『最強マフィアの仕事術』の要約まとめ

最強マフィアの仕事術

表のビジネスとは一見、接点がなさそうに思えるマフィアの世界。しかし、営利目的の組織であることは一般企業と変わりはない。大成するマフィアは、エリートビジネスマン以上にハードワークをこなす交渉のスペシャリストであったりするのだ。80年代半ばに「アル・カポネの再来」と呼ばれた元マフィア幹部の仕事術から、ビジネスの心構えや生き方を学んでみよう。

1986年の米『フォーチュン』誌によると、当時、アメリカの犯罪組織による非合法ビジネス(犯罪組織による合法ビジネスは含まず)は年間500億ドル以上の収益を生み、アメリカのGNPの1.1%に相当。もはや一大産業だ。著者のマイケル・フランゼーゼはニューヨークを拠点とする五大マフィアの一つ「コロンボファミリー」に所属し、1986年当時、「35歳の最年少幹部」「アル・カポネの再来」として話題となった。

彼がその若さで台頭できたのは、ガソリンの卸売(巨額脱税会社)、賭博、高利貸しなどのいかにもマフィアといった非合法ビジネスの他、自動車販売代理店と靴修理店のチェーン展開、クラブやレストランの経営など合法ビジネスにおいても優れた経営手腕を発揮したからだ。その頃の著者は週に600~800万ドルを稼ぎ出し、資産は王族クラスとも噂されるほどだった。

本書はそんな彼がマフィア時代に培ったビジネス哲学をまとめたもの。表のビジネスの世界と裏のマフィアの世界では、接点がなさそうに思えるが、「マフィアで大成する者は、必ず夜明けとともに行動を起こす」と著者が言うように、それだけの成功を収めるには、何時に就寝しても夜明けには起き、一日15~18時間働くハードワークが欠かせないという。「楽して儲ける」がマフィアのイメージだが、実はエリートビジネスマン以上にストイックな日々を送った結果なのだ。

アメリカも日本と同様に、成功の秘訣が書かれたビジネス書が数多く並んでいるそうだが、「秘密の方程式などありはしない」と著者は断言する。もし本当にそんなものがあるなら、人に教えたりはしないと核心をつくのだ。それは、出版ビジネスのカモにされているにすぎず、本当に頼りになるのは、自らの経験を通して得られた“生き残るための知恵”のみ。本書では、信頼できる情報の見極め方、信頼できるパートナーの見極め方など、騙し騙される駆け引きの世界において、いかに交渉を有利に進めるかがテーマとなる。

相手から自分が望んでいる言葉を引き出せれば交渉は成功となるが、その際のコツとしては、「口を閉じておくこと」が挙げられる。まず相手にしゃべらせることで情報を集め、頭を使って自分が有利な方向に導くのだ。「口は災いの元」ということわざがあるが、うかつな言動によって奈落の底に落ちたマフィアは数知れず。それが身に染みている元マフィアだけに、昔から言われている箴言が説得力を持つ。むしろ著者は、新しいことなど何も言っていないのかもしれない。

そんな著者の行動指針となったのが、マフィアのバイブルとなっている思想家マキュベリが著した『君主論』だ。それは「理想のためには手段は選ばない」といった考えだ。これをビジネスに置き換えると、会社(組織)の利益のためには、人を騙してもよいとなる。

一方で著者は、マキュベリの教えで手にした成功を維持したいなら、古代イスラエルのソロモン王の箴言に耳を傾けるべきだとする。その教えは、「不正の道を行く者は必ず世に知れる」「不実な心の持ち主は自らの偽りで身を滅ぼす」という公正さに基づいた道徳感であり、マキュベリ的な成功は、いずれ手痛いしっぺ返しに合うという考えだ。

いずれも真実であり、両方を同時に選ぶことはできないと著者は言う。元マフィアである著者のことだから、単純に事の善悪でどちらが良い悪いと言っているわけではない。最終的にどちらを選ぶかが人生の問題だとしているのだ。

マフィアの究極的な成功は、巨万の富を得て“権力”を手にすること。しかし、その末路は敵対勢力や警察に狙われることがほとんど。果たしてその人生が幸福と言えるだろうか、と著者は疑問を投げかける。こうした考えに至ったのも、著者が懲役10年の判決を受け、全財産を失い、マフィアの世界から足を洗ったからこそ。同時期にマフィア幹部となった他の5人は、みな不慮の死を遂げたという。

『最強マフィアの仕事術』の3つのポイント

●ハードワークこそが成功の秘訣

●口は閉じておくこと

●手段を選ばないビジネスは、いずれ破たんする

文●大寺 明