『入社1年目の教科書』要約まとめ

入社1年目の教科書

期待と不安……さまざまな想いを抱き、この春から新社会人となった若者たち。当然、最初は単調な作業や雑務を任されることも多く、つまらないと感じることもあるかもしれない。しかし、そうした仕事の中にこそ、自分を成長させるヒントが隠されているのだ。ライフネット生命保険の社長を務める岩瀬大輔氏が副社長時に上梓した本書から、仕事の心得を学んでみよう。

 外資系コンサルティング会社、米国のベンチャー企業の日本法人、投資ファンド、そしてライフネット生命保険という4社の職場を経験してきた著者だが、組織は変わっても自分の中で変わらない「芯」があったという。それが自身に課してきた「3つの原則」だ。

 まず原則1は「頼まれたことは、必ずやりきる」こと。実際に部下を持つ立場に立ってみると、催促しない限り頼まれた仕事に手をつけない人が思いのほか多いのだそうだ。いくら成績優秀な新人であっても、これでは上司が次も仕事を頼もうとは思えない。逆に頼まれたことを絶対にやりきる人は、周囲から信頼が得られ、次の仕事が回ってくるため、経験値が積み重ねられていく。新社会人にアドバイスを贈るとき、いつも著者は最初にこの話をするそうだ。

 原則2は「50点で構わないから早く出す」こと。ビジネスの現場は学校の試験とは違い、人の力を使うことが悪ではない。求められることは良い結果を出すこととスピードだ。1カ月かけて100点のものを提出するより、1週間で50点のものにして一端提出し、上司や先輩のアドバイスを受けて改善・軌道修正して100点に近づけた方が、時間が節約できて効率的というわけだ。ビジネスとは、あらゆるリソースを使って挑む総力戦なのだ。

 そして原則3は「つまらない仕事はない」ということ。資料の書き写しやデータ入力といった一見、単調に見える仕事であっても、プロ野球選手の素振りのように考え、負荷をかけることで自分を鍛える仕事と捉えるのだ。どんな単純作業であっても「何のために」という背景と目的を意識し、効率的に作業をするための「仕組み化」をすれば面白く仕事ができるという。会議の議事録の作成といった仕事であっても、論点を整理して簡潔にまとめる工夫をし、疑問点・改善策を提示するなど自分なりの付加価値を付けるのだ。

 また、来客にお茶を出すといった雑務であっても、商談のやりとりを見聞きするチャンスと捉えたり、カバン持ちであれば、一流の経営者が持つ視点やビジネスマナー、立ち居振る舞いを学ぼうと考えるなど、何ごとも自身を向上させる機会とする。仕事は真似ること、盗むことでしか身につかないものだと著者は明言するのだ。

 新卒入社や転職初年度の社員に対して、受け入れる側が最初に持つのは、優秀かどうかという視点ではない。社会人として当たり前のことをちゃんとやれる人物か否かだ。3つの原則もこれに関わるものだが、具体的には朝の遅刻をしないことや大きな声で挨拶をすること、メールは早めに返信するといったアドバイスをしている。メール世代の現代の新社会人は、メールだけで済ませてしまいがちだが、メール「and」電話(もしくは対面)がコミュニケーションの基本。重要なことをより確実に伝えることが大切だとしている。

 また、仕事は「予習・本番・復習」が3対3対3となる配分をルールとしている。これを会議に置き換えると、事前にテーマを共有せず、終わっても議事録を作らない会議は「0対10対0」というわけだ。予習としては、ときに問題について事前に話し合い合意を得ておく「根回し」も大切。本番の会議では、たとえ新人であっても必ず発言するのが社会人のルール。何もベテラン社員のような分析や判断をする必要はない。若者の新鮮な目線や現場の感覚から出た発言が、思わぬ解決策を導き出すこともあるのだ。そして復習をすることで、自分が学んだことをスキルとして定着させていくことも忘れてはならない。

 仕事とは未知の分野への挑戦の積み重ねだ。最初に訪れたチャンスをつかみ、よい仕事をすれば仕事を依頼される機会が増え、人は急速に成長していく。そのためにはまず信頼を得ることが肝要。英語の勉強法やスーツの選び方、敬語や年上の人との距離感の取り方、幹事や宴会芸など、本書では多岐にわたってビジネスパーソンとして成長していくための心構えやコツが提案されている。

『入社1年目の教科書』の3つのポイント

●頼まれたことは、必ずやりきる

●50点で構わないから早く出す

●つまらない仕事はない

文●大寺 明