『アンガーマネジメント 怒らない伝え方』要約まとめ

誰しも怒るのも怒られるのもイヤなもの。なにしろエネルギーの消耗が激しいし、関係もギクシャクしてしまう。怒っていいことなど何ひとつなさそうに思えるが、よりよい関係を築くには、ときに相手に改善を求めることも必要だ。これを「怒り」として伝えるのではなく、相手に受け入れられやすいように伝えるには?「怒る」ことが苦手な現代人はぜひ知っておきたい。

「怒り」というとマイナスのイメージが強い。企業の研修講師を24年務めてきた著者は、日頃から仕事上の様々な相談を受けているが、中でも「怒り」についての悩みが多いそうだ。怒った後に「言いすぎてしまった」と後悔したり、「怒るのはみっともない」と感じて部下に注意ができなかったり……。これに対し著者は「怒りは感じてもいい」「怒ってもいい」とアドバイスする。

 怒りを無理に抑えたり感じないようにすると、ストレスが蓄積されて体調を崩したり、突然爆発して修復不可能な関係になりかねないからだ。そもそも共に仕事をしていく上で、ときに怒る必要がある場面が当然出てくるものだし、よりよい関係を築いていくためにも言うべきことを言って相手に改善を求めたほうがいいという場面が多々ある。

 実際に9割近くのビジネスパーソンが「仕事で怒りを感じる」と答えており、「怒り」とどう付き合うかが仕事上の課題でもあるのだ。アメリカではDVや差別問題に対処するために、怒りを研究した心理教育(アンガーマネジメント)が70年代から開発され、教育や企業のマネジメントに広く導入されている。日本でもパワハラやコンプライアンスが取り沙汰されるようになり、近年注目されはじめているのが「アンガーマネジメント」なのだ。

 そもそも「怒り」とは何だろう? 本来それは心と身体の安心安全が脅かされたときに感じるもので、「身を守るための感情」ともいわれている。「うれしい・楽しい・悲しい」といった感情と同じように自然な感情なのだが、他の感情に比べて強いエネルギーを持っているため、その感情に触れ回されてしまうことになり、否定的に捉えられているのだ。

 とても強い感情のため見えづらくなっているが、「怒り」は「二次感情」とも言われ、その裏には「こうあってほしい」「わかってほしい」という別の感情が潜んでいる。それが満たされないときに「怒り」という感情になって噴出してしまうのだ。

 つまり「怒り」だけを表に出してしまうと、本来わかってほしかった気持ちが相手に理解されないままになってしまう。アンガーマネジメントの最初のステップは、怒りの裏にある一次感情をまず自分で理解すること。そして、怒りにまかせてそれを言うのではなく、相手が理解して納得できるように「伝え方を工夫する」ことだ。

 怒りの外的要因は様々だが、内面的には共通するひとつの原因がある。それが「○○すべき」という自身の信条や価値観だ。家庭のしつけや一般的な常識がベースになっているのだが、それが誰にも通じるものだと思ってしまうことが落とし穴。人それぞれに「○○すべき」は違うのだ。

 自分と人の価値観が違うことが認識できていれば、ちょっとしたことでイライラすることもなくなるはず。自分の中で許容範囲を決めておき、度がすぎる場合だけ注意をうながすようにするといい。そして、この境界線を相手に伝えることがアンガーマネジメントの基本になる。

 本書は英語の参考書のように大部分が例文に割かれている。いずれも「こうした場面で言い方に迷ったことがあったな」と思えるケーススタディだが、エッセンスをかいつまんで言うと、人格否定は避けて改善してほしい事柄を具体的に伝えること。

 常識を振りかざして相手の人格を攻撃するような伝え方は最悪のパターンで、「私」を主語にして対等な一個人として話をすると相手も受け入れやすくなる。「私は○○だと思う。だから、○○してほしい」というように伝えるわけだが、その際、長々としたアドバイスになると聞く側もうんざりするものなので、一回の話ではひとつの改善案にとどめたほうがいい。

 また、「ちゃんとして」といった曖昧な言い方や嫌味っぽい言い方、相手を責めるような言い方や自分のほうが絶対に正しいといった態度、聞えよがしのため息や舌打ちなども禁物。本来「叱る」ということは、相手の人格を否定することが目的ではなく、相手の成長を願い、望ましい行動をしてもらうための動機づけにある。

 そのためにも一方的に怒りをぶつけるのではなく、相手に事情があるなら耳を傾け、「こうしたらいいんじゃない?」と共に対処法を考えるようにするといい。どうにもならない過去に固執するのではなく、過去の失敗を未来に活かすようにチャンスを与えることが大切。こうした建設的な指摘であれば、言われる側も受け入れやすく、次第に本音で付き合える関係性が築かれていくだろう。

 こうした伝え方を実践するためにも、怒りを感じたときの対処術を日頃から身に着けておきたい。方法としては、怒りを感じた瞬間に「ストップ」と心の中で唱えたり、「まっ、いいか」という許しのフレーズを自分の中に用意しておくなど。一旦その場から離れたり、大きく鼻から息を吸って(4秒)、一旦息を止めて、口からゆっくり息を吐く(8秒)といった動作も効果的だ。いずれもちょっとしたことだが、これだけでもだいぶ怒りが静まるかもしれない。

『アンガーマネジメント 怒らない伝え方』3つのポイント

●怒りの裏にある「○○してほしい」という感情を理解する

●「○○すべし」という常識や価値観は人それぞれ違う

●人格否定は避け、改善してほしい事柄を具体的に伝える

文●大寺 明