『女性資本主義論』要約まとめ

女性資本主義論

ガンガン営業をして市場を拡大していく――。20世紀の企業戦士たちは、この目標に向かってまっしぐらに働き続けてきた。しかし、この狩猟民族的な経済活動が限界を迎えたのが、2008年のリーマン・ショックである。これ以降、資本主義のほころびが如実になり、誰しもがこれまでのやり方ではいけないと感じはじめた。では、次の経済システムのあり方はどうあるべきだろう? ヒントは女性的感性にあるのかもしれない。

著者は2003年に勧誘のない脱毛エステサロン「ミュゼプラチナム」を立ち上げた。その後、グループ全体の売上高は353億円、会員数は200万人にまで急拡大した。試行錯誤の連続だったこの12年間で、著者は経営者として痛感したことがあるという。それは、「資本主義」のほころびが如実になり、経済を動かすシステムが確実に変わってきているということだ。

20世紀の資本主義は、未開の市場を求めて開拓と拡大を繰り返してきた。男たちはスーツに身を包み、油ギッシュな企業戦士として競争に明け暮れたのだ。彼らは「ターゲットを征服」することに快感を覚え、どれだけ「市場占有率」が上がったかを自慢にしていた。いわば「狩猟」「開拓」「征服」による経済活動であり、これらは極めて“男性的”な精神と行動である。

こうした経済活動を著者は「おっさん資本主義」と呼ぶ。これはポルトガルとスペインが覇権を競った15世紀の大航海時代から続いてきた経済活動だが、もはやそれも限界に来ている。なぜなら21世紀の地球はグローバル化が進み、もはや未開の地など存在しないからだ。フロンティア精神を発揮する場所がなくなり、行き先をなくした「おっさん資本主義」が世界中でウロウロしているのが現状である。それでも無理矢理に新規市場を開拓しようとして失敗したのが2008年のリーマン・ショックだった。

これに対し、著者が提唱するのが「女性資本主義」である。男性に替わって女性が稼ぎ手になるべきだといったジェンダー論でもなければ、資本主義そのものと完全に決別しようとするものでもない。「おっさん資本主義」の典型だった「狩猟」「開拓」「征服」ではなく、これまで“女性的”と見なされてきた「誠実さ」「利他的」「共感力」によって、今ある経済システムを最小限の力でリメイクしていこうとする考え方だ。

「おっさん資本主義」時代には、自社の商品やサービスが他社よりも優れていることや安さをアピールして顧客を獲得しようとした。たとえば洗濯乾燥機を売りたいなら、「他社よりも2倍、洗濯性能に優れている」といった競争力を前面に打ち出してきた。しかし、今では「従来より洗剤使用料が2分の1で済み、エコ機能が高い」と訴えた方が、顧客から支持される。「女性資本主義」時代には「みんなのために」という共感性が決め手となるのだ。

バブル期にはおっさんたちが見栄を張るために高級ブランドや高級車を買い求めたが、今の若者や女性はそうした「ドヤ顔消費」を恥ずかしいものだと感じている。それよりも旅行やライブ、アート鑑賞や食事など、みんなでその価値や体験を共有する「笑顔型消費」が新しく経済を回していくことになると著者は示唆する。

「おっさん資本主義」の基本原理とは、「持つものが持たざるものを利用する」ことで、持つ側の利潤を拡大していく弱肉強食型のシステムである。これに対し、「女性資本主義」の基本原理は「お互いに持つものをシェアする」ことで、幸福感といった「目に見えない価値」を共有する相互補完型システムだ。

リーダーの資質においても、畏怖の念を抱かせるような絶対的な強さを持ち、「上から」の思考や行動を誇示するような人間には、誰もついていきたいとは思わなくなった。それよりも「温かさ」や「共感」といった人々を結びつけることを大切にしたリーダーが求められるようになってきている。従業員も顧客も株主もそれを敏感に感じとり、自分が意思決定をする際の基準にするようになっているのだ。

お客が企業やブランド、スタッフを評価するのは、「人を圧倒するような営業能力」といったビジネス能力の高さではない。目の前の人間が「信頼に足るか」「温かいか」といった人間性を見ているのであり、実際にそうした信頼感をベースにした方が長期に渡る顧客支持につながるのだ。

これまでのエステ業界ではノルマ達成が評価軸だったため、スタッフには強引な勧誘を行うといった競争力が求められてきた。しかし、著者は起業にあたって「ノルマなし」「勧誘なし」「スタッフ全員が固定給の正社員」という経営を行った。スタッフ同士で競争させるのではなく、「お客さまもスタッフも無理をすることなく、みんながハッピーになれるサロンをつくろう」という方針を貫いた結果、市場開拓や顧客開拓を一切することなく、脱毛専門サロンNo.1の店舗数・売上・顧客満足度となっていったのである。

『女性資本主義論』3つのポイント

新規市場を拡大し続ける“男性的”経済活動はもはや限界

共感性や信頼性といった“女性的”経済活動の時代へ

一時的なノルマ達成ではなく、長期的な顧客支持を目指す

文●大寺 明