東日本大震災による電力不足や電気料金値上げが追い風となり、売上高は5年間で640倍の556億円に達した。需要の急拡大に対して供給が追いつかなくなり、発電所の保有を画策するもトラブルがあって計画はとん挫。用地買収の費用として数十億円の資金が流れ、電力を買い付けるための資金繰りも悪化した。2015年から支払いが滞るようになり、2016年には自己破産を申請。急拡大する需要に対し、組織が追いつかず、身の丈を超えた経営をしたことが破綻につながった。

 誰もが知る有名企業では、宝飾小売り店の「ジュエリーマキ」で知られる三貴が、2014年に民事再生法の適用を申請。実質的に3度目の経営破綻である。東日本大震災以降、売上不振が続いたことが要因だったと説明しているが、バブル絶頂期に成功したビジネスモデルを変えようとせず、20年かけてジリ貧になった側面が強い。三貴は米国のチェーンストア理論をもとにした独自の販売手法で市場を席巻し、バブル期にさらなる拡大路線をとった。しかし、3兆円ともいわれた宝飾市場は、90年代半ばには半分以下に縮小。こうして最初の経営破綻を迎えるのだが、社長の交代もなく、根本的な改革に取り組むことはなかった。宝飾業界に革新をもたらしたという自負が、いつしか変化を嫌う現状維持の姿勢になっていたのだ。

 不正が発覚し、経営破綻の引き金になるケースも少なくない。三重県の老舗米穀会社・三瀧商事は、米や雑穀を食品・清酒メーカーに販売し、年間1億円以上の利益を上げていた。年々厳しさを増す市場にあって、これはかなり不自然なことであった。その真相が2013年に発覚。流通大手イオンに納入した国産米の弁当やおにぎりに、中国産や米国産の米が使われていたのだ。さらにはご飯に適さない加工用米を使っていたことまで判明。一連の不正の代償として、大手取引先から取引停止を突き付けられ、さらには元社長ら経営陣が逮捕されるという末路をたどった。

「キャバクラ嬢」を意識したファッション誌として、ピーク時には発行部数40万部を誇った『小悪魔ageha』の発行元だったインフォレストは、親会社によって全株式を売却された。インフォレストが業績不振に転じるのもこの段階から。新たな親会社は出版事業に通じているわけでもなく、8カ月の間に3回も社長交代があり、さらには『小悪魔ageha』のカリスマ編集長が退社。ますます業績は悪化し、手形が金融業者の間に出回るなど資金繰りに行き詰まり、2014年に負債総額30億円で破産手続きを申請。雑誌編集というコンテンツ制作の現場と、業績だけに目を向ける経営の間に大きな溝ができていたことが要因となった。

 巻末には信用調査マンがどのようにして倒産の予兆を察知しているのか、ヒト・モノ・カネの動きを見るプロの「目利き力」についてコラムが付けられている。自分の会社が危なくないか、チェックしてみてはいかがだろう。

『あの会社はこうして潰れた』3つのポイント

●構造変化に対応できない会社は危険

●好調のときの業績をベースにした事業拡大は危険

●業績悪化を隠すための不正行為は、ますます危険

文●大寺 明