『経済は世界史から学べ!』要約まとめ

経済は世界史から学べ!

デフレ、TPP、アベノミクスなど経済のニュースを日々耳にする。おおよその内容は理解できても、明快に説明できる人は少ないのではないだろうか。駿台予備学校で世界史を教える著者は、縄文時代を学ぶのもいいが、現代を生きる若者には「教養としての経済学」が欠けていると指摘する。経済ニュースをより深く理解するために、まず各国のお金の関係性を知っておこう。

まず本書では「紙幣」の成り立ちから説明する。世界最初の紙幣は、10世紀の中国で重い鉄銭の引換券として「交子」という紙幣を商人が発行したことが始まり。やがて政府が発行するようになり、戦争や公共事業のために「交子」を乱発したため、紙くず同然となってしまった。すなわちインフレである。

日本でも西南戦争の軍事費を賄うために政府が紙幣を乱発し、インフレとなった。この過ちを繰り返さないために政府と民間が半分ずつ出資してできたのが日本銀行だが、戦時下に制定された「日銀法」により、再び政府が通貨発行権を掌握。このお金を軍事費に当てることで日本は戦争を際限なく拡大させ、国家存亡の危機に陥る。本来、通貨発行権を持つ中央銀行は、政府から独立した機関であるべきだが、今問われているアベノミクスは、政府による日銀コントロールを再び繰り返すのではないか、という問題をはらんでいるのだ。

現在、国際通貨となっている米ドルは「金本位制」だが、それ以前の大航海時代はスペインが世界の覇権を握り、「銀本位制」をとっていた。ところが各国が銀貨を発行しすぎたため、価値が暴落。その後、産業革命に成功したイギリスが世界の覇権を握り、ポンド金貨(金本位制)が国際通貨となった。

第一次世界大戦時にイギリスをはじめとする連合国は、軍事費を捻出するため、敗戦国からの賠償金で賄われる「戦時国債」を発行。この戦時国債の多くを引き受けたのがアメリカの金融機関JPモルガンだ。結果、連合国側が勝利し、アメリカは世界最大の債権国となった。さらに第二次世界大戦でもアメリカは本土が無傷のまま勝利し、連合国への武器輸出で莫大な利益を得た。超大国アメリカが出現である。

戦後の日本は、復興予算を「世界銀行」の融資に頼った。こうした戦災復興や発展途上国支援をする国際融資機関が「世界銀行」であり、国際収支が極度に悪化した国を支援するのが「国際通貨基金(IMF)」だ。共に加盟国が出資し、その額に応じて投票権を持つシステムだが、最大の出資国がアメリカ(世界銀行16%、IMF17%)であるため、アメリカの発言権がもっとも大きく、単に軍事力だけでなく、経済の力でアメリカは世界の主導権を握っているのだ。

国債通貨である米ドルは当然、価値が高くなる。ドル高が続くとアメリカ製品が売れなくなるわけだ。そこで「円高ドル安」の流れを画策したのが、バブルの発端となった「プラザ合意」だ。これに対し日銀は、円高不況にならないように金利を引き下げることで国内市場を活性化しようとした。そのため、わずかな利子しかつかない銀行に預金するより、株式や土地に投資した方がいいとなり、バブル経済が引き起こされた。

こうした株式・債権・土地・商品などに出資を行い、リターンを得るヘッジファンドが80年代から世界中に影響を与えるようになる。2003年にブッシュ政権がイラク戦争に突入したため、ヘッジファンドによる「ドル売り円買い」が進んだ。円高を避けるために、日銀は総額30兆円以上のお金を使って市場介入した。そのほとんどが米国債の購入だ。一方、アメリカ政府は米国債の売却益を軍事費と公共投資に回した。この公共投資がサブプライムローンの発端となり、2008年のリーマンショックへとつながっていくのだ。

円高により、日本製品の流入にブレーキをかけることができたアメリカだが、日本市場へのアメリカ製品の輸出は一向に伸びない。そこでアメリカが求めたのが、郵政民営化をはじめとする「構造改革」だ。例外なき貿易自由化を目指すTPPは、20年以上続いた「構造改革の仕上げ」とも言うべき条約なのだ。

本書は反米論を唱えているわけではない。このように経済の文脈から歴史を紐解いていけば、かつての国家の没落も世界大戦も、そして今ある国際社会における日本の複雑な立場も理解できるというスタンスだ。なるほど、たしかに腑に落ちる話ばかりである。

『経済は世界史から学べ!』の3つのポイント

●経済ニュースを理解するには“歴史”が欠かせない

●極端なインフレが戦争や革命を引き起こす

●もっともお金のある国が世界の主導権を握る

文●大寺 明