ヨガに魅せられ仕事に。実情が語られないヨガ業界だからこそ、目指す人には知ってほしい。ヨガインストラクターが語る独立ノウハウ

西森あゆみ(にしもり・あゆみ)東京都足立区出身。神田外語大学卒業後、大手小売企業に就職。退職後、雑貨屋のアルバイトをしながらヨガ教室に通うようになり、社団法人日本ヨガインストラクター協会(JYIA)の資格を取得。2013年よりフリーランスのヨガインストラクターとして活動。2016年よりヨガインストラクターの情報サイト『ヨガインストラクターナビ』を運営。

――独立DATA――
●23歳で独立

【開業資金/約35万円】
「ヨガインストラクター資格取得費」
・養成学校入学金/5万2000円
・マスター(3級)+アドバンス(2級)の受講料/24万5000円
・資格試験受験料/5800円
「その他」
・資格取得前後のレッスン通い/約3万円
・ヨガ用ウェア/計1万円

社団法人日本ヨガインストラクター協会の「マスターコース3級」と「アドバンスコース2級」を受講。合計98時間の講義を受けてヨガインストラクター資格を取得した。ちなみに1級は「キッズヨガ」や「シニアヨガ」といった専門性の高いもので、一般的なヨガインストラクターになるには3級と2級で十分といえる。この他、かかる費用というとヨガに適したウェアやヨガマットくらいのもので、それほど費用はかからない。

――事業内容――
ヨガインストラクター/フリーランス
大手ホットヨガスタジオやスポーツジムのヨガレッスンなどで、業務委託のレッスンを請け負う。また、個人的な活動としてヨガインストラクターのための情報メディア『ヨガインストラクターナビ』を運営。現在、ヨガの魅力をより多くの人に伝えるための新サイトを制作中。

心と身体のバランスを整えてくれるヨガ――。ダイエットやデトックス、リラクゼーション効果が着目され、老若男女が空いた時間にできるエクササイズとして広く普及している。ヨガに魅せられ、普及もかねてインストラクターを目指す人も多いが、一方で「飽和状態」という声も聞かれる。精神性が重んじられるヨガの世界では、仕事の探し方や勤務形態、収入といった実情が語られることはあまりないけど、実際のところどうなの?

就職した会社の仕事に疑問を感じ、アルバイトをしながらヨガ教室に通うように。すぐに「ヨガを仕事にしたい」と思いはじめた

 大学卒業後、大手小売業の会社に就職したんです。配属されたのがサービスカウンターで、クレーム対応をすることが多かったんですね。だけど、組織が大きすぎて私には原因がわからないし、なぜ自分が謝っているのかもよくわからない。ただマニュアル対応をしているような感じが、イヤで仕方がなかったんですね。

 その仕事がどこにつなかっているのかわからない感じがあって、私はこの仕事をずっと続けるのかな?と疑問を持ちはじめたんです。結局、10カ月ほどで退職したわけですけど、そのときは特にやりたい仕事があるわけでもなく、フリーランスという働き方があることすら知らなかった。とりあえずファッション雑貨のお店で販売員のアルバイトをすることにしたんです。

 学生時代にずっとジャズダンスをやっていたんですが、また勉強し直したいと思って、アルバイトをしながらダンス教室に通いはじめたんですね。そのときの先生がヨガ教室に通いはじめて、「身体が柔軟になる」と勧められたんです。

 ヨガにもいろんな流派があって、どれが自分に合うのかわからない。とりあえず信頼できる先生を探そうと思って、いろんなヨガレッスンを受けてみることにしました。大手のホットヨガスタジオが5つ、スポーツジムのヨガレッスンが1つ、レンタルスタジオのヨガ教室が3つで、計9つのヨガレッスンを受けてみたんです。

 実は大学時代にYoutubeでヨガ動画を探して、独学でヨガをやってみたことがありました。だけど実際にレッスンを受けてみると、先生がちょっとフォームを指導してくれただけで、ぜんぜん効果が違う。手を添えて直接指導してくれる先生もいれば、言葉のみで上手く教えてくれる先生もいるし、まったく何もしてくれない経験の浅い先生もいて、本当にいろんな先生がいるものだなと(笑)。レッスン後の感覚もそれぞれ違うことが面白いと思いましたね。

 私は身体を柔軟にすることが目的だったんですけど、ヨガで深い呼吸をすることで精神的にすごく落ち着く感じがあったんですよね。身体以上に気持ちが柔らかくなる感覚があって、この感覚をもっといろんな人に味わってもらいたいと思うようになったんです。ヨガ教室に通いはじめて半年も経たないうちに、「ヨガを仕事にしたい」と考えるようになっていました。

ヨガインストラクターになるには、養成スクールの資格取得が近道。基本を学んだ上で、いろんな先生のレッスンを受けて「教え方」を勉強した

 だけど、どうすればヨガを仕事にできるのかわからない。ヨガ教室の先生からヨガインストラクター養成学校のことを教えてもらったので、まずはネットで探してみることからはじめました。そのとき検索の最上位に表示されたがのが、JYIA(社団法人日本ヨガインストラクター協会)だったんです。受講の仕方がたくさんあったことや、レッスンを翌月に繰り越せる制度があって通いやすそうだったので、そこで資格を取ることに決めたんです。

 そもそもヨガインストラクターは国家資格が必要なわけではないので、スクールに通わなくてもなれます。だけど、昔と違って今は月に100人以上のヨガインストラクターが誕生しているといいます。その中から信頼できるインストラクターを見極めるとなると、やっぱりある程度は専門的に学んでいるという証明があったほうがいい。資格があると採用する側も安心できますよね。

 私は学科を半年ほどかけて受講し、実技の講義は2週間で修了し、JYIAの資格を取りましたけど、他には業界で一番有名な全米ヨガアライアンスの資格があります。「この協会の資格でなければいけない」と指定しているスタジオはあまりなくて、どの団体の資格でも特に問題はありません。だけど、200時間以上の講義を受けて取得する全米ヨガアライアンスの資格に比べると、2週間(約100時間)の短期集中コースの資格は一段下に見られることもある。だけど、私の個人的な意見としては、大きな違いはないと思っています。

 半年コースも2週間コースも教えてもらう基本的な内容はほぼ同じです。重要なのは、スクールで教えてもらったことをちゃんと復習して、自分で学び続けられるか。いくらいい講義でも、教えてもらっただけで終わりにしていると、それ以上は伸びませんよね。私の場合は、資格取得後もいろんなヨガレッスンに通って、それを参考にしながら勉強するようにしました。

 いろんな先生のレッスンを受けることで、ヨガをより深く学べたこともよかったんですが、それ以上に教え方が勉強になりましたね。特にヨガインストラクターの仕事は声の出し方が大事だと思いました。スクールでは「語尾を少し伸ばして言うといい」とか、「高すぎず、低すぎず、やさしい声で」といった程度のことしか教わらなかったわけですが、もっと声の出し方について教えてくれる養成講座があってもいいと思います。大きなスタジオだと、後ろの人が何も聴こえないといったことがあるので、ある程度、大きな声を出す必要があって、かつ落ち着いたトーンで声を出すとなると、けっこう難しいものなんですよね。

新人インストラクターの報酬が安いため、レッスンの数をこなすことに。その結果、ほとんど休みもなく、体調を崩してしまう始末……

 それから求人募集を探しはじめたんですけど、求人サイトで探してもヨガインストラクターの募集自体が滅多に載っていないし、フリーランスとなるとまず見つからない。そこで、『YOGA ROOM』というポータルサイトを使って、家から通いやすそうなスタジオのHPを片っ端からチェックしたんです。

 求人募集が載っているHPがいくつかあったんですが、更新していないことが多かったですね。古い情報で今は募集していなかったり、逆に求人募集が載っていなくても、実際は募集していたりする。気になるスタジオを見つけたら、諦めずに問い合わせたほうがいいと思います。直接、電話をするのに抵抗があっても、今は問い合わせフォームが用意されていることも多いので、文面で送ってもいい。

 私の場合は全部で50カ所くらい問い合わせました。気合いだけで一気に探したので、返事が来ても「どんなスタジオだっけ?」という状態です(苦笑)。本当は自分が大事にしている条件(例えば、家からの距離や報酬など)にしぼって申し込んで、断られたらまた5件応募するというふうに、少しずつ応募したほうがよかったと思います。そうしないと本当にわけがわからなくなる(笑)。

 やはり「現在は募集していません」という返事が多かったですけど、5カ所のスタジオで面接が決まりました。打率1割ですけど、業務委託という条件にしてはだいぶ打率はいいほうだと思います(笑)。その後、オーディションを受けて採用が決まります。5~10分のレッスンを実際に見せるわけですが、最初は緊張しましたね。

 都心部の業務委託の新人ヨガインストラクターの報酬は、1時間のレッスンで2500~3500円が相場です。もっと安い場合もあります。私はレッスン経験がない新人なので、採用してもらえるだけでもありがたいという感じで、お金のことはあまり考えず、2500円からスタートしました。

 2500円だと1日3本レッスンをやっても7500円……。もっと稼ごうとすると、レッスンを増やすしかない。私が住んでいた千葉県の松戸近辺はヨガスタジオが都心にくらべて少ないので、東京と埼玉まで範囲を広げてさらにスタジオを探すことにしました。多少経験ができたことでオーディションも受かりやすくなったんですけど、新人の立場なので、低い報酬でもスケジュールがキツくても請けるようにしていたんですよね。

 その結果、いっぱいいっぱいになってしまって……(苦笑)。1年目は休みなしの週7勤務でレッスン数が13本、2年目は週6勤務になりましたが、レッスン数は15本に増えました。収入はわりと安定していましたが、今思うと精神的には不安定でしたね……。しかもホットヨガが多かったので、体調を崩してしまったんです。これからヨガインストラクターを目指す人には、私と同じ失敗をしてほしくないと思います。

新人のうちは、副業で収入を確保して、心も体も余裕がある状態でヨガの仕事をしていったほうがいい。やりすぎは禁物です。

 スタジオ勤務のヨガインストラクターと違って、フリーランスはいくつものスタジオを掛け持ちすることになります。そうすると、とにかく移動が大変なんです。

 一番大変だった日曜日の例だと、朝7時半に家を出て9時のレッスンを60分やります。スタジオを片付けてから、1時間ほどかけて次のホットヨガスタジオに行きます。昼からの60分のレッスンですが、ホットヨガはシャワーを浴びる時間もあるので、スタジオを出るのは14時くらいになります。それから遅いランチを食べて、また1時間ほどかけて都内のスポーツクラブに行って夜のレッスンをやる。そうすると帰宅するのが21時くらいになるんですよね。

 数をこなすことは、経験を積むという点ではいいんですけど、移動時間が多くなるので、生活していくために稼ぐとなるとすごく効率が悪い。できればレッスンを1日2本連続でやらせてもらえるスタジオと契約して、なるべく移動時間を少なくするようにするといいと思いますね。

 私の場合、ホットヨガのレッスンが多かったんですが、インストラクターはずっと高温にさらされることになるので、常温のヨガよりも体調を崩しやすい。実際、辞めてしまう人も多いんです。ホットヨガは美容にも健康にもいいものですが、やりすぎるのは当然よくないですよね。一日中、頭が痛くて気持ち悪い状態が続いて、さすがにもうムリだと思いましたね。

 体調を崩してしまったことで、収入をヨガレッスンだけに頼るのではなく、オフィスワークの副業をすることにしました。それに伴って徐々にレッスンを減らしていって、週5本くらいになったとき、ようやく体調も落ち着いてきたんですよね。副業で固定収入が得られるようになって、気持ちもだいぶ落ち着きました。

 フリーランスの魅力は、自分の収入や働き方、スケジュールなどを自分で決められるところにあります。だけど、最初からしっかり稼ごうとすると、朝昼晩と休みなく働くことになって、むしろ正社員よりも不自由かもしれません。フリーランスでやっていきたいという人にアドバイスするとしたら、最初はとりあえず週3くらいヨガレッスンをして、他の時間は副業で収入を確保したほうがいいと思います。

 新人のうちは、それくらいのほうがレッスン内容を考える労力も減りますし、お客さま一人ひとりときちんと接することができるので、レッスンの質も高まると思います。そうやって1年くらい経験を積んで腕を磨けば、経験者として有利になってくる。それから徐々にヨガの仕事を増やしていくといいと思いますね。

 レッスン内容については、新人のときは頑張っていろんなポーズを入れようとしがちですが、そうすると一つひとつがおざなりになりがちです。新人だった頃の私がそうでした(笑)。その教訓もあって、今は「基本のポーズで正しく効果を感じられるレッスン」をモットーにしています。ヨガには長年受け継がれてきた基本のポーズがあります。それをしっかりレッスンに組んで、目的に合わせて、もう少し筋肉を使うとか、リラックスさせるといったポーズのアレンジを加えるといいと思います。

ヨガインストラクター 独立ノウハウ集

独立前

「人前に立って、声を出す」経験を積むべし

西森さんは学生時代にバンド活動(ギター&ボーカル)に打ち込んできた。このときの「人前に立つ」という経験が、役に立っている。何人もの生徒を前にして教えることは、慣れない人にとっては非常に緊張するもの。この緊張感を克服することが課題になる人も少なくない。レッスンによっては30人もの生徒を教えることもあり、緊張のあまり小声で話していると後ろの人に聴こえない。しかし、バンドでボーカルを担当していた西森さんは、「人に届く声」を発することは慣れたもの。プレゼンや会議の司会など、何かしら「人前で声を出す」経験に慣れておくといいだろう。

インストラクターは「接客業」でもある

正社員として小売店に勤務し、退職後は雑貨屋でアルバイトするなど、独立前の西森さんは2つの接客業を経験してきた。このとき培った接客業のマナーが、今の仕事に直接活かされているという。ヨガインストラクターにとって、生徒はお客さんでもある。慣れなれしくされることを嫌がるお客さんもいるし、よそよそしすぎてもいけない。お客さん一人ひとりを見て、相手の立場に立って考える心づかいが大切だ。接客業を通して、お客さんとの距離感を理解できていたことが大きかった。

自分から「募集」を問い合わせるべし

求人サイトに求人広告を載せると当然お金がかかる。そのためヨガインストラクターの求人広告を出しているのは、ほぼ大手ばかりで数も少ない。しかし、もちろん小規模なスタジオも募集している。お金をかけずにHPで募集したり、縁故で採用しているものなのだ。HPを更新していないスタジオも多いので、たとえ募集告知が載っていなくても、問い合わせてみる価値はある。ヨガインストラクターが供給過剰と思われがちだが、意外と「インストラクターがいなくて困っている」という声が多いそうだ。

独立後

ギャラの相場を知るべし

フリーランスのヨガインストラクターとして独立を考えたとき、やはり気になるのが収入だ。東京近辺で新人の場合、1レッスン60分で2500~3500円が相場で、もっと安い場合もある。他には歩合制があり、基本報酬+生徒1人あたりの歩合や完全歩合制など、スタジオによってさまざま。歩合のほうが良さそうに思えるが、生徒数が少ないと逆にわりに合わない報酬になる。独立直後の西森さんはこの相場を知らなかったため、相場を下回る金額で仕事を請けて苦労した。経験者になってくると、3500~5000円と相場の金額も多少アップし、収入的に楽になってくる。

さまざまなプロの指導法を見て、「伝え方」を磨くべし

ヨガは心と身体のバランスを整えるエクササイズであるため、言葉による伝え方が重要だ。たとえば「身体が大地に吸い込まれるように」といった言葉によるイメージ表現が求められてくる。こうしたインストラクターの指導技術は、養成学校でも詳細には教えてくれない。そこで西森さんはさまざまなレッスンに通い、言葉の表現が上手い先生がいたら、レッスン後にメモをとって参考にするようにした。ヨガインストラクターの仕事は、ヨガの技術を深めるだけでなく、指導技術も日々精進していかなくてはいけない。

ヨガならではの雰囲気を、きめ細やかに演出すべし

ヨガレッスンは雰囲気作りが大切。心地よいBGMやアロマの香り、ちょっとうす暗くした照明やスタジオの清潔感など、お客さんがヨガに求めている癒しや神聖なイメージを壊さないように演出する工夫が求められる。これがうまくできていると、お客さんも心地よくヨガに集中でき、逆にどれか一つでも欠けていると、途端にヨガの雰囲気がそこなわれてしまう。それこそ床に髪の毛が一本落ちているだけでムードは台無し……。そのため西森さんは必ず30分前にスタジオに行き、しっかりモップがけをするなど入念に準備するようにしている。

取材・文●大寺 明

ヨガインストラクターのための情報メディア
ヨガインストラクターナビ

ヨガが好きだから仕事にしたい――。そう考える人も多いはず。
私もその一人でした。だけど、ネットで情報を探しても、
資格取得方法や勤務形態の情報くらいしか得られず、
ヨガインストラクターの実情がまったくわからない……。
そのため私はずっと手探り状態で、ずいぶん遠回りをしたように思います。

「ヨガインストラクターが飽和状態」といわれ、求人募集が少ないことから
諦めてしまう人もいますが、実際、スタジオに問い合わせてみると、
「インストラクターが足りない」と困っていることが多いものです。
実はまだまだヨガインストラクターが働ける場所が、
たくさんあることをお伝えしていきたい。

今回インタビューでお話ししたことが、さらに詳しく載っています。
ヨガインストラクターで独立を目指す方は、ぜひサイトを訪れてください!