「ローリング療法」とは何ぞや!? アパレル業界から脱サラし、アスリートと経営者をサポートするローリング療法師の独立ノウハウ

寺尾隆宏/1979年大阪府生まれ。中学時代からサッカーのジュニアユースチームに入り、高校時代は日本高校選抜を務めた監督に師事。この頃にローリング療法と出会う。高校卒業後、服飾専門学校に進学し、パリの本校に留学。2002年の帰国後、新ブランドの創業メンバーとなり、店舗開発・マーチャンダイジングを担当。2008年よりランニングをはじめ、左半身麻痺を機にローリング療法と再会。蓑原ローリング療法の2級免許を取得し、2015年に『rollingbase』をオープンした。

――独立DATA――
35歳で独立
【開業資金/計1000万円】

・ローリング療法師2級免許取得費/115万円
・ローリング器具(10本)/15万円
・運転資金/100万円
・店舗の保証金・改装費・リース機器の保証金など/770万円

ローリング療法師の2級免許の取得費は、蓑原ローリング療法協会の入会金30万円、受講料(寺尾さんの場合、計10回)、教材など合わせ計115万円。店舗の保証金や改装費としてスポンサーから770万円ほど融資を受けたほか、運転資金として信用金庫から100万円の融資を受けた。

――事業内容――
rollingbase
蓑原ローリング療法協会の認定を受け、「ローリング療法」を行う。肩こりや腰痛の改善、疲労回復といった一般的な利用のほか、酸素カプセル・水素吸引器・トレーニングマシンを導入し、アスリート向けに特化した複合的な施術を行なっている。

「ローリング療法」をご存知でしょうか? これはローラーを使って身体の奥深くにできたしこりやうっ血にアプローチするもので、腰痛、疲労回復、ケガの治療などに効果が期待でき、さらにはアスリートの記録向上にもつながるというオールラウンドの療法なんです。アパレル業界で13年間、会社勤めをしてきた寺尾さんは、左半身麻痺が「ローリング療法」で治ったことがきっかけで脱サラを決意。独立開業までの道のりとは?

サッカーに打ち込んだ高校時代に「ローリング療法」に出会った。その後はスポーツから離れ、アパレル業界へ

 中学時代からジュニアユースチームでサッカーに打ち込んでいて、高校時代は日本高校選抜を指揮した有名な監督のもとでサッカーを続けました。その監督から「ローリング療法」を教えてもらったんです。Jリーグの代表クラスの選手やテニス選手など一部のトップアスリートに使われているもので、「効くな」という実感がありましたね。

「ローリング療法」は日本発祥のもので50年以上の歴史があり、マッサージ機に使われているローラーの原点になったものです。ローリング機器を使って身体の中のしこりやうっ血を取り除くことで、血行が良くなって身体の可動域が動きやすくなります。筋肉や筋膜、ツボにもアプローチしていくので身体も軽くなりますし、痛みを取ったりケガの治療にも効果が期待できるという療法なんです。

 サッカー、テニス、マラソンといったスポーツをする人が、いい記録を出すために身体のコンディションを整えたり、故障をした人がケガを治すために利用することもありますし、ヘルニアや坐骨神経痛、肩こりや首こりといった症状の方にも利用されています。ローリング機器を持っていたのでずっと身近にあったのですが、高校卒業後、スポーツから離れたため、あまり触れる機会がなかった。

 中学高校とサッカーに打ち込みながら、途中でプロのサッカー選手になるのは難しいと薄々気づきはじめていました。もともと洋服が好きだったのと、将来、自分のお店を持ちたいという夢があったので、高校卒業後はファッションの専門学校に行くことにしたんです。1年間通ってからパリの本校に留学しました。

 サッカーでも創造性豊かなファンタジスタのタイプの人がいますが、自分はそういうタイプではなかったので、デザイナーになるつもりはなく、ビジネスや経営面でファッションをサポートする仕事がしたいと思っていました。だけどパリの本校はデザイナーやパタンナーの学科ばかりで、ビジネスの学科があまりなかった。

 そこで専門学校に通いながら、日本のブランドの海外支店で研修生のようなかたちで働くことにしたんです。パリコレにも出展しているブランドで、スタッフ20人のうち社長と僕だけが日本人で、あとは全員外国人スタッフです。パリコレの出展や商品販売のサポートをするようになり、社長に付いていろんな経験をさせてもらいましたね。

マラソンで走り過ぎて左半身麻痺に……。どこに行っても治らなかったのが、「ローリング療法」で完治した

 パリに留学してから3年が過ぎ、ビザの関係で帰国せざるをえなくなりました。そんなとき某大手ブランドの東京本社のメンバーが独立することになり、僕は新入社員第一号として東京で働くことになったんです。レディースの新ブランドを立ち上げ、すべてがゼロからのスタートでしたが、4、5年で30店舗、売上20億円、スタッフ100名くらいの規模に急成長したんです。店舗開発やマーチャンダイジングといった幅広い仕事を任され、創業メンバーとして誇りをもって仕事をしていました。

 ところが、最終的に婦人服メーカーに買収されて、若い人向けのレーディスブランドという一事業部になってしまった。アパレル業界全体が厳しくなっていて、たしかに出店数や売上は伸びていましたが、それにともなって設備投資、人件費、在庫もかさんでいて、収益はプラスマイナスゼロというギリギリの状態でした。

 この頃、健康のためにマラソンをはじめたんですけど、もともとサッカーをやっていたこともあって、すぐにアスリート魂に火がつきました(笑)。スポーツとして本気で走るようになり、左足を痛めてしまったんです。左足が麻痺して足の指に力が入らず、スリッパも脱げてしまうような状態で、整形外科、針治療、整骨院で治療しようとしましたが、どこに行っても治らない。1、2カ月ほどで足がどんどん細くなって、もはや恐怖ですよね(苦笑)。

 そんなとき高校時代に出会った「ローリング療法」を思い出したんです。ネットで調べてみると、蓑原ローリング療法の本部が東京にあったので、すがるような気持ちで行ってみたところ、4回の施術で見事に左半身麻痺が治ったんです。その直後に東日本大震災が起きました。その頃の僕はアパレルの仕事にやり甲斐が感じられなくなっていて、震災を機に「もっと人に喜ばれる仕事をすべきなんじゃないか」と思いはじめたんです。以前は「洋服で人をハッピーにする」という気持ちで仕事に取り組んでいましたが、いつしか売上を上げることしか考えられなくなっていたんですよね……。

 ローリング療法は50年以上の歴史があり、施術自体も安心安全なものですが、それでいて世の中にそれほど広まっていない。これから時間をかけて人に広めていこうと考えました。ファッションブランドと違って一人でもできる仕事なので独立しやすいこともあり、会社勤めをしながら独立の準備をすることにしました。

アパレル不況で会社が傾き、脱サラを決意。会社勤めのかたわら毎週土曜にお店を開き、固定客を増やしていった

 さっそく蓑原ローリング療法の本部で講習会を受けて認定資格を取得することにしました。講習会だけでなく、同じく認定資格を目指している競輪選手と休みの日に集まって互いにやりあって練習したり、公園や競技場の片隅でランナー仲間の身体を借りて練習したり、とにかく実際に人に施術することで覚えていきました。

 さらに自宅に知人やパパ友を呼んで練習するようになり、最初はあくまで練習目的だったので無料で施術していました。ローリング療法の施術は身体も使うし頭も使うので、けっこうクタクタになります。多少はお金をもらったほうがいいということになり、1年目は1時間1000円、2年目は2000円、3年目は3000円というふうに1年ごとに値上げをすることを自分のルールにしました。ちなみに認定資格の取得費用はすべてローリング療法で稼いだお金でまかなっています。

 そんなとき腰痛のためにローリング療法を受けている社長を紹介していただいたんです。その社長もローリング療法を世の中に広めたいという思いがあり、社員にローリング療法を覚えさせて事業化することを検討されていました。「一緒にお店をやろう」とお誘いいただいたのですが、それではサラリーマンと変わらない。あくまで自分は独立を目指していたのでお断りしました。

 当時は自宅の一室で施術をしていたわけですが、次の展開としては固定客ができて売上が見込めるようになったら、物件を借りて本格的にスタートするつもりでした。すると、その社長が事務所用の一軒家の一室を貸してくれると申し出てくれたんです。とりあえず会社勤めをしながらお店の練習をしたほうがいいとアドバイスされ、家賃も売上に応じて払える範囲でいいという、ありがたい話でした。

 こうして毎週土曜だけ看板も掲げず営業していたんですけど、ランナー仲間が来てくれ、どんどん人を紹介してくれたこともあって、予約がいっぱいになった。土曜だけでは対応しきれなくなり、平日も夜8時くらいから仕事の後に施術するようになったんです。1年ほど経った頃には固定客も50人くらいに増えていました。

 同時にお店のコンセプトや内装、HPのデザインも準備を進めていました。コンセプトとしては、2020年の東京オリンピックに向けて「アスリートの聖地」とされるようなお店にしたいと考えていたので、施術用ベッドだけでなく、酸素カプセルやトレーニングマシンも置きたかった。リースの保証金がかなり高額なので、あと1年は会社勤めを続けて開業資金を貯めるつもりでした。

アスリートが訪れる隠れ家的なお店にしたかった。問題は開業資金と軌道に乗るまでの時間です

 ところが、アパレル不況もあって一気に会社が傾きはじめたんです。原宿にある本社が千葉に移転するという話も出はじめて、これ以上は会社にいられないという状況になり、予定より早く独立することにしたんです。だけど、退職金も出なければ貯えもない。「とりあえず現金だけは確保しなければいけない」と思って信用金庫から100万円を融資してもらって当面の運転資金にしました。

 4年間準備をしてきて、あとは開業資金の問題だけでした。そこで事務所を貸してくれていた社長に「実はこういうお店をやりたいんです」と相談したんです。「どうしてほしい?」と聞かれ、「銀行になってほしいです」と頼みました。社長はスポンサーになることを快く引き受けてくださって、店舗の保証金、改装費、酸素カプセルのリースの保証金など数百万円を融資してくれることになったんです。開業後、売上の中から10%ずつ返済していくことにしました。

 不安もありましたけど、ローリング療法は絶対に成功するという確信があった。あとは時間の問題だけだと思っていました。街のマッサージ屋のようにするのではなく、アスリート向けの知る人ぞ知る隠れ家のようなお店にしたいと考えていたので、広告やチラシなどの宣伝は一切せず、SEO対策もしないし、看板も出さない。口コミの評判だけで絶対に集客してやろうと思っていました。問題は軌道に乗るまで持ちこたえられるか……。

 こうして2015年夏に開業したところ、ランナー仲間が来てくれたことですぐに売上が立ち、その後も順調に伸びていったんです。だけど、月々の返済やリース料、税金の支払いを考えるともっと売上を伸ばさないといけない。そんなとき弁護士のお客さんを紹介され、ローリング療法を気にいってもらったことで、経営者のお客さんをたくさん紹介していただいたんですよね。こうして今ではアスリートが半分、経営者が半分という客層になっています。疲れを取り除く、記録を伸ばすといったそれぞれの目的があるわけですが、絶対に満足してもらうことをモットーにしています。

 もともと東京オリンピックに向けてローリング療法によってアスリートをサポートすることを目的にしているので、技術を高めることはもちろん、本を読んだり、話題になっているトレーニングを体験するなど、日々勉強です。職人の世界は奥が深いので今後が楽しみですよね。経験を積んでいくと、これまで気づかなかったことにも気づくようになる。日々進化している実感があって今は本当に仕事が楽しい(笑)。

ローリング療法師 独立ノウハウ集

独立前

店舗開発、マーチャンダイジング、経理などすべてが活かされる

アパレル時代の寺尾さんは60店舗におよぶ店舗開発をはじめ、マーチャンダイザーとして商品構成や販売促進を担当し、さらには経理面の業務まで幅広くこなしていた。店舗開発の経験は、開業時の出展費用や店舗デザインに直接活かされたし、経理の経験は、確定申告に活かされている。マーチャンダイザーの経験は、商品(コース設定など)の構成と値決めの際に役立っているそうだ。独立するには何かひとつの仕事に特化することが大事だが、「百姓=100の仕事」というのと同様に、なんでも自分でこなす必要があり、あらゆる社会人経験が活きてくるのだ。

収入があるうちに、資格を取得して準備を進めるべし

「ローリング療法師」を名乗るのには蓑原ローリング療法協会に入会し、最低4回は講習会を受講し、認定試験に合格し、そこから半年間の施術経験後に2級免許資格に合格する必要がある。講習を受ければ誰でも資格が取れるスクールビジネスとは一線を画し、試験に落ちる人も多く、合格までに3、4年かかるのが通例という狭き門であるそうだ。しかし、寺尾さんは講習会を10回受講し、大勢の人を施術して実践経験を積むことで最短の1年半で取得することができた。退職後のほうが勉強期間を作りやすいが、収入がないと生活が行き詰まってしまう。できれば会社勤めをしているうちに資格取得などのマストの準備は進めておきたい。

会社の人間関係以外に、趣味やスポーツの交流をすべし

寺尾さんは健康のためにランニングをはじめ、次第にスポーツとして真剣に打ち込むようになり、ランナー仲間ができて会社以外の交流が広がっていった。マラソンに打ち込む人はストイックな生活をし、仕事もバリバリこなすタイプが多く、走りながら話をしていると、さまざまなアドバイスやヒントが得られたという。さらにランナー仲間が最初にお客になってくれ、人まで紹介してくれた。まさにランニングが寺尾さんの人生を切り拓いてくれたのだ。また、自身がランニングに打ち込むことで、アスリートの感覚を理解できることが施術に活かされ、さらには仕事のストレス解消や健康的な身体作りにも役立っている。施術者が不健康そうでは説得力もない。健康に関する仕事は、まず自身が健康であらねばならない。

独立後

サービスの質を上げて、単価を上げるべし

寺尾さんは準備期間中にたくさんの人を施術して勉強するために、気持ち程度の1時間1000円で施術をし、2年目は2000円、3年目は3000円というふうに1年ごとに料金を改定することを自分のルールにしてきた。ここまでは修業目的と固定客を増やすためのサービス料金であり、開業後は1時間5000円でスタート。しかし、予約が取りづらかったことから「値上げしたほうがいい」とお客さんに諭され、一気に2000円値上げをした。それでも予約は減らず、フル稼働だったという。施術者は寺尾さん一人なので、これ以上、客数を増やすと大変なことになってしまうが、融資の返済やリース料を考えると、もっと売上を伸ばす必要がある。そのため寺尾さんは最高級のサービスを提供することで、「いかに単価を上げるか」を考えるようになった。

アスリート向けの特殊な設備は、リースが一般的

寺尾さんは開業時に酸素カプセルの導入にこだわった。こうした特殊な設備はリースが一般的で、その際、保証が必要となり、融資よりも難しいそうだ。寺尾さんの場合、幸いにもスポンサーになってくれる社長がいたことで、保証の問題はクリアできた。5年契約のリース料は月々6万円(年間72万円)でトータル400万円ほどかかる。買ったほうがよさそうに思えるが、5年目からはリース料が極端に下がり年間1万5000円になるため、メンテナンスや処分のことを考えるとリースのほうがいいということになる。寺尾さんはさらにアスリート向けのトレーニングマシンと水素吸引器(共にトータル270万円のリース料)を導入し、月々のリース料は15万円を超えるが、「ローリング療法+ジム」が一度にできると好評で、そのぶん売上も伸びているそうだ。

業界の流れとは逆のブランディングをすべし

Webコンサルティング業者がHPを制作しているためか、どの施術院やクリニックも似たような見せ方になってしまっている。施術の効果を「お客さまの声」で紹介するなど、一見すると良心的な業者のようだが、実際行ってみると「HPのイメージとずいぶん違う……」なんてことも少なくない。今やネットリテラシーが高い人は、説明過剰だったり、いいことしか書いてないHPを見ると、むしろ「胡散臭い」とすら感じはじめているのだ。そうした風潮の逆をつき、寺尾さんの『rollinbase』のHPは非常にシンプルだ。「ローリング療法」というあまり世間に知られていないものを広めるにおいて、あれもこれも伝えたくなるところだが、寺尾さんは「言えば言うほど胡散臭くなる」と考え、よけいな情報を極力カットするというブランディングを意識した。

取材・写真・文●大寺 明

アスリートと働く人をサポートする
rollingbase

マッサージ機や美容器具などで使われるローラーは、
50年以上の歴史をもつ、日本発祥のローリング療法が原点となっています。

ローリング療法は、専用のローリング機器を使い
身体の奥深くにできたしこりやうっ血にアプローチし、
筋肉や関節の動きに働きかける施術法です。

肩こりや腰痛、疲労回復といった一般的な施術目的だけでなく、
代表の寺尾自身が現役の陸上アスリートであることから、
アスリートの身体の悩みやコンディション維持に特化し、
陸上・サッカー・テニス・格闘家・レーサーといったプロスポーツ選手の
トップフォーム維持にも高い評価をいただいております。

当店では日本に数台しかない最大1.6気圧の高性能酸素カプセルを導入し、
施術の一環として用いることで、よりベストなコンディションづくりを目指しています。