偶然手にした本がきっかけとなり、34歳で脱サラ。青山の人気整体師が語る独立ノウハウ

みきじろう整体 頼 幹二郎
みきじろう整体 頼 幹二郎(らい・みきじろう) 1971年大阪府堺市生まれ。関西大学社会学部を卒業し、94年にプロ専門の大手写真現像会社に営業職として入社。31歳のときに転勤を機に上京。青山の整体師開業スクールを修了し、34歳で出張整体師・パーソナルトレーナーとして独立。2011年に青山に「みきじろう整体」をオープンした。

――独立DATA――
●34歳 第1の開業
【開業資金】計39万5千円
<内訳>
・整体師開業スクール 30万円
・ルネサンスのパーソナルトレーナー養成講座 8万円
・カバン、タオルなど備品代 1万円
・サーバー代 5000円

●40歳 第2の開業
【開業資金】計300万円
・店舗の保証金、手数料等 30万円
・ホームページ制作費 20万円
・インテリア、施術用ベッド、エアコンなど備品代 約100万円
・各種経営セミナー受講料、広告宣伝費等 約30万円
・運転資金 120万円

【取得資格】
◆フィジカル・コンディショナー認定資格
◆ルネサンス公認 パーソナルトレーナー
◆JHA(日本治療協会)会員
◆BRM(Bone Rhythm Moment)療法全セミナー修了
◆(株)スポーツプログラムス主催コアパフォーマンストレーニング集中コース・メンターシップコース修了
◆指針マスター(指針整体)

――事業内容――
みきじろう整体
個人事業主
開業:2011年オープン
身体の歪み(肩こり・腰痛・姿勢)の改善を目指す整体の施術。このほか「姿勢体幹トレーニング」を組み合わせたコースも提供している。

「手に職」といえば真っ先に思い浮かぶのが、整体師やリフレクソロジーといった手技の仕事だ。ネットで検索すると、開業スクールのサイトが多数見つかるが、実際は開業後1年で廃業になるケースが大半らしい。11年間勤務した会社を辞め、34歳で独立した頼(らい)さんは、この仕事をはじめてもう10年になる。続く人と続かない人、どこで差が出てくるのだろう?

営業先で独立した人を間近に見ているうちに、「自分もなんとかしなければ」と思いはじめた

141003_251 大学生の頃は将来のことをまったく考えていませんでしたね。バブルははじけてましたけど、まだ呑気な時代で、インターネットもなかったですから情報を探すという感覚もなくて、自分が何になりたいのかわからなかった。就職のときもOB訪問をして、入れそうな会社になんとなく入った感じでした。それが業界最大手のプロ専門現像所だったんです。職種は営業でしたが、スタジオや写真事務所など決まったクライアントに営業して回る御用聞きみたいな感じで、営業力が身につくわけでもない。大阪にいた頃は、本当にぬるま湯につかっている感じでしたね(苦笑)。

 ところが、28歳くらいから悶々としてきたんです。営業先で接するのは独立したカメラマンじゃないですか。同年代のアシスタントと仲良くなることが多かったんですが、彼らも実力をつけてどんどん巣立っていく。一方、僕は薄給のサラリーマンのままなんの変化もない。独立する人を間近で見ているうちに、「なんとかしないといけない」と思いはじめたんです。かといって具体的に何ができるわけでもない……。

 独立を意識しはじめた頃、ふらっとなんばのジュンク堂書店に立ち寄ったんです。『整体師になろう!』という本が棚にあって、なぜかその一冊が光って見えた。当時は肩こりも腰痛も経験がなくて、整体を受けたこともなかった。会社名ではなく自分の名前で勝負できる仕事に就きたいという気持ちがあったので、「整体師」という響きが心地よく感じられたんでしょうね。本を読んで初めて「ああ、こういう仕事なんだ」とわかったという(笑)。

 僕は優柔不断で迷いやすい性格なんですけど、整体師の仕事に関してはなぜか根拠のない自信があって迷わなかったんですよね。まず開業スクールに通おうと思って、資料をいっぱい取り寄せて、いっぱい見学に行きました。だけど、どこも胡散くさい雰囲気が感じられてピンとこない。「人のためになりますよ」とうまいこと勧誘して、学費で儲けようとするビジネスに思えたんです。結局、独立を目指しながら、ブレーキばかり踏んでる期間が3、4年続きましたね。

 そうこうするうちに東京に転勤することになって、再び整体師の開業スクールを探しはじめた。さっそく大手のスクールに見学に行ったんですが、生徒は授業中に寝ているし、実技もダラダラやっていて、やっぱりそこも胡散くさい。インターネットで他の開業講座を探したところ、脱サラした整体師の講座を見つけたんです。自分と同じ立場だった人から教わった方がいいと考えたんですが、行ってみると2名しか参加してなかった(笑)。でも、すごく丁寧に教えてもらえたんですよね。

勤め先の写真現像会社は業界的に先がない。いよいよ踏ん切りをつけ、出張整体師として独立

IMG_1873 その先生の紹介で今度は青山の整体スクールに通うことにしました。その先生は大手ファーストフードチェーンの店長から脱サラして、年商2千万円まで這い上がったという人で、技術の指導以上に経営の指導に力を入れていましたね。ホームページの見せ方や集客法など、これまで考えたこともなかったような話ばかりだったので、すごく面白い授業でした。技術だけでは絶対に開業なんてできないと思っていたので、まさに探していたスクールだったんです。

 そのスクールは土日を使って通って1年で修了しました。先生から「自分でホームページを作れるようになっておきなさい」と教えられていたので、Htmlを学ぼうと思ってマニュアル本を買ったんですが、「やらないとなー」と思いながら、またも何もしない期間が2年ほど続いた(笑)。やっぱり逃げてしまうというか……いざとなると踏ん切りがつかないんですよね。

 34歳のときに遠距離恋愛になっていた彼女と結婚したんです。2005年当時は、フィルムからデジタルに移行していた時期で、写真現像会社は業界最大手であることにあぐらをかいて完全に出遅れていた。ライバルを引きずり落とすような社内政治が横行していて、できる人は全員辞めるし、リストラもえげつなかった。しかも業界的に先がない。いよいよ会社勤めに限界を感じましたね。僕が辛そうにしているのを奥さんもわかっていて、独立の話をしたらすぐに理解してくれたんです。

 結婚の半年後に会社を辞めて、そこからようやく本腰を入れて動きはじめました。まず2カ月ほどかけて自分でホームページを作って、それから近所の駅前周辺でチラシを投函して回ったんです。郊外の新興住宅地でしたが、高級住宅も多くて、「本当に自宅に整体師を呼ぶ人がいるのか?」と最初は自分でも半信半疑でしたね。ところが、忘れもしない。「この家は絶対にムリだろう」と思いながら一番最後にチラシを入れた大邸宅が最初のお客さんになったんです。依頼があったときは鳥肌が立ちましたね(笑)。

 当時はまだホームページで集客している人が少なかったこともあって、ネット経由で月に5人くらい依頼がありました。今思えば、それでもけっこうお客さんが来た方だと思いますが、出張整体だけだと月に5~6万円の収入にしかならない。奥さんが共働きだったので、かろうじてなんとかなっていた感じでしたね。そんなとき、スクールで知り合った知人からパーソナルトレーナーの仕事を教えてもらったんです。

出張整体とパーソナルトレーナーの二本柱で順調だったが、停滞感を感じ、店舗を構えることに

141003_019 さっそくパーソナルトレーナー養成講座に2週間ほど通って、大手スポーツクラブと契約を交わしました。だけど、すぐに収入に結びつくというものではなかった。なぜかというと、スポーツクラブに場所を借りて個人で営業(売上の3割を支払う)するかたちになるので、できる人は稼げるし、できない人は一銭も稼げない。だからみんな必死で困っている人を見つけて声をかけているわけです。

 出張整体とパーソナルトレーナーだけでは収入的に厳しいので、マッサージ店と高級ホテルのスポーツクラブでアルバイトをすることにしました。お店のやり方を学ぶことが目的だったので、ずるずる続けないために半年と期限を決めたんです。マッサージ店は腕のいい先輩が丁寧にフォローしてくれて、準備の仕方や時間の配分、接客のトークなど仕事を通して学ぶことができてすごく良かったですね。だけど、高級スポーツクラブの方はまったく性に合わなかった。有名トレーナーの世界は一見さわやかに見えますけど、実際は人間関係がどろどろしていて、ちょっと人間不信になりかけましたね。

 そうこうするうちに、出張整体の仕事が口コミでお客さんが増えてきて、パーソナルトレーナーの仕事もコツがわかってきた。両方そこそこ売れっ子になってきて二本柱で順調だったんですが、5年目になって自分の中に停滞感を感じはじめたんです。出張整体は50人ほどリピーターのお客さんがついてくれていたんですが、だんだんそれもルーティーンになってきて、少しずつお客さんが離れていったりして収入も少しずつ下がっていた。一方のパーソナルトレーナーの仕事もスポーツクラブの制約が窮屈に感じてきて……。

 そんなとき、3.11の東日本大震災が起きたんです。気分的に整体どころじゃない、という感じになったのか、売上がそれまでの半分を切ったんです。そのとき奥さんが妊娠していて、もうすぐ仕事を離れなければいけないことがわかっていたので、これは何か手を打たなければマズイ……と焦りましたね。不幸な出来事でしたけど、それが青山に店を出すきっかけになったんです。

 やっぱりこれが本当の意味での開業だったと思いますね。それまでは出張整体とパーソナルトレーナーの二つを掛け持ちしていたので、「その道一筋」という感じでもなかった。それが店を構えたことで立ち位置がはっきりしたと思います

整体は楽器のチューニングと同じく「整える」こと。だからこそ施術する自分の軸がブレてはいけない

 僕の整体は、やさしくソフトに手を添えて骨を整えるような感じで、一般的な整体のイメージであるボキバキするような施術はしません。人間の体は脊髄があって、その上に脳があるわけですけど、その軸がブレているから地に足がつかず緊張状態になって肩がこったり腰痛になったりします。つまり、緊張しなければいけない理由があるのであって、それをマッサージでほぐしても根本的な解決にはならないんです。楽器でいうとチューニングが狂っている状態で、整体とはそれを整えることなんです

 体の軸が通るとエネルギーの流れが良くなって、地に足がついた感覚になります。まずこの状態を知ることが大事です。何年もチューニングが狂った状態で生活していると、それが正しい状態でなくても、脳はその状態でいいと思い込んでしまうものなんです。だからこそ、正しい状態を知る必要がある。それを知っていれば、軸がブレている状態もわかるわけです。

 楽器は弾いているうちにチューニングが狂ってくるものですが、体も日々の生活の中で崩れてきます。そのために何回か施術を積み重ねてもらって、「ここが定位置」という正しい状態を上書き保存していくわけです。肩こりや腰痛を「治してほしい」と頼まれますが、僕は「治せない」とはっきり説明するようにしてます。自分の体を治せるのは、あくまで自分自身の自然治癒力であって、僕が手助けをして体を整えることが、結果的に肩こりや首こりの改善につながる。だから「メンテナンスです」と説明するんです。「治す」という意識をちょっと変えてもらうようにしていますね。

 そうした施術をするためには、やっぱり施術する自分の心と体の在り方が大事になってくる。よけいなことを考えて心がブレていると、骨ってまったく反応しなかったり、逆に悪くなったりすることもあるんです。だからこそ、体操をしたり瞑想をしたり、お浄めじゃないですけど部屋をきれいにしたり、日頃から自分自身の軸を整えることを心がけてますね。感覚的で説明しづらいことなんですけど、安定した状態の方が強ければ、不安定な状態は安定になびく、ということなんですよね。

 独立して10年が経ちますけど、あらためて、大変な道に入っちゃったなと思いますね(笑)。知れば知るほど、次々とわからないことが出てきて本当に奥が深い。人の役に立ちながら自分も成長させていただける仕事だと思います。むしろもっと早く独立していればよかったと思いますね。独立後はいろいろ大変なことも起きますが、それも人生のスパイスだと思って、味わうつもりで向き合えばいいと思いますね。料理も煮込んでいくうちに美味しくなるものじゃないですか(笑)。

整体師独立ノウハウ集

独立前

聞き上手になるべし

前職で営業職だった頼さんは、しゃべりが苦手だったため、聞き上手になることを意識した。現在の仕事でもこれが活かされている。お客の症状を傾聴することを重視し、カウンセリングが8割を占めると言っていいくらいだそうだ。まずお客の状態を把握して1回目の施術を行い、2回目で前回整えた状態がどれくらい保てたかを見て、さらに適切な施術をしていくという。柔らかな物腰で話を聞く落ち着いたムードが、頼さんへの信頼につながっているのだ。

技術だけでなく、経営を学ぶべし

整体やリフレクソロジーの開業スクールは数えきれないほど多い。しかし、実情は7~9割が1年後には廃業しているとも言われている。いかにも「手に職」といった仕事なだけに、技術を学ぶことに傾注しがちだが、むしろ大切なのが経営ノウハウ。頼さんは起業前に開業セミナーで経営を学んだだけでなく、独立後も様々なセミナーに通い、広告の出し方やSEO対策を学んだ。技術だけでなく経営面での学びの姿勢が、独立後の結果となって表れてくるようだ。

国家資格にこだわるべからず

こうした仕事では、柔道整体師や按摩マッサージ師といった国家資格を取得した方が有利だと考えがちだが、実際のお客さんは資格にこだわらないものだという。国家資格として認められていないだけで、優れた技術は他にもいくらでもある。お客さんからすれば、調理師免許がなくても料理が美味しければいいというのと同じことなのだ。むしろ国家資格を取得すると、広告や看板の文言などの規制が多く、自由なアピールができなくなる弊害も大きいそうだ。

独立後

信頼できるメンターを持つべし

会社勤めと違って独立後は指導してくれる上司や先輩がいない。そこで助けになってくるのが、スクールやセミナーの講師といった業界の先輩たちの存在だ。彼らをメンターとして捉え、頼さんはHPの作り方や仕事のコツをピンポイントで聞ける関係を築くようにした。独立後は自分のブランディングや集客法など、会社員時代には考えもしなかったことも多いので、教えを乞えるメンターを見つけるべし。

HPの文章にひと手間かけるべし

メンターに教わったことで、今でもキモに銘じているのが、何事も「ひと手間かけること」。丁寧な施術はもちろんのこと、集客の入り口となるHPでもこれが大切になる。HPではポリシーや自身の人となりを文章で伝える必要があるわけだが、その際、テキトーに書いていると絶対に見透かされるものだと教えられた。今でも一字一句、丁寧に文章を書くように心がけ、それを読んだ人が「哲学が腑に落ちた」とお客になることも多い。HPを見ている段階から施術は始まっているというのが頼さんの考えだ。

SEO対策に振り回されるべからず

出店後、頼さんは月3万円でSEO対策業者に依頼した。当初は順調だったが、グーグルの検索システムの精度が増し、3年目から反応がほとんどなくなった。焦りを感じた頼さんは、スマホ用サイトを作ったり、セミナーを受講して対策を講じたが、途中からあえて対策をとらないことにした。検索の上位に表示されると、当然、新規のお客が格段に多くなる。それは本来、極めて特殊なことなのだ。それよりも自分のペースで一人ひとり誠実に施術し、リピーターや口コミで広げていくべきだと考え直した。

取材・文●大寺 明

141003_255カラダの歪み改善専門の整体
みきじろう整体

体のコリをもみほぐすマッサージやボキバキする整体ではなく、とてもソフトな手技で体の歪みを改善させる調整法を用いて、ご自身が本来持っている自然回復力を高めていくことを目的にしています。そして、歪みを整えた体を少しでも長持ちさせるため、姿勢力を高める姿勢体幹トレーニングの指導も行っています。つらい肩こり・背中のはり・ひざの痛み・腰痛・骨盤矯正・姿勢改善でお悩みの方は、一度みきじろう整体をお試しください。

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