スポーツジムの騒々しさが苦手な人でも通いやすい個人スタジオを開業。パニック障害を克服した加圧トレーナーが語る独立ノウハウ

セカンドフィットネス・パートナー 武内教宜(たけうち・のりよし)
セカンドフィットネス・パートナー 武内教宜(たけうち・のりよし) 1985年埼玉県越生町生まれ。スポーツ専門学校卒業後、飲食会社を経て、大手スポーツジムに勤務。25歳よりフリーランスの加圧トレーナーとして加圧スタジオに勤め、28歳で独立。2014年に埼玉県坂戸市でスタジオをオープン。

second-fitness_sub01――独立DATA――
●28歳で独立
【開業資金】400万円
<内訳>
・加圧トレーナー指導資格取得費 40万円
・加圧トレーニング機材 160万円
・起業コンサルタント料(HP作成含む)、セミナー費用など 50万円
・店舗の敷金礼金、運動器具など備品代 100万円
・運営費 50万円

――事業内容――
セカンド・フィットネス・スタジオ
・2014年OPEN
マンツーマンレッスンでは加圧トレーニングと、通常のパーソナルトレーニングが選べる。1レッスンは30分+設備のフリー利用60分で月4回の月謝制。利用できなかった回数分は翌月以降に繰り越しが可能。二人でレッスンが受けられるペアレッスン(加圧なし)や、単発の体験レッスンを行うほか、加圧トレーナー認定員としてトレーナー育成にも取り組む。

つまめるお腹をヘコませようとフィットネスクラブの会員になったれけど、
結局、幽霊会員に……。そんなダイエットに失敗した人のために「2回目の運動」をテーマにしているのが個人でフィットネススタジオを営む武内さんだ。実は10年以上もパニック障害に悩まされた経験から、一人でも通いやすい環境のスタジオを作りたいと考え、独立に踏みきったという。

スパルタ指導のサッカー部が原因でパニック障害を発症し、裏方としてスポーツに関わりたいと思うように

 高校のときに埼玉県内でも強豪といわれるサッカー部に在籍していたんです。部員が100人以上いるチームで、上下関係も厳しく練習もハードでした。今だから言えますけど、スパルタ指導がすごくて暴力的な体罰もけっこうありましたね。試合でミスをすると坊主で済めばまだいいほう……という感じで、僕は精神的にそれほど強くなかったので、それが原因でパニック障害になってしまって……。

 パニック障害はある特定の場所に行くことで発作が出ることが多い。症状は人によって様々ですが、激しい動悸や息切れ、めまいや吐き気、過呼吸などですね。たとえば電車に閉じ込められたトラウマがある人だと、発作が出て電車に乗れなかったりする。僕の場合はグラウンドに立つと発作が出てしまうんです。サッカーの90分間が、僕にとっては絶対に逃げられないというプレッシャーになっていて、密室でなくても苦しくなってしまうんです。

 高校2年のときに部活を辞めたのですが、プレイヤーの道しか考えてなかったので、僕のサッカー人生は終わったな……と落ち込んでいました。それが高校3年のときに少年サッカーのコーチをやることになって、スポーツって選手としてやるだけじゃないんだな、と考え直したんです。監督やマネージャー、保護者といった支える人たちがいるから、選手はプレイができる。自分はそうした裏方のほうが合っていると考えるようになりましたね。

 それからスポーツ専門学校のトレーナーコースに入学して2年間勉強しました。少年サッカーのコーチはボランティアでずっと続けていて、それが土日だったので、スポーツとは関係ない週休2日の会社に就職することにしました。飲食店経営の会社だったので厨房に入る仕事だったんですが、フライパンを振りすぎて入社3カ月で腱鞘炎になってしまって……。休職することになって、しばらく仕事から離れているうちに、やっぱり自分はスポーツを仕事にしたいと思い直したんです。

加圧トレーニングには脳波を安定させる効果も期待できる。心の悩みを抱えた人に向けて運動を教えたい

second-fitness_sub02 退職して大手スポーツジムにアルバイトで働くことにしたんですが、正直なところ思い描いていたものとはまったく違ってましたね。オープン仕立てでお店のシステムができていないこともあって、スタッフはただ立っているだけ。お客さんにマシーンの使い方を案内するくらいで、指導するわけでもない。スタッフも勤務中に裏でタバコを吸ったり、ずっとおしゃべりしていたりして、頑張ってもサボっても時給は一緒という感じでやる気もない。そうした環境で働くうちに、いずれは独立して自分でやりたいと思うようになりましたね。

 2年目からようやく指導に入らせてもらえたんですが、プールの指導員だったんです。自分が教えたいのはやっぱり筋トレで、たまにジムに立つこともあったんですが、マニュアルどおりの指導しかやらせてもらえないことが納得できなかった。身体って一人ひとり違うものなので、相手に合わせてもっと深く教えていきたいと思いましたね。

 辞めようと決めたときは、トレーニング指導ができればもう何でもいいくらいの気持ちでした。個人経営の加圧スタジオで業務委託の仕事をすることが決まったので、まず加圧トレーナーの資格を取りましたね。ただし、フリーランスといってもスタジオ専属として固定給をもらって週5、6日の勤務ですから、勤めているのと変わらない。今度はそうした働き方に疑問を感じてモヤモヤするようになったんです。

 実は加圧を始めるまでパニック障害を引きずっていました。大手スポーツジムのバイト時代は、会議に出ると具合が悪くなったり、子どもの引率で使うバスがサッカー部のバス移動を思い出させて乗れなかったりして、パニック障害が原因で休みをもらったこともあった。それもあって自分には普通の社会人はムリなのかな……と思い悩んだこともありましたね。

 パニック障害やうつ病というと、心の病みたいに思われがちですよね。パニック障害のことをカミングアウトしたとき、周りの人からは「そんなの気の持ちようだよ」って言われましたけど、心や気の問題ではなくて脳の症状なんですよね。アルファ波やシータ波といったリラックスする脳波と、感情的になったり興奮する脳波があって、それが乱れている状態がパニック障害やうつ病なんです。加圧トレーニングには脳波を安定させる効果があるとされています。
実際、加圧を始めてからかなり症状が良くなったんですよね。

 加圧スタジオにはうつ病のお客さんも多くて、僕が担当になったときすごく話が合ってリラックスして運動ができた。そうした悩みを抱えた方々に向けて、自分のスタジオで教えていきたいと思うようになりましたね。

独立後の1年間は準備期間に当てた。店舗のコンセプトを決めて、ひたすら毎日コラムを書き続ける日々

 独立後の1年間は準備期間に当てることにして、しばらくは出張レッスンで生計を立てることにしました。開業準備としては、真っ先に『フリーエージェントインク』という起業コンサルタントに相談に行きましたね。自分の周りを見ても自己流で起業した人は長く続かないことが多い。トレーナーを仕事にしていることもあって、起業もダイエットも同じだと思っていて、ちゃんとプロのトレーナーを付けるべきだと考えたんです。

 コンサルティングではいきなり店舗を出すのではなく、まず集客が先というふうに起業の手順を一通り教えてもらえただけでなく、起業の理由を考えるきっかけになったことが大きかった。稼げるから店舗を出したいとか会社がイヤで独立したいというのではなくて、なぜ自分はトレーナーをやりたいのか、自分の人生を振り返って棚卸ししていくんです。

 あらためて考えたとき、やっぱり自分の中でパニック障害の経験が大きかった。そうした悩みをフィットネスで解消していくというコンセプトからはじまって、過去にダイエットに失敗した人の2度目の挑戦というふうにコンセプトを固めていったんです。挫折する理由は人それぞれで、仕事が忙しくて三日坊主になった人もいれば、フィットネスクラブの賑やかな環境が苦手という人もいれば、体型を気にして同性の視線が気になるという女性もいますよね。そうした人でも通いやすいマンツーマンのスタジオを作ろうと考えました。

 フィットネスクラブに登録したものの幽霊会員になってしまった人も多いと思うんです。月謝制だと沢山行く人はお得ですが、あまり行かない人は損ですよね。うちも月4回の月謝制ですが、通えなかった分は翌月以降に繰り越せるようにして、基本的に損をしないようにしました。

 コンセプトを決めた後は、料金設定やキャッチコピーを考えるなど、商品開発に時間をかけましたね。それに合わせてパンフレット作りや名刺作りを始めて、次はHP経由でお客さんが来る仕組みを作っていくようにしました。

 SEO対策にお金をかけられないので、手間ひまかけてコラムを書くだけですよね。今でもほぼ毎日コラムを書いていて、書くことをどんどん仕入れるようにしてます。そうしないとネタ切れになる(笑)。僕は派手なイベントを開いたりすることが苦手なので、地道な作業をコツコツ続けていくほうが性に合っていると思う。

 準備が整ったところでいよいよ店舗です。もともと地元で開業したいと考えていたので坂戸駅周辺エリアでやろうと決めていました。川越や朝霞になると競合店も多いですが、このエリアだと競合が少ないというのもありましたね。

スポーツに関しては優等生でなかったことを、人の気持ちがわかることや、心配りといった強みにしたい

second-fitness_sub03 宣伝広告費は一切かけず、お客さんの75%がHP経由です。駅前に出している看板やたまたま通りがかって来てくれるお客さんもいるんですけど、継続まではいかないことが多い。HP経由だと、コラムを読んである程度調べてから来てくれるので、入会率も高いですし、長続きする人も多いんです。

 やはりダイエット目的の方が圧倒的に多くて、初めは女性が7割くらいを占めていたんですが、意外と男性からも評判がよくて、今では男女比が半々です。短期間でカッコイイ身体を作るというライザップのCMの影響からか、一生懸命でストイックな人が増えてますね。もともとのコンセプトとはちょっとズレているんですけど、それはそれでいいことかなと(笑)。

 うちは一度ダイエットに失敗した人が、再度ダイエットに成功することをコンセプトにしているので、いかに長く続けてもらうかに頭を使ってます。最初に頑張りすぎて続かないことが多いと思うんですが、筋力トレーニングのメカニズム的に言うと、1日やって2日休むのが理想です。だから、三日坊主になる前に一回休んでもらって、4日目にまた来てくださいと予約を取るようにしてますね。そうやってスケジュール帳に書き込んでもらうことが大事で、行けるときに行こうと考えているとなかなか続かないものなんです。

 スポーツクラブ勤務だと込み入った話をすることもないですが、マンツーマンのレッスンだと、いろいろ話をするのでお客さんの状況もある程度わかりますよね。お母さんが入院されていて余裕がなかったり、海外に研修旅行に行くといったお客さんの状況を聞いているので、タイミングを見計らってメールをすることで次回の予約を入れてもらうようにしてます。お客さんのスケジュール管理も一緒にしているような感じですね。

 この業界では月100レッスンやると売れっ子トレーナーとされていて、雇われていたときは月120~130レッスンくらい担当することもありました。だけど、数をこなそうとすると完全に流れ作業になってしまう。パーソナルトレーナーとして高い料金をいただいているのに流れ作業になってはいけないと思って、今はどんなに繁盛期でも1日7レッスンをマックスにしてます。

 僕はそんなに沢山の人を集めたいわけではなくて、自分の目が届く範囲の人と深く付き合っていきたいと思っているんです。興味本位で来ていただくよりも、このトレーナーなら信頼できると思ってくれる人を大切にしていきたい。10年以上もパニック障害に悩まされてきて、自分はスポーツに関してはあまり優等生だったとは言えないかもしれない。逆にそれをお客さんの気持ちがわかることや、心配りといった強みにしていきたいと考えていますね。

個人スタジオ独立ノウハウ集

独立前

必要に応じて資格を取得すべし

スポーツトレーナーの仕事に就くには、必ずしも資格は必要ないが、就職する際に有利となる。資格がないと履歴書の時点ではねられることが多いそうだ。逆に就職するつもりがなければ資格はあってもなくてもいいわけだが、加圧トレーナーとして働く場合は協会の認定資格が必須。取得費用40万円+消費税と高額だが、確実に需要が見込める資格だけに取得しておきたい。

知識や技術よりも、心配りや人柄で勝負すべし

武内さんはメンタルフィットネス・トレーナーをはじめいくつもの資格を取得しているが、あまり資格をアピールしていない。知識や技術に偏向したトレーナーが必ずしも人気トレーナーではないことを前職の経験で知っているからだ。お客のほとんどはダイエット目的といった一般の人で、アスリートではない。ストイックな指導よりも、聞き上手であることや細やかな心遣いといった人柄のほうが大切になる。

お得感のある料金設定にすべし

開業するにおいて、相場を考慮した料金設定がポイントになる。埼玉エリアの加圧スタジオ料金は1レッスン3~4千円が相場だが、武内さんの店舗は5千円に設定。そのかわりスポーツクラブのように自由に施設を利用できることにした。逆にスポーツクラブで加圧トレーニングをすると、月謝+加圧料金となり、総額で見ると武内さんのお店の方が断然安いことになる。スポーツクラブと加圧スタジオのいい所取りをした店舗にしたいという考えだ。

独立後

宣伝広告よりもコラムを書くべし

独立後の2年間で600記事ものコラムを書いてきた武内さんだが、思いつくままに書いてきたわけではない。起業コンサルタントと提携するSEO対策会社のサポートを受け、キーワードの順位数や、この記事から問い合わせにつながってというデータ解析をもとにして、「お腹をへこませる記事を増やしましょう」といったアドバイスを受けて書くようにしている。効果が読めない広告を打つのではなく、今の時代ならではの的確なプロモーションである。

名刺で自分をアピールすべし

武内さんの名刺には、「ひとりでスポーツクラブに通うのが苦手なアナタが、ストレスを解消し、たのしく運動できるようにする専門家」というキャッチコピーが付けられている。名刺はただ名前と連絡先を入れるだけではなく、初対面の人に興味を持ってもらえるように工夫をすることで一段と効果を増す。さらに自分の顔写真を入れ、コンセプトや地図を記載するなど、限られたスペースの中にチラシと同様の情報が盛り込まれているのだ。

自分の店だけでなく、業界全体を考えるべし

武内さんは自分の店舗で収入を得るだけではなく、スポーツ専門学校の非常勤講師や加圧トレーナーの資格認定員といった活動もしている。これまでに加圧トレーナーを3人、世に送り出した。副収入になることもあるが、それ以上に志を同じくする仲間を増やしたいという思いが強い。日本のフィットネス人口はわずか3%。自分ひとり頑張っても限界は見えている。トレーナー人口を増やすことでそれ以外の97%にアプローチしていきたいと考えている。

取材・文●大寺 明

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セカンド・フィットネス・スタジオ
当スタジオではセカンドフィットネス(2回目の運動)をテーマに
お客様へ健康的な身体作りを提供しています。

アナタはこのような経験がありませんか?
■自己流ダイエットで思うような効果が出なかった。
■スポーツクラブで会費だけ払い続ける幽霊会員になってしまった。
■会員トラブルなど、ジムで嫌な思いをした。
■どんなダイエット法に挑戦しても三日坊主で続かなかった。
■「ダイエットは明日から」と言いながらついつい先延ばしにしてしまう。
■仕事で疲れてジムに行くのが億劫になってしまった。
■前のジムのトレーナーとは相性が合わなかった。

過去に一度ダイエットに挑戦し、今はやめてしまった方でも、
ストレスを解消しながら楽しく運動でき、長く続けられるようになります。
当スタジオではトレーニングの指導だけでなく、
食事のアドバイスやメンタルサポート、
さらに失敗しないジム選びなど、多方面からサポートしていきます。

●埼玉県坂戸市南町7-19 サニーパレス1階
東武東上線坂戸駅南口徒歩5分(駐車場あり)