『一流の育て方――ビジネスでも勉強でもズバ抜けて活躍できる子を育てる――』要約まとめ

いくら学歴が高くても、仕事も優秀だとは限らないものです。世界的なコンサルティングファームや資産運用会社を経て、香港で投資家として活躍する著者のムーギー・キム氏は、同程度の学歴とIQでありながら、リーダーとして活躍する人と、万年平社員の人がいることに着目。日本トップクラスの大学生の大規模アンケートから見えてきた、幼少期の家庭教育とは?

 東大・京大・早慶といった日本トップクラスの大学の中でも、グローバル企業に進んだ学生200人以上を対象に、家庭教育に関して「もっとも感謝している点/もっとも不満に思っている点」を質問し、そこで得られた回答を「7大方針55か条」にまとめたのが本書。項目ごとに共著者のミセス・パンプキン氏が教育コラムを執筆するという変わった構成の子育て本である。ちなみに彼女はムーギー・キム氏の母親であり、4人の子ども全員をグローバルに活躍するプロフェッショナルに育て上げた一般女性である。

 回答の中で特に多かったのが、「自主放任で主体性を伸ばす」という家庭教育。これが7大方針の最初のテーマになる。親が習い事を決めて子どもにやらせようとしてもまず長続きはしない。「自分にとって何が大切で、自分は何が好きなのか」を子ども自身に探させるようするといいそうだ。自分で目標を決めることが、長続きする原動力になる。

 さまざまな理想を描き、親はついつい子どもを従わせようとしてしまう。しかし、子どもがやりたいことを尊重せずに押し付けてしまうと、後あと親子関係に大きな禍根が残ることがある。特に古い世代の親が子どもの進路を指図することは禁物。かといって子どもの自主性に任せて放置すればいいというものでもない。親として十分なアドバイスを与えた上で、子どもの判断に委ねるのが賢明だ。

 こうして幼い頃から自分の好き嫌いや価値観を理解できている人は、将来の職業選択においても天職に近づきやすい。逆に勉強することだけを親に求められてきた偏差値エリートは、視野が狭くなり、自分の適性を無視した分野に進んで迷走しがちだ。第2章のテーマはこれに関する『「視野」を広げ、天職に導く』となっている。

 この章で大切なことは、知的充足感を教えること。アンケート回答でも「お小遣いはもらえなかったが、本はいくら買ってもいいルールで育った」「キャンプや旅行などいろんな経験ができる機会を親がつくってくれた」といった視野を広げるものが多い。中でも効果が高いのが読書で知見を広めること。キム氏によると、一流のリーダーはほぼ例外なく、すさまじい読書家だという。

 近年、成功者の研究で話題となっているのが、偏差値教育やIQではなく、長期的に目標を達成しようとする非認知能力の「グリット」である。これに伴い第3章では「あきらめずに最後までやりぬく力」を扱っている。

 第1章のテーマとも重なってくるが、ここでも子どもが自ら興味を持ち、自発的に始めることが秘訣となる。親が子どもの「挑戦」を物心両面で支援する応援団になってあげるといいだろう。そして、子どもが真剣に打ち込んでいないときは、ときには叱ることも大切。幼い頃に中途半端に投げ出してしまうと、それが癖になり、大人になっても同じことを繰り返しがちなのだ。ただし、失敗に対して怒ったりせず、失敗から何を学ぶかに重点を置いて見守りたい。

 第4章では「コミュニケーション能力」がテーマとなる。相手の話をよく聴き、クライアントが欲していることを理解するコミュニケーション能力がビジネスの基本になる。これに関しては、幼い頃から大人たちの食事会に同席させるなど、なるべく社交の場に多く参加させるといい。幼いうちから「場馴れ」させるのだ。家庭内においては、親が「何でも話せる相手になる」ことが大切。子どもと積極的に議論をし、異なる意見や価値観があることを幼いうちから理解させるといい。

 第5章のテーマは、多くの親が困っているだろう「勉強しない子ども」をいかに勉強させるか。前述のように子どもの自主性に任せるほうがいいわけだが、それだけで子どもが勉強するようになるというものでもない。ときには勉強していい結果を出したらインセンティブ(例/お小遣い)をあげたり、学歴社会やお金の現実を早いうちに教えておくなど、子どものモチベーションを上げる工夫も求められてくる。

 それ以上に効果的なのが、「勉強しなさい」と口で言うだけでなく、親自身が一緒に勉強に参加する姿を見せること。第6章のテーマ『「勉強以外の勉強」をさせる』では、親の言動や教養が子どもに影響することを論じている。子は親を真似るもの。親に学習習慣や芸術を愛でる感性があれば、自然と子どもにもそれが身につくものなのだ。しつけの秘訣は、まず親自身がわが身を律し、教養を持つことなのだ。

 そして最終章は『「無償の愛情」を感じさせる』こと。親の愛情を十分に受けて育ってきた人は、何事にも積極的な明るい性格に育ち、周囲の人からも助けられる。本書で子育ての秘訣を書きつづってきたパンプキン氏だが、正直なところ、教育論を語れるほどすべてを完璧にこなしてきたわけでもないようだ。

 そんな彼女が、本書の教育法で最後に一番大切なものを一つだけあげるとしたら、この「無償の愛」に尽きるという。本書に書かれていることをすべて実践しても、これがなければ親の仕事をしていないのに等しく、逆にまったく実践できていなくても、これさえ子どもに伝わっていれば、それだけでもかけがえのない贈り物をしていることになるという。

『一流の育て方』3つのポイント

●子どもの自主性を尊重し、「挑戦」を応援する

●子は親の鏡。口で言うだけでなく、親自身が努力する

●子どもを信頼し、「無償の愛」を注ぐ

文●大寺 明