『元電通マンの教師が教える 凡人でもエリートに勝てる人生の戦い方。』要約まとめ

元電通マンの教師が教える 凡人でもエリートに勝てる人生の戦い方。

メディアで取り上げられるスポーツ選手やビジネスパーソンを見て、「凡人がどんなに努力をしたところでかなわない」と落胆したことはないだろうか。しかし、元電通マンにして静岡聖光学院ラグビー部の監督を務める著者は、“凡人”を強みにした戦い方があると提唱する。それは、エリートとは違う独自の道を見つけ、一点突破で自分を伸ばしていこうとする考え方だ。

広告代理店業界の最大手である電通の元社員というと、いかにも仕事ができそうなエリートを想起しがちだが、著者は極度の人見知りで、勉強も運動も平凡な“凡人”を自認する。電通時代は高学歴やタレントなみに個性的な同期に囲まれ、凡人であってもエリートに勝てる方法をずっと試行錯誤してきたという。そんな著者が見つけた術が、「自分をプロデュースする技術」だ。

電通退職後、著者が監督を務めることになった静岡聖光学院ラグビー部は、全国レベルの素質やスキルを持った選手が一人もいないとされる弱小チーム。しかも練習時間は一回60分で週3日に限定された環境だ。とても強豪校に勝てるレベルではなかったが、著者は「自分をプロデュースする技術」を選手たちに教え、2年連続で花園出場へと導いた。電通時代と高校ラグビーのエピソードを交互に交えながら、“凡人の発想術”を伝えていくのが本書の構成である。

この発想の原点となったのが、著者の大学時代の経験だ。身体が大きいことが圧倒的なアドバンテージとなるのがラグビーというスポーツ。小柄な著者はとても大学ラグビー部のスタメンに入れそうもなかったが、最前線のフォワードのパフォーマンスを上げる選手という新たなスクラムハーフ像を目指し、見事レギュラーの座を獲得。電通時代も同様の考え方で、既存の“電通マン像”から外れ、組織の中で「空席」の立ち位置を探した。まずはエリートと違う道を歩むことが、エリートと互角に渡り合うために必要になるのだ。

組織の売上は全社員の2割の社員だけで支えられているとするパレードの法則(二八の法則)があるが、静岡聖光学院ラグビー部の指導にあたって、著者はメンバー全員が十分な力を発揮する「誰ひとりとして埋もれない組織」を目指した。そのために必要となるのが、各選手のキャラクターを確立させ、立ち位置を決めること。たとえば、先輩と後輩の架け橋となる選手でもいいし、声を出して士気を上げる選手や、ウエイトトレーニングを教える選手でもいい。まず組織を客観的に眺め、まだ誰も担っていない役割を探すのだ。能力に優れない人でも、メンバーの立ち位置を明確にすることに専念すれば、十分にリーダーとして活躍できると著者は言う。

立ち位置を決める際、「個性」を伸ばすのではなく、「特徴」を作ることが肝要。一見似た言葉のようだが、「個性」は個人にしかない性格・性質であり、「特徴」は周囲と比較したときに決まる相対的な値である。たとえば170cm以下という身長は「個性」にはならないが、身長180cm以上の屈強な選手ばかりのスクラムハーフのポジションでは、背が低いという「特徴」になる。これを活かし、「低くいくプレー」で勝機をつかむことも可能となるのだ。

この発想術は、「方程式」を活用することがキモとなる。静岡聖光学院ラグビー部は練習時間がとれないため、長らくスタミナ切れで敗退するパターンに陥っていた。「スタミナを強化する」ことが勝利への方程式だが、これが難しいと判断した著者は、「一試合を通じて疲れない走り方」という別の角度から改善させた。また、練習時間が短いことを「練習外の時間が日本一長いチーム」という言葉に反転させ、部員全員でラグビーの試合映像を観ることで、チーム全体の意識を大きく変化させていった。このように方程式をズラしたり、反転させることが、この発想術のコツだ。

この他、選手たちに一日の練習を検証させ、改善策を考える訓練をしたり、「決断力(=スピードアップ)」を上げるために60秒以内で結論を出す練習を日頃から行っているという。いずれもビジネスの現場で必要とされていることを選手育成に活かしたもの。人生には「どうにもならないこと」と「なんとかなること」がある。これを分けて考え、「なんとかなること」に対しては、悔いが残らないように全力で取り組むことが大切だとしている。

『凡人でもエリートに勝てる人生の戦い方。』の3つのポイント

●組織の中で空席の“立ち位置”を探す

●方程式をズラしたり反転させることで発想する

●自分の特徴を活かした役割に、一点突破で全力を注ぐ

文●大寺 明