『人生の9割は逃げていい』要約まとめ

人生の9割は逃げていい

「逃げる」というと何かとネガティブにとらえられがちだが、逃げることで行き詰まりが打開される場合もある。実際、起業家や独立をする人は「会社勤めが性に合わなかった」という人が多く、いわば勤め人生活から逃げた人々なのだ。今いる環境を離れ、自分がもっと活かせる道を探す。そう考えたとき、「逃げる」はポジティブに変換されるだろう。

 私たちは幼い頃から親や教師に「どんな困難でも乗り越え、逃げずに立ち向かう人が正しい」と教えられてきた。しかし、そう教えてきた人が理想の人生を実現できているかというと疑問だ。本書は人生を戦略的に考えた場合、逃げずに立ち向かい続ける生き方が必ずしも正しいものではないという。逆に「逃げることでしか、理想の人生は実現できない」と主張するのだ。

 今でこそセミナーや企業研修の事業で年商5億円の会社を経営し、1年の半分を海外で過ごすという著者だが、中高時代はイジメにより5回の転校を繰り返し、大学も2回中退。家族や地元から逃げ出すようにアメリカに語学留学し、帰国後は就職もせずにニート生活。しかし、こうして逃げ続けたからこそ、「自己啓発」に興味を持ち、そのノウハウを人に教えるという仕事を見つけられたと考えているのだ。

 人間関係がうまくいかない。仕事で結果が出ない。やりたい仕事じゃない。多くの人がこうした悩みを抱えながら踏ん張っているが、それは自分に合わない環境で一生懸命になっている可能性が高い。しかし、何ごともやりぬくことが大切だと教え込まれてきたため、逃げることができずに苦しんでいる場合が多々あるのだ。今いる場所が世界の全てではない。自分に合わない環境からは「逃げて逃げて逃げまくれ」というのが本書の一貫したメッセージである。

 多くの人は現在の「仕事・人間関係・環境」しか選択肢がないものと思い込んでいる。当然そんなことはなく、実際は「見えない世界」が確実にある。今いる環境や人間関係から逃げたとき、孤独になるのではないかと不安を抱くかもしれないが、異業種交流会や社外の勉強会に行くといった行動をとっていれば、そのうち理想的なライフスタイルを送っている人が集まるコミュニティに辿り着くものだという。逃げた先には必ず自分に似た価値観を持つ仲間がいるものなのだ。

 逃げると、また別の選択肢が出てくる。逃げ続けることは、選択を繰り返すことでもあるのだ。そうすることで物事を見る目が鍛えられ、本当にやりたい仕事が見つかるものだという。自分で取捨選択をして見つけた仕事だから、もう逃げられないし、腹をくくれるようにもなるのだ。

 こうした「逃げる」という生き方は、世界的に見ればむしろオーソドックスな生き方だ。海外では転職して自分の能力を活かすことが当たり前だし、歴史的に見れば、ユダヤ人も華僑も逃げながら生き抜くことで、多くの人が成功をつかんだ。成功している人には共通点があるという。それは「現状が嫌だから、環境を変えた」ということ。自分がもっとも能力を発揮できる最適な環境を開拓した人たちなのだ。

 また、仕事で結果を出したいなら、メールや打ち合わせ、会議等々、成果と結びつかないのに時間ばかりとられる9割の仕事から逃がれ、自分が本当にやるべき1割の仕事に集中すべきだとしている。勝負どころで勝負ができない人は、常に自分の許容量を超えた仕事を抱えている場合が多い。苦手なことをまじめに頑張る人より、何かが突出している人の方が結果を出していたりするものだ。

 本書のテーマとなっている「逃げる」とは、「セルフイメージを変える」ということにほかならない。脱サラも転職も人間関係を一新し、一瞬にしてセルフイメージを変えるチャンスだという。人間は環境に影響される生き物である。「こういう人になりたい」と思える人が集まるコミュニティに入れば、おのずと理想の生き方に近づくというわけだ。さらに自分の持ち物や服装まで環境として考えた場合、古いものは捨てて常に新しいものを使った方がよいという。これも新しい自分へとセルフイメージを変えるための行為なのだ。

 私たちの考え方の大部分は、親から引き継いでいる価値観かもしれない。それは今の時代と錯誤していることが多々ある。また、就職をすれば20~30年働いている先輩から強く影響を受けることになる。こうした他人の価値観に影響されて生きることを辞め、自分で決めて行動することが大切だというのが本書の言う「逃げる」のニュアンスだ。実際、著者と親交のある起業家たちは、学歴も気にしないし、一度も就職したことがないという人が大半らしい。一般的なルートから逃れ、他人の価値観に影響されずに生きてきた人々なのだ。

『人生の9割は逃げていい』3つのポイント

●今いる場所が世界のすべてではない

●逃げることで、新たな選択肢が生まれる

●望ましくない環境から逃げ、セルフイメージを一新

文●大寺 明