少年時代の冒険と感動を再び! 大人のためのキャンプイベントを主催する『週末冒険会』が語る独立ノウハウ

週末冒険会 伊澤 直人(いざわ・なおと)
週末冒険会 伊澤 直人(いざわ・なおと) 1972年宮城県生まれ。ボーイスカウトの活動を8歳から20歳まで続け、最高位の富士章を取得し、浩宮殿下に謁見。大学在学中にサバイバルスクールでさらにアウトドア技術を探求。テレビ局クルー、リゾートバイトを経て、店舗開発の仕事に就き、その後、専門商社の営業職を7年半経験。2013年に独立し、大人のためのアウトドアイベント『週末冒険会』を開催。

weekendclub_sub01――独立DATA――
●40歳で独立
【開業資金】100万円
<内訳>
・独立開業コンサルタント費用 15万円
・HP作成費 15万円
・宣伝広告費(パンフレットなど)20万円
・数人分のキャンプ道具一式 50万円
(テント5つ、夏用冬用の寝袋、マット、カヌー、食器類など)

――事業内容――
週末冒険会
・2013年開業
「マンスリーキャンプ」をはじめとする都心近郊の各種アウトドアイベントを開催。そのほかアウトドア好きが集う「焚きびとCafe」というお茶会を月1で開催。最小限の装備で森の中に入り、自然にあるものを活用してキャンプする「スマートキャンプ」のスクールも開催している。

人間関係のしがらみやメディアの情報過多を離れ、休日はもの言わぬ自然の中で癒されたい。そう考えるビジネスパーソンも多いはず。だけど、キャンプ道具もなければアウトドア好きの仲間もいない……。そんな大人たちに向けてキャンプイベントを開催しているのが『週末冒険会』だ。主催者の伊澤さん自身が、会社員時代にキャンプ仲間が集う場を求めていたという。

ボーイスカウトがきっかけでアウトドアの楽しさを知り、サバイバルスクールでさらに技術を探求しようと思った

 8歳のときに父にボーイスカウトに入れられたのがアウトドアのきっけでした。だけど、当時の私は肥満児の喘息持ち。最初はイヤでイヤでしょうがなかった。でも、中学生になって体力がついてくると、友達と野外生活をするのが楽しくなってきたんです。ママチャリのカゴに食料とキャンプ道具を入れて、片道30キロかけて近場のキャンプ場まで行ったりしてましたね。

 高校生になるとボーイスカウトに大人が同行しなくなる。自分たちで企画して自分たちで実行することがさらに面白くなってきた。タバコや酒を飲んだりするわけでもないんだけど、大人に監視されないで週末の夜を友達と過ごす解放感がとにかく楽しかったですよね。

 ボーイスカウトは定年というものがないので、やろうと思えば何歳になってもできるんですけど、私がやっていたのは20歳くらいまで。地元(宮城県)の大学に進学してから、もっとアウトドア技術を追求したくなって、東京に本部を置くサバイバルスクールに通うことにしたんです。アメリカの傭兵訓練学校で教官をやっていた元自衛官の人が、アメリカのスクールをアレンジして始めたスクールで、半年コースが60万円くらい。座学は半蔵門、実技は千葉県鴨川の山中でしたね。

 スクールを卒業した後は、海外に行ってもっと勉強しようと思ってたんですけど、英語もあまりできなかったしお金もかかる話なので、そこでサバイバル技術の探求が止まってしまった。それから数年はさまよえる若者ですよね(笑)。スクールを卒業しても資格が取れるわけでもなく、完全に自己満足の世界なので、これからどうしよう?という感じでしたね。

 大学を中退してテレビ局の報道クルーのアルバイトを1年半やった後、リゾートバイトを始めたんです。スキーが好きだったので、高原ホテルに住み込みで働けば、スキーもできるしお金もかからない。ただし季節バイトなので何カ月かで終わっちゃうんですよね。リゾートバイトに来てるヤツって各地を渡り歩いている人間が多い。バイト先の情報交換をしたり、紹介してもらったりして、また次のリゾート地に行くということを繰り返すようになった。

 リゾートバイトは山か海か、いずれにせよ自然の中なので、アウトドアを楽しみながら仕事をしているような感じなんですよね。仕事が終わった後、同僚と裏山の川辺に行って、焚き火をしながら厨房から持ち出したお酒を飲んだり、休みの日に同僚とキャンプをしたり、そんなことばかりしてました(笑)。あの頃はまだ20代前半だったので、将来のことなんて何も考えてなかった。焦りはあるんですが、毎日忙しく仕事をして、仲間と夜通し飲んだりしているうちに時だけが過ぎていく……という感じでしたね。

部門リストラ、ブラック企業、社内の派閥対立など組織のしがらみを経験し、会社勤めに限界を感じはじめた

weekendclub_sub02 結局リゾートバイトは群馬、長野、伊豆、北海道など各地を転々としながら3年ほど続けましたね。バイクに乗っていたので、ライダー憧れの北海道に行ったのを最後に、こういう暮らしももういいかな……と思いはじめた。そんなとき、北海道で一緒に働いていた親友に電話したら、彼が働いている東京の建設会社が敷金・礼金を貸してくれるから「東京に来れば」という話になったんです。ちょうどリゾートバイトを辞めようと思っていたので、「行く」と即答でしたね。

 その建設会社で2年ほど働いたところ、部門リストラで部署ごとなくなってしまって、会社を辞めざるをえなくなったんです。給料数カ月分の退職金が出たので、何カ月かフラフラしてたんですけど、お金がなくなるだけなので次の仕事を探すことにした。そこで見つけたのが店舗開発の契約社員です。フランチャイズの経営コンサルタントという職種で、チェーン店をどこに出すべきか調査したり、交渉をしたり、運営ノウハウを提供する仕事でしたね。

 ところがその会社が典型的なブラック企業だったんです。会議のスタートが平気で22時とかで、毎日のように深夜2時3時まで働いて、朝は8時出社。会社自体が思いきり傾いていて、2年ほどした頃、さらに人件費を削減するために自主退社するか正社員になるかの選択を迫られた。大量同時採用で入社した20人のうち10人以上がまとめて辞めていきましたね。契約社員は出来高制だったので給料は悪くなかったんですけど、あの働き方で残業代もつかない正社員になると、とてもじゃないけど割に合わない。実際、鬱やノイローゼになる社員が頻発していたので、迷いなく辞める方を選びました。

 店舗開発の仕事は、内密の物件情報を提供してくれる専門の不動産屋を味方につけると、どこに行っても通用するものなんです。だから、業界を渡り歩いている人がすごく多い。自分も某英会話学校の店舗開発プロジェクトの部署に転職しました。とりあえず日銭を稼ぐために勤めなくちゃ、という感じだったけど、その頃には、自分は一生サラリーマンができるタイプではないと薄々感じはじめていましたね。

 またもや2年経ったとき、店舗開発プロジェクトが終了して営業部のデスクワークに回されたんです。自分みたいなタイプの人間が、毎日机の前でパソコンをカチャカチャやってたら発狂するわ!と思って辞めることにした(笑)。仕事内容だけじゃなく、二人の副社長の派閥対立に巻き込まれて、嫌気がさしたというのもありましたね。

「やりたいこと・やれること・お金になること」。この3つをマッチングさせることが、独立起業のカギを握る

 社会人になってからもサバイバルスクールの校長と定期的にコンタクトを取っていたんです。私が会社を辞めたのを知って「サバイバルスクールを継がないか」という話になった。ただし、生徒を指導するのではなく、HPを作って募集をかけたりといった営業や経営面の実務の仕事でした。1年半ほどやったんですけど、時代的にサバイバルというムードでもなくて、生徒も集まらず尻すぼみの状況でしたね。とても生活できるほどの収入にはならなかった。

 一方、サバイバルスクールを離れた元校長は、ニューヨークに本社を置く会社の貿易の仕事で成功していた。今度はスクールを畳んで、その専門商社に入ることになったんです。日本支社の営業としてアメリカに行く機会も多くて、仕事自体は刺激的で面白かったですよね。だから、これまで2年周期で転職していたのが、7年半続けることができた。だけど、心のどこかで自分は人からの指示で動くサラリーマンという立場が苦手だという気分はぬぐえなかったですよね。

 今度、会社を辞めるとしたら自分で何かをやるしかない。それは30代半ばから思っていたことなんですけど、具体的なアイデアがなくて困っていた。そんなとき2011年の東日本大震災が起きたんです。

 実家が宮城県なので、津波の被害はなかったものの家屋は半壊状態になって、友達が何人か亡くなったりした。会社に休みをもらって1カ月ほどボランティアに入ったんですけど、そのときお金と時間に縛られて生きるのはイヤだと実感したんです。自分もいつ死ぬかわからない。自分がそうしたいと思ったときに、行きたい場所に行って、会いたい人に会う。そうした判断が自分の思うようにならない生活というのが、やっぱり納得できなかった。

 独立を模索しはじめたとき、以前経産省が運営していたドリームゲートのセミナーに参加して、独立起業専門のコンサルタントという存在を知ったんです。これまで独立起業のハウツー本も読み漁ったんですけど、融資のための書類の書き方や法人化手続きといった具体的なことが書かれたものが多くて、自分のように何かやりたいけど事業自体が決まっていないという、最初の芽の部分について書かれた本はなかった。それに対し、その独立起業コンサルタントの方は、「まず子どもの頃からやってきたことを全部書き出して」というまったく違うアプローチだったんです。

 自分がやりたいことと、やれること。そしてお金になること。これをマッチングさせるにはどうすればいいか。そこから考えていくわけです。今こうしてしゃべっているように、子供の頃に好きだったことから自分のストーリーを棚卸ししていく。そうすると、「やっぱりオレはキャンプなんだ」って。

キャンプ道具がない。休日に遊べる仲間がいない。そんな社会人に向けて、週末キャンプイベントを開催

weekendclub_sub03 ボーイスカウトやサバイバルスクールの経験だけでなく、社会人になってからもバイクでツーリングキャンプをしたり、休みの日に埼玉県の長瀞でラフティングのガイドをしていたので、専門が一つではなくていろんなことができるという話になった。中でもベースとなるのがキャンプと焚き火。それをコンセプトにいろんな旅を企画して、アウトドアのイベントをやる事業という方向にまとまっていったんです。

 子ども向けのキャンプイベントはありますが、大人向けのキャンプイベントというのはないですよね。世の中にない事業で、しかも認知度はゼロ。そこでまず情報発信していこうということになった。コンサルタントからアメーバブログでキャンプの知識や体験談の記事を100本書くようにアドバイスされました。ブログを面白がってくれる読者が、見込み客になるという想定です。そのときはまだ会社員だったので、営業に出たふりをして喫茶店で毎日1本ブログを書いてましたね(笑)。そうやって記事が溜まっていくうちに「アウトドア」のキーワードでGoogle検索の1ページ目にブログが表示されるようになったんです。

 同時並行で日帰りバーベキューを開催したり、知り合いがやってる原宿のカフェを借りて「焚きびとCafe」というアウトドア勉強会のイベントを始めることにしました。キャンプだと知らない人といきなり山の中で宿泊することになるので、ワンクッション入れた方がいいと考えたんです。

 アウトドアに興味があって技術を学びたい人や、キャンプに行きたいけど一緒に行く仲間がいない人、キャンプ道具を持っていないといったキャンプ初心者に向けて、まずブログで情報発信したんですが、結局そこからお客さんが来ることはなかったですね。その後、本格的にHPを開設して、他にもポータルサイトで情報発信するようにしたところ、半年ほどして徐々に人が集まるようになってきた。

 実際にキャンプイベントに参加してくれた人は、やっぱりアウトドアに興味はあったけど、これまできっかけがなかったという人が圧倒的に多かった。そして意外なことに20代後半から30代の女性が大半だったんですよ。「焚きびとCafe」も2年目あたりから女性ばかりになって、男子は本当に草食系になっちゃったのかと……(苦笑)。女性のお客さんを見ていると、男性よりも圧倒的に好奇心が旺盛でフットワークが軽いですよね。

 「モノからコト」と言われる時代ですが、『週末冒険会』を通してその流れを実感しますよね。モノを買って一時的に満足するよりも、実際に体験をして感性を喜ばせることをみんなが求めている。

 キャンプと焚き火の面白いところは、それをベースにいろんなアクティビティが付随してくることです。山登りをする。カヌーで川下りをする。釣りをする。バイクで旅をする。風景写真を撮る。中には山で一杯のコーヒーを飲みたいがために行くという人もいる。キャンプはそうしたアクティビティのプラットフォームになるんです。競技ではないので誰かに勝つために上手くなる必要もないし、ハンモックに揺られて本を読んでいてもいい。自分なりの楽しみ方をいろいろ作っていける、それがキャンプの魅力だと思いますね。

 毎日がマンネリ化して退屈だと感じてる人や、普段の生活に達成感がなくてモヤモヤしている人、それが悪いわけではないけど、そういう思いを少しでも感じているようだったら、それこそ「森の中で寝る」という体験をしてみてほしい。五感が刺激されて、きっと自分の感性に新しいものが入り込んでくるはずです。

週末冒険会独立ノウハウ集

独立前

いきなり退職せず、まずは副業でスタートすべし

独立起業を夢みる人は多いが、やはり一人ではなかなかアクションを起こせないもの。そんなときは伊澤さんのように独立起業コンサルタントに相談してみるのもいいだろう。伊澤さんの場合、月3万円の5カ月コースで、月2回のコンサルタントが受けられ、随時スカイプで相談できるという内容。いきなり会社を辞めるのは危険だとアドバイスされ、まず副業の形で始めて、実績と経験を積んである程度メドが立ってから退職・独立することを推奨された。

事業アイデアは、自身の“不満”の中にあり

サラリーマン時代の伊澤さんは、20代後半あたりから「週末キャンプに行こうぜ」と学生時代のノリで友人に声をかけても、結婚して子供がいたり仕事に追われていたりして、気軽に乗ってくる人が周りにいなくなったことに不満を感じていた。自分みたいに感じている社会人が他にもいるはず。これが、週末のキャンプ仲間を集う『週末冒険会』の原点だ。当初は伊澤さん自身がキャンプをやりたくて始めたところがあり、サークル的な感覚でスタートした。

「キャンプ」と「独立」は似ている

伊澤さんは最小限の装備でたった一人、森の奥深くに入り、地図を頼りに絶好のキャンプスポットを見つけ、焚き火を見ながらお酒を飲んでいるときが、「生きている」と感じる至福のひと時だと言う。判断を誤れば、メシを焦がしたり、ときには命の危険もある。人に指図されたわけではなく、全部自分の判断次第。これが本当の自由というものだろう。こうした価値観を持つ人が会社組織に馴染まなかったのも当然かもしれない。山で生活するのも街で生活するのも「生きるための行為」という意味では同じ。独立は伊澤さんにとって、自分の判断で生きるための選択だったのだ。

独立後

客層をイメージし、手ごろな料金設定にすべし

『週末冒険会』の宿泊キャンプイベントの参加費は1万2000円~1万5000円。20代後半から30代の社会人が1泊2日の旅行に行くとき、手ごろに感じる観光旅館の料金を目安にした。旅館の場合、料理も寝床も用意されているが、キャンプでは自分たちでテントを立て、薪を割って焚き火をし、みんなで野外料理を作る。この一連の行為がすべてアクティビティとなり、キャンプ技術の勉強にもなる。そしてなんとビール・ワイン・日本酒など各種お酒が飲み放題。焚き火を見つめながらのお酒は格別。それを思えばたしかに手ごろなお値段だ。

オールシーズン対応の設備投資をすべし

キャンプシーズンは初夏から秋。冬場はどうしているのか?と疑問に思っていたが、伊澤さんは薪ストーブが使える構造の大きなテントを購入することで、冬場もキャンプイベントを開催している。去年は12月末に北軽井沢で開催し、夜はマイナス15度にもなったが、テント内は17度と快適。あたり一面銀世界となった誰もいないキャンプ場に立つテントが、ファンタジックで素敵だと好評だという。むしろ滅多にできない新鮮な体験として人気イベントとなった。

メイン事業以外にも収入源を確保すべし

キャンプイベントの定員は8人で常時5、6人が参加するそうだ。週末の開催のため月4、5回が限度で、しかも悪天候や参加者のキャンセルで中止になる場合も多々ある。2年やってきた結果、生活していける収入を得るには「毎回10人×月4回×12カ月」フルにやる必要があり、現実的な数字でないことがわかった。そこで伊澤さんは業務請負で平日は店舗開発の仕事をしているそうだ。今後は『週末冒険会』のHPでヨーロッパのキャンプグッズを販売することや、キャンプのスクールを開くことで新たな収入源を確保していこうとしている。

取材・文●大寺 明

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週末冒険会
 野山で無邪気に遊んだ少年の頃の楽しさや感動を、もう一度味わってみませんか?本格的な登山や長期間の冒険旅は、興味はあってもなかなかハードルが高くて普通の社会人が挑戦するのは難しいのが現実。『週末冒険会』はそんな大人たちのために、各種アウトドアイベントを開催しています。
 アウトドアやキャンプに興味はあるけれど、道具もなければノウハウもない。周りに誰もアウトドア好きがいない。いつものキャンプやバーベキューは飽きちゃった……という方はぜひ一度ご参加ください。日常のしがらみや複雑な人間関係のない自然の中で、焚き火を囲んで食事をしながらみなで語らう。そんなちょっとヤンチャな休日を送った後は、きっと仕事の疲れも癒され、五感が刺激されて普段の生活がまた新鮮に感じられるはず。
 いきなりキャンプはハードルが高いと感じられる方は、誰でも自由に参加できる月1回開催の『焚きびとCafe』でアウトドアの雰囲気だけでも感じてみてください。

●焚きびとCafé
・毎月第1水曜日開催
・参加費1000円(ワンドリンク付)
東京都渋谷区神宮前1-21-11 グランドゥール原宿1階
※お茶会の名称で、実際に焚き火はしておりません。

●マンスリーキャンプ
・参加費:12000円
・月川荘キャンプ場
埼玉県比企郡嵐山町鎌形2677
【アクセス】
電車/東武東上線「武蔵嵐山駅」よりタクシーで約10分
お車/関越道「東松山」ICから約20分